こがらしまち
タチバナメグミ
今日の天気は秋です。昨日の天気も秋でした。明日もきっと秋でしょう。私たちの毎日は、秋です。昔は日本にも秋以外の春や夏や冬があって、それぞれ色彩豊かな景色が見られたといいます。けれど、私たちにはそれがありません。私たちの季節は、いつも、秋です。
秋は突然訪れました。歴史の授業では、秋は1月の雪の降る日の晩に突然現れたと習いました。日本列島の上空を覆った秋は、枯れ木のような声で、「自分は秋である」こと、「自分は冬のやつをここで待ち伏せしてやろうと思っている」こと、「冬がここにやってくるまで日本上空を漂わせてもらう」ことを一報的に告げました。当時の人は、さぞ混乱したでしょう。だって、昔の人にとって秋や冬はただの気象現象で、「秋」のように喋ったり、自分勝手に空を漂ってひと所に秋に閉じ込めてしまったり、そんなこと想像なんてしてなかったでしょうから。けれど、実際に秋は枯れ葉が擦れるような声で言葉を喋りましたし、こうやって日本を秋の真っ只中に閉じ込めてしまいました。
冬が来る合図は、木枯らしという風だそうです。木枯らしにくくりつけた紐をソリに繋いだ乗り物で、冬はやってくるそうです。
秋がどうして冬を待ち伏せしているのかは、だぁれもしりません。
だからわたしたちは今日もまた、冬を待ちます。木枯らしが吹いたらたちまち、冬が日本にやってくるでしょう。
こがらしまち タチバナメグミ @poujiking
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