一番可愛いクラスメイトのえっちな配信をみつけてしまった

桜井正宗

配信1:えっちメイドの田村さん

 ふとスマホの配信アプリで可愛い子がいないか検索していると、メイドのコスプレをした女子を発見した。高校生らしく、肌を大胆に露出していた。

 視聴者数もコメントもなかなか多い。


 でも、あれ……この顔は見覚えがあるぞ!


 同じクラスの『田村たむら 詩歩しほ』のように思えた。この特徴的な美形容姿は間違いないだろう。一億年に一人レベルの可愛さだし、こんな美少女を俺が忘れるはずがない。


 それにしても、胸元を大胆に晒したり、股を開いたり……エロすぎんだろッ!



 クラスメイトの美少女のこんな姿を拝めるとは――光速で録画保存した。



 後日俺は学校で田村さんにこの事実を確認した。



「田村さん、ちょっといいかい?」

「……?」


 うわ、あからさまに嫌そうな表情かお。そりゃ、俺みたいな陰キャで弱者男性に話しかけられるのは気分悪いよな。ああ、知っているよ。


 で・も・な!


 お前がメイドのコスプレでエロ配信していることを俺は知っているんだぞ!! いつも澄ました顔しやがって、実はエロエロメイドの分際でよくそんな顔ができるなッ!


「これ、見てくれ」

「はあ? ――って!」


 田村さんは血相を変えた。俺のスマホに田村さんの配信が映し出されていたからだ。


「これ、田村さんだよね。まあ、配信者名は『胡桃クルミ』だけどさ」


 事実をつきつけると、田村さんはワナワナ震えて涙目になっていた。そして、顔を赤くしてしまう。……あれ、なんか可愛い。いや、そうじゃなくて。


「……な、なんで」

「え」

「なんで知ってるのよぉ~~~~!!」


 耳がキーンとなるほど叫ぶ田村さん。

 鼓膜こまくがやぶれるってーの!

 まあ、可愛いから許すけど。


「この胸元とか、すげぇエロいよな。あと、こんなえっちなポーズとか……なるほど、これで投げ銭してもらうわけだ!」


「いやあああああああああ!!」


「学校ではクールな美少女が、実はこんなヘンタイメイドだったとはな!!」


「あああああああああああああああああ!! やめてえええええええ!!」


 耳をふさいで発狂する田村さん。ふははは、いつも俺みたいな男子を見下していたんだろうが、学校ではそうはいかん!


「バラされたくなければ……分かっているよね?」

「なんでもします! なんでもしますから!! クラスメイトにバラすのはやめて!!」

「ほぉ!? なんでも……?」


 これからナニをしてもらおうかなァ?

 悩みに悩んだ末、俺はこう提案した。


「今後も配信は続けてくれ。ただし、俺の指定するコスプレをするんだ!」

「……うわぁ」

「その目はヤメレ!」

「って、冗談だけどね。んー、まあそれならいいか」


 田村さんは俺の提案を受け入れてくれた。いいのかよ!! もっとエロい要求にするべきだったか? しかし、チキン俺にそんな度胸などなかった。


 こうして田村さんと会話することさえ奇跡だからな。いつ口から心臓が飛び出てもおかしくないッ。だが、俺はどうしても田村さんと話がしたかった。してみたかった……!


 人生に悔いを残したくなかった!

 なのでかなり勇気を振り絞った結果だった。


「じゃ、じゃあ……決まりだね」

「どんなコスプレをご所望?」

「え……」

「メイドは昨晩着ちゃったし、次はなにがいいかな」


 考えていなかった。

 けど、田村さんなら何でも似合う気がする。

 巫女さん、婦警さん、ナース、アニメやゲームのキャラとかもアリか。う~ん、悩ましい。


 悩みまくっていると予鈴が鳴った。……しまった、もう授業か。


 俺は窓際の一番後ろの席という特別席で授業を淡々と受けていく。

 隣には田村さん。

 なんの因果か、彼女は隣の席なのだ。


 田村さんの横顔は綺麗だ。可愛い。見飽きない。ずっと見ていたい。


「そういえば――」


 見惚れていると、田村さんが小声で話しかけてきた。


「ん?」

「君のこと猪狩いがりくんでいいかな」

「おいおい、学年が上がってもう一ヶ月が経っているぞ。忘れているだろうが、俺は『猪狩いがり しょう』だ。猪狩でいい」

「変わった苗字だね」

「よく言われる」


 そういえば、女子から名前を呼ばれるのは初めての経験だ。いつも『オイ』だとか『お前』とかそんな呼ばれ方しかしていない。


 もしかして、田村さんは天使かな?


「猪狩くん、なんでわたしの配信を見つけたの?」

「なんでって、偶然だよ。ストーカーではないと断言しておく」

「ふぅん。そういうコトにしておいてあげる」


 む? なにやら優しさを感じたような。なんだろう、心が妙な感じだ。いやいや、まてまて俺よ。そう簡単に篭絡ろうらくされるな。


 弱みを握っているのは俺なんだぞ!


 甘い言葉に騙されるな俺よ。


「田村さん、こうなったらバニーガールのコスをしてもらうよ」


 俺がそう要望を投げると、田村さんは飛び上がって席を立った。


「はああああああああああああああ!? バニーガール!? ばっかじゃないの! そんなの恥ずかしくて無理!! 無理無理無理!!」


 赤面して大慌ての田村さん。


 クラスがシ~ンと静まり返る。

 担任の蔵永くらながが冷静に「授業中だぞ、田村」とツッコムと同時に、クラスメイトの笑いで包まれた。

 田村さんは更に顔を真っ赤にして着席。小さくなっていた。


 まさか、そんな拒絶反応を見せるとは思わなかった。けど、これは決まりだ! 絶対にバニーガールを着てもらうぞ!!



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