ainoitami

タチバナメグミ

「ずっとこのままでいたいな」

「あなたとこのまま繋がっていたい」

「だいすき」

「あいしてる」

「やっと、あなたとこうして繋がれたの」

「離れ離れになんてなりたくないな」

「もうずっと、明日なんて来なくていい」

「恋人になるとか、結婚するとか、じゃなくて。その先の、ずっと遠くて、深いところ。私はあなたと、そこに行きたかった」

「繋がったまま、生きていたい」

「私の夢は、今日、叶ったの」

「愛してる」

「わかるかな?あなたの血が、私の血になるの」

「あなたの心音がわたしの心音なの」

「この痛みも、膿も、腐りも」

「軋む骨も、わたしのものであり、あなたなの」

「一緒に生きて、一緒にいる。病める時も、健やかなる時も」

「全ての瞬間を、あなたと共有するの」

血溜まりが広がる。いくら縫い合わせても、腑は、血は、溢れ出す。断面から爛れ、膿み、虫が湧く。体はいつか腐る肉塊でしかない。心は、脳が見せる幻想でしかない。けれど。愛はここに確かにある。わたしの腹に縫い付けたあなたの身体を抱きしめる。あなたの身体はもう生きていない。あなたの心も、きっと動きを止めてしまっただろう。抱きしめる腕に力を込めるほど、腹から血がぼたぼたとこぼれる。愛は、この傷みだ。この愛は、この傷みだ。

「あいしてる」

この傷みを、愛している。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ainoitami タチバナメグミ @poujiking

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ