剣聖の娘が賢者の弟子〜その娘は将来魔王になる予定です〜
桜庭古達
序章 五色の賢者の小さな約束
第0話:プロローグ
「はぁはぁ……師匠!やっぱ無理!流石にこれは出来ない!」
「無理だと思うから無理なんだよー。頑張れ頑張れティーナ」
息切れを起こす賢者の弟子を背もたれのある椅子に座って力ない声援で助力する賢者の図。
「ふっ!……ぐぬぬぬぬ…………だぁ!むりぃ!!」
と、弟子の魔力が空っぽになったその瞬間、力なく倒れ込む。
さっきまで行っていたのは土の細かな操作だ。工程としては土に魔力を流して同調させる。そして魔力と同時に土も動かす。それだけだ。
なので、こんなもの魔法ですらない。
ただし土の場合は異常なくらいにムズい。
「ふむ、やっぱ無理だったか」
「師匠も無理だって思ってたんじゃんかぁ!」
「あ、やべ」
うっかり、と言った様子だが、その失言を別に正そうという気はないらしく、先程まで土で作った椅子に腰掛けていた賢者はその後は何も言わずに近くにあった小さな杖に手を伸ばし、
「ほれ、我が子たちよ。そこの魔力が空になって動けない弟子をそこの椅子まで運んでやれ」
そう呟き、軽く杖を左から右へと薙ぎ払う。
すると、森の一角にある緑の一切のない剥げた土が勢いよく隆起し始めた。
「ほら、こうやってやるんだよ。わざわざ杖まで使ってやったんだから」
「えっ?ごめん見てなかった」
「こいつ……」
とまぁ、魔法界の頂点を意味する『賢者』の俺にこんな失礼な態度なのだから俺も素の性格でいられるのだろう。
そもそもとして師匠である俺がその態度を正そうともしないのだから俺にも原因はあるとは自覚している。ただ根本として、年もそれほど離れてないんだからそういった上下関係を俺らの間で構築させるのもなんか違うなということでほっといてるわけだが。
ただそれ以上に……
「めんどくせぇんだよな」
「師匠、相変わらずその口癖直した方が良いんじゃないの?」
「態度も口調も直さないお前にだけは言われたくねぇな。ほら、運べゴーレム。あ、ついでに俺も」
先程の隆起した土は一瞬にして人の姿に整えられ、
「いやぁやっぱ楽だなゴーレム。体を動かさなくてもいいし、使うのは土を操作する分の魔力だけ。お前も早くこの技術を覚えて俺を楽にしてくれ」
「それは良いんだけど……この格好どうにかならないの?」
「ん?なんだ、お姫様抱っこはいやか。なら……やっぱいいやめんどくせ。どうせ周りには誰もいないし、それに続けてれば魔法と同じで慣れるって」
これはゴーレムを作り出した時の最初の運用方法だ。
というか土魔法を学び始めた時の最初の目標だった気がする。因みにゴーレムを人形に設定したのは運んでもらう時、お姫様抱っこが一番楽という結論に至ったためだ。
「今日の修行はここまでだ。家に帰るぞー」
「はーい」
そんな一連のやり取りの後、ゴーレムは地面を闊歩し始める。
「(うちの弟子はこんなんだけど、他のみんなの弟子は一体どう成長していることやら)」
そんな中、師匠である『クイナ=エシハ』は友達である他の賢者について想いを馳せていた。
熱血派のジダに冷静なウェルナルド。朗らかなアンナにお節介な……
「(クレア……)」
特に想いを寄せてる訳じゃないヨ。ただ単にあの性格のヤツをどう躾けるのかが、ね。お節介が弟子を持つとどうなるのか。自分の弟子の次にクレアの弟子の成長も楽しみである。
―――二十歳程の若い五人の賢者の育てた弟子が、いつかこの世界にその名を轟かせるのは想像に難くないだろう。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
あとがき
プロローグ見てくださりありがとうございます!
細かなことは近況ノートの最初の方に書いてありますので興味が出たらそちらのを見てもらえたら、と。
あと本家より地味に設定の辻褄合わせ等の改変入れてあるので、腑に落ちない部分はなるべくないと思いまーす。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます