Last summer

@k_motoharu

第1話

向日葵が咲いていた。

数ある花の中で、俺が一番好きな花。


『いつかサガミも、これくらい大きくなるのかな』


向日葵を見る度に、昔母さんとした会話を思い出す。

流石に2mは越えなかったが、背丈は確実に伸びていた。


大切な人との、数少ない思い出。

今年もこの季節がやってきた。


都古はこの時期になると、表情が少し暗くなる。

僅かな違いで、周囲の人は気付いていないようだった。


数年前の夏、あいつのじいさんは突然この世を去った。

俺の知らない所で。俺の気付かない間に。


向日葵を一番綺麗に咲かせる夏。

大切な人を失った夏。


この季節が来る度に、俺は複雑な気持ちになる。


過ぎ去ってしまった時間は、もう帰ってこない。


母さんと二人であの花を見上げることも、

都古とじいさんの三人で出掛けることも、

今はもう叶わない。


当たり前だった日常。


全てを取り戻すことはできないけれど、


あいつの心に空いた穴を、少しでも埋めることができるのなら


新しい思い出を、もう一度。

これからも、ずっと。


目の前に咲く向日葵を見上げながら、強く願った。


それが俺にできる、唯一の償いと信じて。

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