惨劇


 俺は村の出口に向かいながら考える。


(あの瞳の奥にある黒い靄。まさか....)


っと考えていると。向こうから見覚えのある二人が走って来るがいた。


 俺に近づき、話しかけてきた。




「お! オオハラじゃね〜か〜」


「おぬし、向こうから来たようじゃが、なぜこっちに来た? まだ火は消えとらんぞ....?」


「いやー、助けを呼ぼうと思いまして」


(苦し紛れの言い訳だ)


 俺は二人の瞳から警戒感、疑い、の感情が見えた。




「ふむ....」


「おい! オオ、、」


 四十代の大柄な男が何か言おうとした時、後の方から光が強くなったのを感じた。




 俺は後ろを振り向いた。


 そこには、火の柱が空まで上っていた。




「なんじゃ、、あれは、、」


「くっ! 村長! 早く行こう!」


 二人は走り出し、穀物の倉庫方へ向かう。




 俺も早く出なければっと思い、動こうとした。


そうすると、大柄な男が叫んできた。




「オオハラ! この騒動が終わったら話がる。後で村長の家に来い!」


「わかりました」


(もう二度と会わないがな....)


俺は村の出口に向かうよう走る。








(あぁ、私どうしちゃったんだろう。


ただ毎日楽しく、平和に過ごしていただけなのに....)


クエンは体を丸めていた。




「やぁ! また会ったね!」




 声が聞こえ、クエンは顔を上げる。


「あ......黒いの....」


「どうしたんだい? 元気がないよ?」


「私ね..人を殺してしまったの....」


「あら~、それは大変だね! でもでも! 君には、力があるよね!」


「....力?」


「そう力! 僕は君の力を強くする事が、できるんだ!」


「力を強くしてもどうにもなんないよ!!」


クエンは声を荒げて言った。




「..なるんだよ」


「.....え?」


「殺してしまった人間を蘇らせるんだ」


っと言い黒いものはあの時と同じ、何か差し出してきた。




「で、でも! 蘇生は、勇者様しかできないって!」


「はぁ~、全く、皆して勇者様勇者様って、彼等の何がいいんだい? でもまぁ、それは、嘘だよ」


「そんな! 私は騙されない!」


「....君は人の人生を奪ったんだ。しかも、もう勇者でもあの人間は蘇生できない。だから、君がするんだ」


「わ、わたし....」


 クエンが動揺していると何処からともなく、必死に名前を呼ぶ声が聞こえてくる。




「クエーーン!」


っと外から声が聞こえた。




 クエンの体は反射的に振り返り、見てみるとそれはお母さんで嬉しい気持ちになった....が、動きが遅く感じ、この空間と現実の時間が違う事に気づいた。




 そして黒いのは問いかける。


「君のお母さんはどう思う。自分の娘が人を殺したっと思ったら」




 クエンはただジッとした。




「君は欲しくないのかい? 永遠の幸せを?」


「えいえんの、しあわせ....」


「そう....皆んなを幸せにしてあげるんだ。そして、本当の平和を手に入れるんだ」


 黒いのが近づき。何かを更に近づけさせる。


「さあ......」






「わたし..みんなを....」


 クエンは何かに、手を近づける。








 シュルアは人混みをかき分け、クエンの両肩を掴む。


「クエン! 大丈夫かい!?」


「あ~、お母さ~ん」


「よかった~~」


 シュルアはクエンの体を見て、特にケガが無いことを喜び。強く抱きしめる。




そうするとシュルアの耳元で無邪気にクエンが喋り出す。


「お母さん、わたし......みんなをしあわせにするの」


「....え?」


突然後ろで燃えていた倉庫の火が、クエンとシュルアの周りに集まってくる。


シュルアは火を見渡し恐怖に駆られた。


「ク、クエン! あんた一体何を!」




「お、おい! 大丈夫か! 誰か、水を!」


周りの人も驚いて、シュルアとクエンを助けようと行動する。




 助ける時間などは無く、火は円形状にクエンとシュルアを囲み、火は天高く上り、壁ができ、周りの人が見えなくなった。


クエンはシュルアの腕から離れ、見る見る姿が変わっていく。シュルアは何も言葉に出来なかった。


 愛する娘が、悪魔のような姿になっていく様を。


 クエンの体から火の翼が生え、全身に火の鎧みたいなのがつき、手からは鉤爪が生えていた。


体は人だが、もはや人ではない、何かだ。




「クエン......」


「あぁ..お母さん、今、凄く気分がいいよ」


「一体どうしたのクエン!!」


「お母さん見てて、私が殺してしまった人を蘇らせるから」


クエンは手を横に振ると、火の壁は消え、周りの人々の姿が見えた。




「んなっ! だ、誰だ!」


「クエンちゃん?」


 周りの人は戸惑っているが、クエンは無視し手を前に出した。


そして、人混みの空いている空間に火を集めだした。


その火は徐々に、人形ひとがたになっていく。




「ばっ、バケモンだ!!」


 周りの人は悲鳴を上げ、逃げ出す。




 クエンは嬉しそうな目でシュルアを見た。


「お母さんほら! 蘇ったよ!」


「やめなさい! クエン!」


「あぁでも、皆の分も蘇らせないとなぁ~」




 もうシュルアの声は届かなかった。


 シュルアはクエンの元へ、駆け寄ろうとするが。




「だめだよ~お母さん、勝手に動いたら~」




 シュルアは火の檻に閉じ込められた。


檻から出ようと火を掴むが熱くはなく、逆に暖かった。


 シュルアは頑張って檻から出ようと、力一杯火の棒を前後に揺らすが出られなく、クエンを見てみると怯えている一人の人に手を伸ばしていた。








 悲鳴が聞こえる。




 わしらはより早く走る。


....やっと倉庫につき、悲惨な状況を目にする。


クエン? っと思しき人物が、人を灰に変えている姿を。




「村長! あんたは逃げろ!」


 四十代の大柄な男は冷静に対処してるっと思ったが、手が震えていた。




「何を言う! お主も逃げるぞ!」


「いや、俺はシュルアさんを助けに行く!」




 わしはシュルア? っと思い。


 クエン? の奥を見たら檻に囚われている、シュルアを発見する。


少し窶やつれているかのように見えた。




「む、無理じゃ! あんな化け物と戦ったら死ぬぞ!」


「村長....俺は、誰も見捨てない!」


「馬鹿を言うな!」




男床に落ちていた鍬くわを手に取り、走り出した。


「うおおお!」




 クエン? は近づいてきた人間に気付き、手を前に出し男を灰に変えた。




 わしは、逃げようと足を動かそうとする。ふと、視界に倒れている子供を発見する。


まだ、灰になっていないので生きていると思い近寄る。




「おい! 大丈夫か! しっかりせい!」


 しかし、返事がない。


 仕方ないおぶっていくかっと思い。体に触れた瞬間、違和感があった。


フワフワしていると。


 子供はゆっくりと顔を上げ、わしは顔を見た。顔は真っ赤で、服を着た人形だった。


 それは人間では無かったのだ。




「キャハハ!」


 それはまるで、本物の子どもかのように笑った。




 わしはもう終わりだと、絶望を感じた。


....何だか自身の体に異変を感じ、さっき何かに触れた手を見た。..灰になっていた。


灰は徐々に手から腕へと進行して行くが、不思議に痛みはなかった。




 わしはその場で正座をし、片手の無い手を合わせ祈る様に。


「どうか! 勇者様、我らをお救いください!!」


周りから笑い声が聞こえる中、村長は目を瞑った。








「ウフフ、お母さん見て! 皆、蘇ったよ!」




 シュルアは何も喋らない、ただ座って、俯うつむいていた。




 そんなシュルアを見てクエンはまだやる事を思い出し行動する。


「後は....永遠を手に入れるだけ!」


手に火の玉を作り、空に向かって放つ。


 火の玉はある程度の場所に行くと、空中で村を囲む様に広がり、村は火の壁で覆われた。


「もう、これで誰も死なず! 永遠にここで、幸せな暮らしができる!」


アハハハハ! っとクエンは高らかに笑う。








 大原は森の木の上から惨劇を見ていた。




「見てよ、瑠奈るな! あれこそが愛だ!」


 左小指を自分の頬に当てながら喋る。




 大原は満足していた。


計画は失敗したが、結果的にいいものが見れて。




「リュエン、君もあそこに連れていきたいが、近寄っただけで死ぬかもしれないから、君はここで我慢してくれ」


下におり、大原はリュエンの死体を埋める。




 大原はリュエンを埋め終え。


ふぅーっと一息を付きながら、火の球体に囲まれた村を見た。


「クエン、君の幸せは俺の幸せになる。だから君は、そこで永遠に幸せでいてくれ」


(でもまだだ、あれでは本当の永遠にはたどり着けない)




 大原は立ち上がる。


 道は分からないが、歩き出そうとしていた。


「さて、瑠奈、次はどんな物語が待っているんだろうね」


手に黒い手袋をはめ歩き出す。




永遠。


..そう、時間を巻き戻せる魔法を探しに。

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