事件
俺はクエンを見送り、会場の片付けをしなければっと思い来てみたらすでに終わっていた。
残った机を囲み村の大男たちが、酒を飲み賑やかにしている。
「ああ、終わってる」
っとリュエンは立ったまま呆然としている。
「リュエンがサボりとは珍しいな!」
四十代の大柄な男性が近づいてきた。
「すみません」
「いや、いいってことよ! それより、どうだった!」
「え? 何が....」
リュエンは机を囲んでいる男達を見ると、男達はリュエンを見ながらニヤニヤしていた。
「なぁーに! もう隠すなって! クエンちゃんと出来たか?」
四十代の男は小指を上げながら言った。
「え!? なな、なんで....」
「お前はもう二十歳なんだから、恋の一つや二つあるだろ」
四十代の男はリュエンの肩に手を置く。
そうすると遠くのほうにいる男から「キスしたかー!!」っと、笑いながら喋る声が聞こえた。
「お、俺! もう帰りますね!」
俺は恥ずかしくなり、すぐ後ろを向き駆け足で会場から離れた。
「おう、気を付けて帰れよ」
四十代の男は笑いながら言う。
俺は家につき、寝室のベットに横たわった。
「はぁ~、ひどい目にあった」
俺はベットから起き上がり、寝室の窓があいていたので閉めようっと思った。
ふと、タンスの写真立てに目が行き、写真立てを手に取り、手で写真をなでた。
「父さん、母さん、俺やっと思いを伝えられたよ....」
写真立てを置き、俺は寝室の窓を閉めた。
明日に備え寝ようと思い、寝室の明かりを消しベットに仰向けで横になり、目をつぶると視界が真っ暗になる。
(明日オオハラに、相談しないとなぁー)
そんなことを考えて、リュエンは深い眠りについた。
クエンは部屋のカーテンを開け、朝日を浴び、両手を上に伸ばし背伸びをする。
「んん~、朝日が気持ちい!」
(昨日はとても楽しかったです! 昨日オオハラに踊りの感想を聞こうと思ったら、眠いから先に帰ったらしい。だから私はホントかな~って思ったからお母さんと一緒に帰り、私はオオハラの部屋に入ったの、でっ! 本当に寝てた。
祭りで疲れたのかな? って思った。だから明日聞こうと思い、私も早く寝たの!)
クエンは朝日を浴び終え、右手に拳を握り肘を曲げ気合いを入れる。
「よ~し!」
私はまずオオハラの部屋に行き扉を開けた。だけど、オオハラはいなかった。
あれ~? っと思い、私は部屋を出てお母さんを呼んだが、返事がない。
誰もいないので、私は外に出ようと思い、ドアハンドルに、手をかけたとき、声が聞こえた。
「一体誰が、こんなことを.....」
人の声が聞こえたので、私はドアを勢いよく開け元気に挨拶をする。
「おっは、、、、」
そこにはたくさんの人が集まっており、クエンはある物を見てしまい言葉が途切れた。
「クエン起きたのかい! 今は外にでるんじゃない!」
お母さんの顔は見たこともない、恐ろしい顔をしていた。
お母さんはある物を隠しながらこちらに、近づいてきたが隙間から、私は見えてしまっていた。
リュエンの頭だけの死体を、私は意味が分からなかった。
「ほら、クエン、お家にお入り」
「なぁ、なんで?」
「見たらだめ」
「お、おかしいよ! ねぇ! あっわかった! 偽物でしょ! 皆で、私を脅かそうと思ったんでしょ! いやー、びっくりしたな!」
クエンは半笑いで喋った。
「クエン!」
私はその場で膝から崩れ落ちる。
(だって、おかしいでしょ! 今の時代人が殺されるなんて! 皆幸せに暮らせる時代なんだよ!
それなのに、人を殺すなんて! おかしい、おかしい、おかしい、おかしい、おかしい)
「シュルア、クエンを部屋に」
「はい、村長」
シュルアは動かなくなったクエンを連れ、部屋へ戻っていく。
死体の近くにいた、四十代の大柄な男は喋る。
「村長、これは大事件だ....」
「ふむ、疑いたくないが、犯人は村人の中におるじゃろう」
「クソ! 誰がこんなことを!」
「昨日、リュエンと関わったものは、わしの家に来る用に、記憶をたどり、リュエンが何をしていたのかを見る」
っといい、村長は解散の合図を出した。
その時、オオハラは村長の視線を感じたが、無視した。
「あと、胴体さえあれば....」
オオハラは気になる、言葉を聞き、頭の近くに行き、質問しに行った。
「あの~、すみません」
「おお、どうした、姫男」
「あと、胴体があればなんだか、みたいなことを言っていたので、胴体があれば何ができるのかなぁーっと思いまして」
「なんだ、しらねぇのか? 勇者様が蘇らせてくれるんだよ」
「それでなぜ、胴体が......」
遠くから誰かを呼ぶ声が聞こえる。
男は声のした方向を見て言う。
「お! 今行く! わりぃな、また今度教えるわ!」
男は頭を大事に抱え、どっかにいく。
オオハラは小さく「クソが」っと呟き、次の計画に行動を移した。
(私は今、何処にいるんだろう....)
クエンは周りを見渡すが全てが真っ黒だった。試しに歩くが、進んでいる感じがしない。
「ねぇ! 誰かいないの!」
大声を出すがただ自分の声が響き、返事なんてない。
「お母さん! リュエン! オオハラ!」
反応はない。
(独りぼっちだ。いや、私を独りにしないで....)
クエンは体育座りし、丸まっていると。
「独りは、嫌だよねぇ~」
クエンは、直ぐに立ち上がり、声がしたほうを見た。
そこには、黒い丸い物体が浮いていた。
「あなたは....なに?」
「僕は君の魂だよ」
「私の..魂?」
「そう、今君はすごく不幸でしょ? だから、僕は君に幸福を与えに現れたのさ」
「幸福? 何言ってるの? 私は今幸せだよ? だから、早くここから出して! 皆がまってる!」
「ほんとに~? 君は不幸だから、ここに来たんだよ..。....だって大事な人を亡くしたから!!」
「大事な....人?」
「さぁ、思い出してごらん」
クエンはその場に膝をつき、両手で頭を抱えた。そして、思い出したくない記憶が脳裏に浮かぶ。
口から言葉が出ずクエンはただ口を開けたり、閉じたり繰り返し絶望していると、黒いものが優しい声で話しかける。
「幸福が、欲しくないのかい?」
「本当に、幸せになれるの?」
「もちろん!」
黒いものは、何か差し出してきた。
私は何かを受け取ろうと、手をさし伸ばそうとした時、耳元で誰か呼んでいる。
(あぁ、お母さんだぁ~)っと思うと、体の力が抜け、自身が透けていくのに気がつく。
最後に黒いものを見ると、表情なんて無いのにまるでニッコリしているかのように見えた。
「僕は、君の中にずっといるからね、困ったらまたおいで」
私はこの声を最後に聞き、目が覚めた。
「クエン! クエン!」
「ん~、おかあさん~?」
クエンは、部屋で寝ていた。上半身を起こし、ぼやけた視界の中シュルアの顔を見ると、心配そうな顔をしていた。
「クエン! 大丈夫かい?」
「なにが~?」
「あんた、かなり魘うなされてんだよ!」
「ええ、ほんと~?」
私は寝起きで力が抜けた声で答えていたら、お母さんは、はぁ~っとため息をついた。
「もう、心配したんだから」
シュルアは肩の力が抜けた。
「ごめ~ん」
私は手で目を擦りながら言うと、お母さんはいきなり私のことを思い切り、抱きしめた。
「クエンのことは絶対! 守るから..」
私はお母さんの優しい声に耐え切れず、目から沢山の粒が頬に流れた。
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