第12話 おじいちゃん牧師様との出会い
「でもね、一番辛かったのは、僕を助けようとして、あの犬が死んだ事だった。
燃え盛る炎の中に飛び込んで、自分も火だるまになりながら、僕をくわえてプールに飛び込んだんだ。
犬は全身に火傷を負って死んだのに、また僕は助かった。
とっさに顔だけは手で覆って無事だったけど、ミイラみたいになったからだから包帯が取れたとき、僕の頭と右半身の皮膚はすっかり溶けて引き攣っていた。
雪の降るクリスマスイブの朝、僕は神を呪った。
「なぜ死なせてくれないんだ。僕から大事なものを全て奪ったくせに、なぜ命だけ取らないんだ。神様、あんたが僕を作ったんだとしても、僕は欠陥品だ、生きるに値しない。だから僕は自分で自分を罰する」
そう天に向かって叫んで、僕は病院の屋上から飛び降りた。
落ちていく間、『やっとこれで楽になれる』とほっとしたのを覚えている。
でも落ちていく僕の頭の中で『NO!』と声がした。母さんの声だった。
そう思った瞬間、
『ボギョエェ』と変な声がして、
僕は何か柔らかいものの上に落ちた。
大きなプレゼントの袋を持った、太ったサンタクロースだった。
そのサンタの中身が、おじいちゃん牧師様こと、トニー・グレゴリウスだったのさ。
病院の子供たちに、ふわふわなぬいぐるみのプレゼントを、袋に詰めて持って来た所だったんだ。
牧師様は、ムチウチと鎖骨の骨折で即入院。またもや僕は無傷だった」
あたしは、頭がぐらぐらしてきた。
「あのー若牧師様、話作ってない?」
「それがねェ、全部本当のことなんだよ。僕は七回、神に死を願って、全て退けられたんだ。
僕は、治療を終えたグレゴリウス牧師様のところに、謝りに行った。
当然、自殺の理由を聞かれた。仕方なく、今話したことを彼に話した。
七回も自殺し損じたのを聞いて、彼は
『えらい粉々に砕かれたなぁ。よっぽど神様に見込まれたんだよ、君は』
と言った。
僕が、訳が分からずポカンとしていると、
『神様はね、自分の“道具”として使いたい人間を見つけると、まず自信やプライド“自我”ってやつを、木っ端微塵になるまで砕くんだ。
たくさんの試練を送ってね。砕かれた人間にしか、神の声を聞くことはできないからさ。私もそうだったよ』
そう言って出エジプト記のモーゼの話をしてくれた。
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