冒険者エボリューション!

Aze

プロローグ

冒険者という職業が生まれました。

【冒険者】それは今となってはもう、ゲームの世界での話ではない。


5年前、現代社会で科学力による進歩を日々感じていた、ある日異界の扉ゲートが世界中に出現し、人類は魔力や魔具など様々な恩恵を手に入れる。その代わりにモンスターという凶悪な害獣が出現するようになってしまい、人類は異界の扉ゲートの処理に追われていた。

魔力に覚醒しスキルを駆使してモンスターに対抗する人々を、ゲームやアニメ、おとぎ話にちなんで【冒険者】と呼ばれるようになった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


日本の愛知県名古屋市〇〇町。以前は都心から離れているとはいえ、動物園などがあり、普通の街だったが今はモンスターの影響で廃墟街となってしまった。

そんな廃墟と草木で荒れている場所に一つの大きな穴がある。

その中は洞窟になっていて、俺達がいるのはその洞窟の奥深く。松明で照らすと天井は高く岩肌は少し湿っているのが分かる。動物の死骸があちこちに転がり、悪臭が漂っていて不気味な雰囲気である。


ガキンッ!ジャキンッ!


剣と剣がぶつかり合う音が響く。

そう、ダンジョンに来ている。冒険者といえばダンジョンと言っても過言ではないだろう?

冒険者はダンジョンに入って貴重な物資、資源を調達し生きていく。


ダンジョンとは「地下牢」を意味するのだが、皆は異界の扉ゲートから出てきたモンスター達が山や洞窟、廃墟などを起点に自分達の巣や縄張りを作ったものを総称として呼んでいる。一般人の通報を受けて発見されることが多いがその頃には手に負えない状態になっていることが多い。その為、15人程で行くのが基本となっている……。


ガァアアアア!


暗い洞窟の奥から気持ち悪い声で威嚇しながら出てきたのはゴブリンだ。


身長は120cm程で痩せ型が多い。

ゴブリンの肌は緑色ではない。灰色だ。こんな洞窟だと見えづらくてしょうがない。

でも醜い顔と臭さはイメージ通りのものだ。基本的には棍棒とボロボロで破れている皮製品を下半身に一枚身につけているスタイルだ。他の冒険者から奪ったものであろう防具や武器を身に着けていることもある。


「敵はゴブリン3匹よ!タンク!ターゲットを取りなさい!」

この赤色のローブを着て杖を持った気の強そうで顔とスタイルだけは良い若い女が【火の魔法使い】パーティリーダーのユウカ。

「任せろ!うぉおお【戦士の雄叫びウォークライ】‼」

ゴブリン達は一斉に声に反応し一時的に固まる。

こいつはユウカを狙ってる男の一人、【重戦士】のツヨシ。

「もらいぃ!不意打ちバックスタブ‼」

1番後ろにいたゴブリンの背後を取り短剣で首元を一撃で突き刺し1匹のゴブリンを仕留める【盗賊】のユウタ。こいつもユウカを狙っている男の一人。

炎の矢雨ファイヤーレイン‼」

ユウカは炎の矢を大量に降らせる魔法を使い残りの2匹を仕留めた。デカイおっぱいが揺れる。

【火の魔法使い】、【重戦士】、【盗賊】ってのは冒険者登録する時に行うほぼ自己申告制のもので、主に何ができるかをわかりやすくするものである。

「流石!」

「ナイスゥ〜!」

ツヨシとユウタの目線はユウカの胸元に。

もちろん俺もロックオン!!!


「荷物持ち!剥ぎ取って!」


そう....さっきから色々語っていたが、

「はいはい〜!.....アッツ!!!!」

【荷物持ち】の大神淡(19歳)が俺。


俺が冒険者になりたいの知っててノリで荷物持ちって言いやがったなコイツ...

っていうかファイヤーレインの後、熱すぎて死体漁れねぇよ!!!

「もぉ〜鈍臭いわねぇ!荷物持ちでもダンジョンについてこさせてあげてるんだから役に立ちなさいよぉ〜!」

本人は冗談のつもりで言っている。


「あはは....すんません...、本当ありがとうございます!元気モリモリ頑張りますので!許してくださいよぉ〜」


俺はペコペコ頭を下げて場の空気悪くならないようにする。


今は4人で訳アリダンジョン攻略中だ。


「あはは、酷すぎるよユウカさん!」

「でも魔力扱えないのにその量の荷物を背負ってついてこれる筋肉は凄いよなぁ...!」

全部で約40kg程の荷物を持ちついてくる俺を

ユウタとツヨシは可哀想に思えたのか、少しフォローをしてくれる。逆に惨めなんですがねっっ!?


「冒険者になる為に日々鍛えてますから!」

「アハハッ、魔力は感覚よ〜!?脳筋すぎるでしょ!」

ユウカは満点の笑みで言う。ムカつくけど顔は可愛いしおっぱいエロいから許す。


「ですよねぇ....!あははは.....!」


洞窟内に悲しい笑い声が響き渡ってしまう。


こんな惨めな思いをしてでもついてきた理由はもちろんある。


ダンジョンのオコボレだ。

人間関係さえ上手くやれば冒険者についていく事はできる。もちろん冒険者になるのを諦めてはいない。俺は冒険者になる。何なら自称冒険者だ。仲間と楽しく会話をし、死闘を乗り越えて「生きる為に生きる」勝ち取った物が直接、対価として支払われる。冒険そのものが財産になる。

平和そのものの現代社会に現れたイレギュラーな職業【冒険者】という職業に俺は魅力を感じ、なりたくてしょうがなかった。そう思って4年....体を鍛えながら冒険者に必死についていき荷物持ちをやって何とか生計を立てているが....

今だに魔力という感覚がわからない。だが諦めるつもりはない。少しでも可能性を広げる為に現場に立つのだ!


通常、ダンジョンミッションは冒険者協会が報告を受け、冒険者協会が難易度を査定した後、依頼が発行される。

それを冒険者が受注して複数人パーティを編成して挑むものだが、このダンジョンはユウカの知り合い冒険者が見つけた最近できたと思われるダンジョンで、新しく作られた冒険者法的にもグレーゾーンなミッションで遂行中である。


洞窟を歩き進みながら、ユウカは楽しそうにワクワクしながら言う

「いい?貴方達を信用して声かけたのよ!?通常、ダンジョンは10人程で行かないとだけど、それはダンジョンが依頼に出された段階での話よ!作られてる途中や見つけてすぐだったらクリアは簡単なのよ!」

確かに、さっきからゴブリンが2〜3匹ずつしか出ていない。ゴブリンは通常10匹以上で行動する事が多い。

「大体いくらくらい儲かりそうなんだ?」

ユウタが聞くと、少し考えてユウカが答えた。

「ここはゴブリンのダンジョンだから...そうね...約1000万円だと思うわ、3人で分けて1人3〜400万円くらいね!荷物持ちは1割よ!」

※日本の平均時給は2000円

「もちろんですよぉー!じゃぁ奢ってくださいね!?」

俺からしたら荷物持ちだけで100万円以上もらえるのだから異論はない。

「最初に出てきたやつ、"魔法石"持ちがいたし、運が良ければもっといくよな!?帰ったら皆んなで最近オープンした豚の父ピッグパパって所が美味しくてさ!皆んなで飲みに行こう!」

ツヨシも楽しそうに話す。


ダンジョンの入り口からここまで、30分程慎重に進んで来たが、12匹ゴブリンを仕留めている。モンスターの死骸は捨てる所なく高価値がついており、大体ゴブリン1匹で50〜80万円程になる。

ユウカの言っている事は事実だろう。


だが、最近できたばかりのダンジョンなのにこうも広く長い洞窟であることに少し疑問を持っていた.....。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る