戻りたくても戻れないあの場所へ

蒼天庭球

第1話 少しの希望、碧彩の後悔

 あの場所にはもう戻れない。自分でその輪から抜けることを決意したから。「待ってるからね」と声をかけてくれた先輩とはきっともう前のようには話せない。「よろしくね」と笑いかけてくれた先輩とも、たくさん話しかけてくれた先輩とも。そう思っていた。


 高校へ進学した私は、2週間だけ硬式テニス部に所属していた。辞めた理由は、部活が辛かったから。新入部員は私以外に2人。その2人はもう仲が良くて、私が話しかけたらまた嫌な顔をされるんじゃないかと思って怖かった。またテニスのことが嫌いになりそうだった。私は知っている。最初は楽しかったものは後から辛くなることを。最初に辛いことはこれからも辛いことを。でも、誰も助けてくれないことも。だから、私は部活を辞めた。部長や、ペアを組んでくれた3年の先輩にも迷惑をかけた。大会を棄権させてしまった。部活を辞めて、もうきっとこれで大丈夫だという希望と、大切な大会を棄権させたという後悔…。それでも、あの時の私はそうしなきゃいけなかったんだ。テニスを好きでいるために…。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る