空き教室の冒険 -3
階段を上りきった先、旧校舎の玄関で、僕を待ち構えている人物がいた。
坊主頭にどんぐり眼、野球部仕込みの太い腕。吉川君だ。
「よぉ、お前、どこ行ってたんだよ」僕の姿を認めるや否や、彼は詰問調で訊いた。「こっちはわざわざお前の部室まで行ってやったってのによ」
それはどうも。
「ちょっと気になることがあって、調べごとをしていたんだ。それで、何か用かい?」
「何か用もないもんだ。こんな時間まで残って、お前に会う理由なんて一つしかないだろ。依頼だよ、依頼」
「依頼。はぁ、依頼ね」
「そうだよ依頼だよ」唾を飛ばしてまくし立て始めた。「お前、心霊探偵とかいうのやってんだろ。昨日のあのトリックのタネを暴け。そして誰がそれを仕掛けたのか、俺に教えろ。くそっ、ひとを馬鹿にしやがって。何が“しるし”だ何がミドウサマだ。あんなもん絶対にインチキに決まってる。俺は認めねぇぞ。犯人の奴をとっちめないと気が済まねぇ。おいなんだよなんなんだよその嫌そうな顔は。まさかオカ研のお友達を庇いたいから、断るって言うんじゃないだろうな。差別だぞそれは差別。差別反対。部活の一環としてやってる以上、お前に客を選ぶ権利なんてありませーん。言っとくけどな、俺は別にビビってなんかいねぇぞ。おおそうとも、誰があんな程度で怖がるかっつーの……」
以下中略。
かくして僕は、半ば強引に依頼を引き受けさせられた。部長もなんだかんだで真相は気になっていたのか、「一枚噛ませてくれ」と言ってくれた。
部活動の一貫としての心霊探偵である以上、客を選り好みしてはいけない。
確かにまぁ、彼の言い分にも一理あると言わざるを得ない。
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