【感動する話】近未来の盗撮に成功したおじさんが英雄になりました。

ミクの物語LAB

その裏側がヤバすぎた。

俺は、推し女子高生の盗撮に成功した。女子高生の着替える姿も見えるし、会話もはっきりと聞こえる。しかし、そこには衝撃的な事実が映し出されていた。まさか、この盗撮が俺の運命を大きく変えることになるとは、その時は知る由もなかった…。


俺の名前は吉田哲郎。48歳独身だ。町工場に20年間勤め、安い給料で質素な生活を送ってきた。特にこれといった趣味も特技もない俺は、周りに溶け込むように流されて生きていた。古いアパートの2階に住んでおり、窓から外をぼんやりと眺める時間が多かった。目標も夢もなければ、やりたいこともない。「現状維持」が一番であり、その結果が今の生活だ。

そんな俺だったが少し変化が起きた。仕事場の状況が変わり、週三日休めることになったのだ。そのため、俺は暇な日が一日増えた。かといって熱中することがない俺は変わらず窓から外を眺めた。すると、女子高生達が登校するのを見かけた。いつも眺めるのは土日だったため知らなかったが、アパートの前は通学路になっているらしい。俺は窓から彼女達を眺めるのが好きだった。


「あの子は今日髪型変えてるな」「またスカートの丈が短くなってる。好きな男でもできたのかな」


と、好き勝手考察した。そしていつのまにか、女子高生を上から監視するのが俺の趣味になった。女子高生に気づかれたら人生終了というスリルが、刺激のない生活を送ってきた俺にとって最高の快感だった。そして、俺は推しの子を見つけた。高校二年生で、名前はミズキちゃん。名字はわからないが友達が彼女をそう呼ぶため知ることができた。ミズキちゃんは黒髪ロングで、目がぱっちりとしている。スカートの丈は周りよりも長く、どこか上品だ。これがいわゆる、「清楚系」に属するのだろう。ミズキちゃんは俺にとって唯一の癒しだった。女子高生はたいてい黒髪ロングなため、上から見ていると見分けがつかなくなるが、その点は安心だった。ミズキちゃんのカバンには小さなクマのぬいぐるみキーホルダーがついていたため、それが目印となった。


俺は時々、自分の欲を抑えられなくなる。ミズキちゃんに話しかけるために、外で待ち伏せをした時も何回かある。しかし、毎回一歩手前で我に返り、部屋に戻るのだ。手を出してしまえば人生が終わる。だが、週に一回しか会えないのが辛かった。もっと彼女を見ていたい。ずっと監視したい。俺は頭をかかえていた。

そんな時にあるニュースが流れた。駅で盗撮をした男が捕まっていた。

「もしかしてこれならミズキちゃんをずっと監視できるのでは…」と悪い思考がよぎる。

悩んだ末、俺は実行することにした。


俺は、オリジナルの小型カメラを一から作りはじめた。長年工場勤務をしてきたおかげか、手先は器用だった。もたもたしていると彼女は卒業してしまう。俺は死ぬ気で完成させた。制作にあたって、かなり大金が消えたが仕方がない。クオリティーを下げては成功した時に後悔する。妥協はせず、完璧なものを作り上げた。高画質な映像に加えて、音声まで聞こえる優れものだ。

「これでもっと会話ができるね」と、俺はニヤけて笑った。

バカな奴らは相手に近づいて盗撮するから現行犯で見つかって捕まる。そこで俺は考えた。ターゲット自らから私の元にくればいいのだ。自分の元に盗撮されにくるというありえない状況だが、俺には可能だった。ミズキがカバンにつけているクマのぬいぐるみを利用するのだ。ぬいぐるみを見続けてきた俺は、ボロボロで壊れかけていることと、ミズキがかなり大切にしているということを知っていた。俺はそこにつけいることにした。まずはじめに、アパートの下に小さな店を開いた。ぬいぐるみの修理屋さんだ。俺は修理の技術も身につけ、ひたすら店で待った。そして、案の定彼女が来店する。


「いらっしゃいませ」

「あのー、このぬいぐるみのキーホルダーなんですけど…」

「あー目がとれかかっていますね」

「なおせますか?これ、すごく大切なもので…」

「私に任せてください」


と言い俺は修理を始めた。そして、新しく取り付けたクマの目の中に開発した小型カメラを仕込んだ。


「できました。目を新しいものに変えておきましたよ。ついでに耳も新しいのをつけておきましたから」

「ありがとうございます!」

「いえ、またお越しください」


作戦完了。耳には盗聴器、目にはカメラ。これであのクマのぬいぐるみは俺の目と耳になってくれる。俺はニヤけがとまらなかった。さっそく試してみる。映像は鮮明に映り、音もしっかり拾っていた。大成功だ。

ミズキはカバンを部屋に置く。部屋がはっきりと映し出された。

「ここがミズキの部屋か。可愛いねぇ」

ベット、洗濯物、下着…。俺は興奮し、映像を拡大して見ていた。そして、ミズキが着替える姿もバッチリ撮影。

すると、着替えたミズキはなぜか病院に向かった。そこには病気で寝たきりのミズキの母親がいた。どうやら、ミズキは母子家庭でかなりお金がないらしい。治療費や入院費と出費が重なり、生活が苦しくなっていた。


「ミズキ、大学には行きなさい」

「ダメだよ。そんなお金ないし」

「看護師の勉強、したいんでしょ?」

「そうだけど…。でも大丈夫!私のことは心配しないで」

「お母さん、ミズキのこと応援してるから。お金も用意してあるのよ」

「何言ってるの?!そのお金は…」


ミズキの母は、自分の治療費を大学の費用にするつもりだった。このままでは、母は死んでしまう。ミズキの目には涙が溢れていた。お母さんは優しい笑顔でミズキを抱きしめていた。どうやら、あのぬいぐるみは母からのプレゼントだったらしい。俺はとんでもない罪悪感に襲われた。


帰り道、ミズキは柄の悪い連中と密会し、ラブホテルに入った。


「今日も後払いでいいな?その分はずむからよ」

「はい。わかりました…」


ミズキの声は震えていた。ミズキが連中に犯される映像が流れる。俺は興奮なんか一ミリもせず、ただ胸糞悪いだけだった。ミズキがシャワーを浴びている時、俺は連中の会話を聞いた。


「兄貴、本当にあいつに金払うんすか?」

「バカ。なわけねぇだろ。いらなくなったら捨ててやるさ」


ミズキは騙されていたのだ。


「こいつら、許さねぇ…」

俺は、連中にも、盗撮をした自分にも激怒した。自分はなんて恥ずかしいことをしたんだ。ミズキさんの大切なぬいぐるみを壊して、盗撮して…。俺は決意した。俺は家を飛び出し、警察に向かった。


「この映像を見てください!俺は盗撮したクソ野郎です」

「なんだ君は!逮捕するぞ」

「構いません!しかしこの子を助けてからにしてください!これが証拠です!」


そして警察は連中を逮捕。そして、俺も逮捕された。

開発した小型カメラを警察が注目し、大量のお金をもらうかわりに権利を売った。そして俺はそのお金を手紙付きで親子に送った。


「私はミズキさんを盗撮した者です。盗撮をしてしまい、本当に申し訳ありませんでした。撮影した映像は全て処分しました。このお金は全てあなたたちのものです。是非使ってください。それとあのぬいぐるみ、今度はきちんと直させて下さい。

      最低な修理屋より」


ミズキは涙した。


「ありがとうございます。神様は私を見ていてくれたんだ。ずっと見守っていてくれたんだ。カメラの向こう側で…」

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【感動する話】近未来の盗撮に成功したおじさんが英雄になりました。 ミクの物語LAB @mikuno0874

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