第4話 おまけ①「兄弟」

硬骨漢

おまけ①「兄弟」



 おまけ①【兄弟】




























 「お」


 「・・・・・・」


 銀魔が森蘭の墓参りをしていると、そこへ黒夜叉がやってきた。


 銀魔と会うとは思っていなかったため、黒夜叉はとても気まずそうにしているが、折角花を持ってきたため、そこに置いた。


 「ありがとな。今回は、海浪のことでも随分と世話になったみてぇで」


 「別に。関わっちまったから、最後まで付き合っただけだ」


 「うおー、格好良い。もう一回言って」


 「あいつとお前が兄弟弟子だったとはな。通りで、どことなく似てるわけだ」


 「顔の話か?」


 「違う」


 黒夜叉が供え物として持ってきた大福を見つけると、銀魔は早速手を付ける。


 「俺も行くとこなくて困っててよ。んであの爺さんとこでしばらく面倒見てもらってたんだ。あいつとは何度も喧嘩したなぁ」


 懐かしそうに話す銀魔は、2つ目の大福に手を伸ばす。


 「よくわからないが、あの男とお前、どっちが強いんだ?」


 「さあ?まあ、俺は忍出身だから、それなりの戦闘術は兼ね揃えてるけど、あいつはとにかく身体能力が高くて、武術派だからな。それに馬鹿力だし」


 「そんな男が、あの『扇』とかいうガキにやられたのか」


 「・・・俺が思うに、あいつ本気は出してねぇと思うぞ。師匠もな」


 「・・・?どういう・・・」


 「ま、これは俺の勝手な推測な。師匠にしろ海浪にしろ、自分の力を振りかざすような真似はしねぇ。相手が自分よりも年下だと分かってりゃ尚更な。教育とは違う見せしめの力でガキらを動かしてるって感じたからこそ、ただ、止めてやりたかったんだと思う。例え、自分が死んでもな」


 「甘いな」


 「本当な。俺もそう思う」


 「だが、あいつは仇を取ると言っていた」


 「・・・あいつにとって、親同然だからな。憎しみも当然あっただろうし、復讐しようとも思ってたのかもしれねぇ。だが、別に殺そうとしてたわけじゃねえと思う。師匠に言われたことと、自分の中を占領してる感情の間で、あいつも分からなかったんだろうよ」


 「呪いは大丈夫なのか」


 「生きてりゃそのうち死ぬ。それだけの話だ。それに、あいつには手のかかるガキが2人もいるからな。死ねねぇと思えば、抗うだろうよ」


 「・・・そういうもんか」


 「そういうもんだ。お前さ、今放浪してるんだって?どっかの城とかで雇ってもらえばいいじゃねえか。てか、龍海んとこ行けば?」


 「嫌だ」


 「なんだよ。ちょっと前は、城に仕えていないと自分の役目が、みたいなことを言ってたじゃねえか。どういうことだ」


 「あれから少し考えた。1か所に留まってると、視えないものがある。だからしばらく1人で旅して、今まで見えてなかったものをしっかり見ようと思っただけだ」


 「お前も成長してんだな」


 「おい、大福全部喰ったな」


 「あ、気付かぬうちに。とんだ失態。まあいいよな!多分弟子だった俺が食ってくれて、喜んでるはずだ!!」


 勝手なことを言った銀魔は、よっこらせ、と言いながら立ち上がった。


 「じゃあな。今回の借りは必ず返す。それと大福御馳走さん」


 「・・・・・・」


 銀魔の背中が見えなくなると、黒夜叉も立ち上がり、墓に向かって今一度お辞儀をしてから歩いて行く。


 銀魔が言っていた『借り』の意味を考えながら。


 「何か貸してたか?」


 その頃銀魔。


 「あいつズレてるとこあるからなー。多分分かってねぇよなぁ。まあいいか!」








 翌日、墓参りに来た海浪は、そこに並べられている花を見つけてしばらく考えていた。


 誰が来たのかをなんとなく察した海浪は、小さく微笑んだ。


 「あんたの意志は、ちゃんと受け継いでいくよ。ゆっくり寝な、クソジジイ」


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