第8話 ミラージュ様護衛対決③
観客席から対戦場に向かうまでの道のりは、ここまで長かったでしょうか?
あの話を聞いてから、ずっと死神の鎌が私の首元にかかっている気配はしてたまらないのです。
永遠に続く迷路のようにも感じる道のりを、どうにかして歩き、舞台に足を入れました。
太陽が眩しく光り、その下には私のことを待つ死神の姿が見えました。
「?どうしたの?マニャ。調子悪い?」
「え、あ、うぅん。大丈夫だよ」
彼女の後ろにいる死神も、ずっと私を見つめてきています。
冷や汗が止まりません。
どうやったら勝てる?
どうやったらターゲットを
どう頑張っても最適解が見つからない。
でも、こんなところで負けるわけにはいかない。
私は、私の人生を楽しむために今ここにいるんだから。
せっかく生まれ変わったこの人生。ただじゃ死ねない、推し活をして生きていくんだ!推しを間近で守るために、私も強くならないといけないんだ。
だから…アルバ、手伝ってね。
((任せてちょうだい。あなたの背中は私が守ってあげる。『
相手が死神だろうがどんと来い!ルナドールより私の方が強いってこと、証明してやる!
「よし、じゃぁ決勝を始めるぞ!最高の勝負を見せてくれ!個人的にはルナが勝って欲しいぞ!よーいスタート!」
めっっっっちゃめちゃ私情挟みませんでした?!
そりゃ私だって推しに勝って欲しいんですけど!?
((マニャ、前!))
「へ?」
「よそ見は厳禁だよ、マニャ」
目の前には真っ赤な髪があった。
スカーレット家の髪色。
そこに少しだけ濃い赤色が混じっている。それがルナドールだという証拠だ。
『ニュイエテルネル』の真っ白な刀身が見えた。
そしてそれが首に当たる…寸前で身体強化魔法を使いギリギリ避けた
「あっぶ!」
((マニャ、今はしっかり集中してちょうだい。これに負けたら嫌でも赤き心臓の誓いを受けなきゃいけなくなるわよ))
「じゃぁなんとしてでも勝たないと。私らしいやり方でね!」
クイっとまた左人差し指を動かす。
オロスにやったのと同じだ。でも…
「っ…!」
なんつう危機回避能力!そんなスレっスレで見えていない『アラクネ』を避ける?!普通!ゲームで見せていた第6感は竜の里で身につけたものじゃないの?!で、そっからすぐに反撃がくるぅ!顔面直撃寸前の剣をなんとか避けてどうにかして距離をとってと…まずい、どう見ても守ることしかできてない…んー、ルールは魔法も『神器』もあり。相手が参ったと言ったら終了…あれ?ってことは…アルバ!
『あら、ようやく出番?』
そう言ってアルバのでっかい姿が出てくる。
ルールに『
「アルバ、合わせてね!」
『任せてちょうだい』
よし、じゃぁ私は…ベンタブラックらしく、暗殺者らしく!
「…気配が消えた…姿も見えない…リュンヌ、見える?」
『まーったく。『
「ならもう勝負ついてる可能性は?」
『どうだろ?僕はクエイクと違って『神器』のオーラが見えるわけじゃないから、ちょっとした空気の流れを感じるしかないんだけど…色んなところに糸があり過ぎるせいなんだろうね、全く彼女の位置が分かんないや』
「燃えない、見えない、切れるまで触れていることさえ分からない。その上マニャは気配も音も消すのが得意。そりゃぁボクが守る必要がないね。腹立つな…『ニュイエテルネル』で切れる?」
『無理だよ。逆に『神器』の耐久力がやられる。まったく、ルナの親友はとんでもない人物なんだね』
「うん。それはもう、尊敬するくらいに」
ルナドールは静かに目を閉じた。
透視化魔法で見える彼女の心臓の動き。そして優しい表情。多分降参するんでしょう。
でも、もしそれが罠だとしたら…
私は最後まで暗殺者としての働きをするまで。降参だというまでありとあらゆる手段を使いまくる!
人間には多くの急所が存在する。私はその中でも前世の記憶と今世の記憶を元に確実に死ぬであろう急所をいくつかピックアップしています。
『アラクネ』でそれら急所を一発でやれるように設置し、昨日練習していた複重魔法の陣で
切れ味増加、耐久性強化、強度強化、麻痺、毒、睡眠薬…もしもを考え多くの魔法を付与し、いつでも実行できる準備はできた。
「…降参します」
そんな、いつも通りの銀髪に戻ったルナドールの声が耳に入った。
その声を聞いた瞬間、安心感が身体中を駆け巡り、『アラクネ』を解除したとともに脱力感が襲ってきてその場に大の字で寝転んでしまいました。
そして、私は固く握った右手を空に掲げ、つぶやきました。
「勝った…勝てた…!」
オロスとやった時は感じなかった、すっごい達成感!
なんだろ、すっごく嬉しい…!
『私が出なくても良かったんじゃないかしら?』
「アルバ!」
大きなアルバが私を覗き込んできたので、そのもっふもふに頭を突っ込み、そのまま背中に乗る!
『あれだけ魔法も使って動き回ったのに元気ね。まだもう何戦か出来るんじゃない?』
「こう見えて疲れてるよ?今の1試合だけで100以上は魔法使ったんだから」
本当に疲れたんだから!
「…あーあ、負けちゃったか」
そう言ってルナドールはまだその手に剣を持ったまま、守護者のリュンヌと一緒に近づいてきた。
『あら、リュンヌ。見ないうちに小さくなって』
『五月蝿いなぁ、夜狼は。君がデカすぎるだけだよ。その大きさでも本来の姿じゃないくせに』
えぇ?これって本当の姿じゃないの?鳥居くらいの大きさのくせに?どうなってるの?
『や、久しぶりだね、ベンタブラックのお嬢さん。僕はリュンヌ。ルナの『
「あ、マニャーナ=ベンタブラックです。よろしくお願いします!あーえっと、ルナ…」
チラッとルナの顔を見てみる。
いつも通りの優しい顔だ。
なんとなく安心した。
以上に増え続ける魔力がルナドールを変えてしまったのかと思ってしまったからです。でも、どうやらいつも通りの彼女でした。やっぱり戦闘だったからかな?なら恐ろしいね、スカーレット家の血というのは…
「すごいね、マニャは。まさか1試合でそれだけの魔法を使えるだなんて…どれだけ魔力を持ってるの?」
「んー、分かんないや。でも、いっぱい使ったらその分疲れるよ。去年とか何回倒れたことやら」
「魔力は使いすぎたらダメだよ、魔力欠乏症になってしまう」
「それはルナもね」
「うん。はぁ、それにしても強すぎるよ、マニャは。手も足も出ない。そりゃぁボクが赤き心臓の誓いなんてしなくていいわけだ」
「いや、一回避けられた時本当にびっくりしたんだからね。だから気配も全部消したんだから…」
「でも、それでも勝てなかった。マニャ、ボク、頑張るよ。恩返しをするためにも、ミラージュ様を守るためにも」
そう言ってルナドールは観客席の方を見ました。
そこには大きく手を振っているミラージュ様と、一緒にこちらを見ているインビエルノとオロス。その下では誇らしげにしている父親たちがいました。
「…そうだね。私もみんなを守るために頑張るよ!」
「ボク的には頑張らないで欲しいんだけど」
「なんでっ!?」
お互い笑い合う2人、そこにありました。
転生した七瀬朝は、見た目5歳の暗殺者であり、中身はオタクでありアラサーですが、今日もこれからも推しを守り抜こうと決めました。
ミラージュ様護衛対決は、見事マニャーナが一位で終わったのでした。
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