また君は僕に恋をする

@kgs331

第1話 出会い

人通りのない裏路地。誰も片付けない手付かずのゴミ山の中に1人の女性が埋もれている。

遠目からでもわかるほど痣だらけだ。生きているのか死んでいるかも分からない。ぼくは考えるまでもなく体が動いた。

「お姉さん!聞こえますか!?大丈夫ですか!?」

肩や頬を軽く叩きながら訴えかけた。

「……うっ…」

かすかに声を出し、目を開けたかのように見えた。

顔が腫れ上がって目を開けているのかどうかもちゃんと分からないが少し瞼が動いたように見えた。

「大丈夫ですか!!」

続けざまに声をかけてみた。すると彼女は消えそうな声で話し始めた。

「痛い……ここはどこ…?…あなたは?」

どうやら何があったか覚えてないようだ。

「良かったぁ…」

彼女の声を聞いてぼくは少し嬉しくなってしまった。

そして冷静さを取り戻したぼくはすぐに119番へと電話をかけた。

「もしもし!救急です。急いで来てください!場所は◯◯区◯◯番地の裏路地です!」

電話を終えすぐ彼女の元にかけより話しかけた。

「ぼくは加藤と言います。ここは◯◯区の裏路地です。もうすぐ着くと思いますので少し待ってってください」

そう伝えたが彼女は疲れきっているのかすぐにはこの状況が理解出来ていないようだ。

少し間を空け彼女は言った。

「…ありがとうございます。」

細い声で彼女はぼくに伝えた。こんな状況でも僕は彼女の声を聞き入ってしまった。

「綺麗だ…」

なぜ今そんなことを呟いたのか分からないが彼女はその言葉を聞いて少し笑顔になった気がする。


そして数分もしないうちに救急車が来た。

彼女は担架に乗せられ救急車の中へと運ばれて行った。そして救急車はすぐに走り去ってしまった。ぼくはそれを呆然と見送った。


それがぼくたちの新しい出会いの始まりとなった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

また君は僕に恋をする @kgs331

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ