困っている人を助けたら、その娘が学園一の美少女ギャルで、なぜか懐かれた
佳奈星
第1話
「あっちぃ……」
手で陽射しを
ゆえに、一度見逃しそうになった。
「ん……? 何だあれ……?」
涼し気な河川の音に誘われてつい寄り道をすると、市街
少し気になった俺はそっと横に立ち、男性の目線の先を確認した。
そこには淡い桃色の真珠が付いたブレスレット。男性に似合わないアクセサリーだが、どうも彼の落とし物に見える。
「あのっ、少しいいですか?」
「は、ハイ」
お
どうやら困っている様子だしな。
「落とし物ですよね? 取りましょうか?」
「本当デスカ!? 頼みマス」
了承した俺は近場の端へと遠回りし、手すりの内側へと入る。そうして難なく落とし物を回収することに成功した。
「……オウ! ありがとうございマス!」
振り返った顔を見れば、すごいイケメン。陽光のように
それにしても
(外国人……かな? 日本語が上手だ)
俺は如何せん英語が苦手なもので、外国人だと気付いた時点で少し
しかし、男性はお礼を言いながらも立ち止まって、俺の顔をまじまじと見てくる。
「あのー、まだ何か?」
「恩返ししたいデス。ギブアンドテイクが文化だと聞きマシタ」
それは文化ではない。だけど、優しさだけは受け取っておこう。
「だ、大丈夫です。それよりも、お急ぎだったのでは?」
男性のソワソワした雰囲気から、何となく察する。
「そうでした。親切な人、改めてありがとう」
空気を読んでくれたのかな。まあ急いでそうだったし。俺は密かに意思疎通が成功したことを安堵しながら、男性と別れた。
「……妙なこともあるもんだな」
遠出してきて慣れない観光客の多い町。こういうこともあるだろう。
今日は、オタクとして外せない用事がここである。些細なことを気にしている暇はない。
真っ先に足を運んだのは町の裏路地にある
今日この日、この場所で、明日発売される新刊のライトノベルがフラゲ……前日から買う事ができるという情報を得ていた俺は、ドキドキ胸を踊らしながら店内へ入る。
オススメコーナーに
残り一冊。ギリギリ余っていたことに
「結構出回っている情報だったのかな。早く来て正解だった――」
「あった!」
目的のラノベに伸ばした俺の手。その上に重なる他人の手があった。
同時に、目が合う。
「あのあの、あたしが先だったよ? そうだよね?」
横目に確認した人物は、同い年くらいの金髪
「いやいや。俺の手が先に本を掴んでいるし……」
「あたしが触った後にその手が掴んだだけだよ」
彼女は作り笑いを見せて誤魔化した。あくまで譲らない姿勢。それに対し、俺も無言の圧力で返す。
「あ、あたしの方が先だった……よ?」
しょんぼりと悲観的な声色。わかりやすい演技に苦笑してしまう。
そうまでして、期待の新刊『はちみつレモンちゃんはみかんちゃんに負けたくない!』……通称ハレミカを今すぐにでも入手したい気持ちだけは、同情を覚えた。
が、ちょうどその時――既視感の正体に気づいた。
「あれ、というか君、小笛さんじゃないか?
いつも降ろしている髪がツインテールだったから全然気付かなかった。
それに口調も違うけど、彼女はクラスメイトのギャル……あの小笛さんに違いない。
その瞬間、彼女は「あっ」と間抜けな表情を顔に浮かべた。
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