14 ディアノベルク家の母子事情④

 決してはかったわけではないが、以来母上は僕に激甘になった。


 僕の望むものは何でもくれようとするし、僕が望みそうなものを先読みしてまでアレコレ理由を付けては贈ってくれる。 僕の意思をいつでも尊重してくれる。 僕に悪意をもって接触する輩を悪鬼羅刹の如く苛烈に処断しようとするのは困り事だったが、何度か危ない場面で守ってもらっている手前強くはいさめられない。

 甘やかしすぎだと苦言しようにも自分がしたことの意趣返しにあたるので、どうにも分が悪い。


 ただ、厚意を素直に受け取る分には僕にメリットしかないし、熟れ盛りのスレンダーなクール系美人ママ(実質的には年下)が甘やかしてくれるのは甘美バブみの極みである。

 前世の自分の尊厳を守るためにさすがにこの歳でオギャってはいないが、この人は頼めばいつまでもいくらでも甘えさせてくれるだろう。



 逆に、最近は姉さま方が外している隙を見ては母上から膝枕をせがんでくることもある。

 常に激務に身を置いている母上をねぎらえるなら膝くらいいくらでも貸すところだが、この世界ではいわゆるムスコンが強く糾弾されるきらいがあるため、屋敷の中であっても母上の評判に響きかねない接触はなるだけ控えている。

 今これくらいの抱擁は息子を想う母と、のワンシーンとして不自然ではないレベルだろう。

 


 なお、この間僕はフル勃起であるがそれはさて置くとする。



 あまり他言できる話ではないが実は母上もなかなかに甘えたなムスコンであり、激務の後では一緒に寝ようだとか一緒にお風呂に入ろうだとか言ってくることもあるほどだ。

 恐らく昔やり損ねた母子のコミュニケーションを果敢に取り返そうとしている部分もあるのだろう。 察してしまうと断りづらいが、心して挑まなければ息子の息子が張り切ってしまいギクシャクするのも怖いので、毎度気を張るイベントである。



 まぁ何だ。 つまり親子関係が良好すぎるのだ。



 ちなみに僕は領地運営に関わっているし今後も関わり続けるが、モチベがもっぱら「領民のため」なので領主の座には微塵も興味がない。 それは母上にも姉さま方にも伝えていて、彼女らも僕を後継ぎに据える気はなく、母上の寵愛の度合いに反して継承問題は極めて円満と言える。


 姉さま方も「この息子にああも愛されてそうならないわけがない」と、そんな関係性を不思議にも不満にも思ってはおらず、何なら家族孝行に余念がないので姉さま方からも熱すぎる寵愛を受けている。 よって家庭環境はすこぶる円満である。

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