25 【実】の神が言うには
しかし何故男は産まれにくいのか。
例えば、この世界では遺伝的に女が産まれやすい系統の人種が勢力の大半を占めているとか。
この世界は医療の発展が前世に比べて遅れているらしいが、そういうウイルスがあるとか?
無論、そんな人類の命題を先人たちが調べようとしてないわけがなく、長い男不足の歴史において当代までついぞその謎が解き明かされることはなかったようだ。
五歳になった夜、ひょんなことから謎は解けた。
夜中、何かに導かれるようにして入った裏山の小さな祠で僕はそれと出会った。
「ようやっと五つか」
五年前、竜と対峙した時と同じ感覚。
「どうじゃこの世界は、存分にモテたか?」
それは口振りから竜が言った「向こうの神」とやららしかった。これに呼ばれて僕はここに来たのだと直感した。
見た目は普通の人間の女性に近い。 鮮やかな橙色の髪と妖精のような若葉色の装束、頭には薄く発光する鹿の角のようなものが生えている。
「モテますが、思っていた感じとは違います」
「んはは。 貴様が元いた世界と比べればさぞおかしかろうな」
せっかく神様?に会えたので、訊きたいことは訊いておくことにした。 前回は色々と言葉足らずだったから。
「どうしてこの世界は男が少ないんですか?」
「よう好かんからあんまし生まれんようにした」
超絶過激派のフェミニストか?
身も蓋もないことを理解した。
何らかの超常的な力によって摂理に干渉し、男が産まれる確率を抑えられている、と。 目の前の彼女はそれができるような存在である、と。
つまるところ人智を超えていたので、僕はこの件に関してもはや深く考えるのはやめようと思った。
「野蛮で煩くてかなわん、と思ってそうしてはみたが…………そんな世界が長く続くと結局は女どもも野蛮で煩くなってしもうた。 笑える話じゃな」
「あぁ……」
正直心当たりはある。
野蛮で煩い……なるほど、当時はまだ幼く受けるセクハラも生易しい範疇であった僕をして、言葉を選ばずに言えばそうなるかと納得した。
「失敗したかとも思ったが、この倒錯的で退廃的な世界も観る分には面白いからの。 男に飢えて野蛮で煩くなった以外はまだ理性的な方じゃから一旦はそのままにしておる」
やはり、どうこうする気があればできるんだな。
しかし世界規模のリアル箱庭を娯楽でやっているのか?
薄ら寒気がした。
考えれば合点は行く。出生率を陰ながら操れるような力を持つ高位存在から見れば人類など檻の中の猿どころか虫もいいところだろう。
すると、わざわざ虫に寄り添って親切する必要がどこにあるのか。ないのだろうな、彼女らにとっては。きっと羽目を外せば人類丸ごと容赦なく滅ぼすだろう。
ところで現状がまだ理性的な方って、もっとヤバい世界線があるということだろうか?それはそれで気になるな。
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