初めての仕事
「記念すべき初めてのお客様は、この国では一番有名と言っても過言ではないくらい有名なお嬢様です!」
妖精は楽しそうに言った。
「お、お嬢様……!?」
ちょっと待て。初めての客にしてはハードすぎるんじゃないか?しかもよりによってフードデリバリーサービスだぞ。元の世界でいうところのウー●ーイー●みたいなサービスを、この世界ではお嬢様も利用するのか。異世界ってよくわかんねえ……。
……そういえば、妖精が、フードデリバリーは大切な使命だって最初に言ってたな……。もしかすると、この世界では、フードデリバリーの配達員は、なんかよくわからないが普通の職業と一味違う特別な職業なのかもしれない。
「ふむ…………。」
「どうかしましたか?」
真顔で考え込む俺の顔を覗き込みながら、妖精が不思議そうに訊いてきた。
「……いや、何でもない。ちなみにそのお嬢様は何を注文したんだ?」
「えっと~、オムライスですね」
オムライス。それは、俺が一番得意な料理だった。前の世界では、バナナを大量に食べていたが、実は料理にも興味があるのだ。毎日3食全て自分で作り、自分で言うのもアレだが、料理は結構得意なほうだと思っている。
しかし、フードデリバリーとなると、料理担当の人が作った料理をただ運ぶだけという、料理好きの俺からすると少し物足りない仕事である。
「配達する料理はどこに置いてあるんだ?」
俺が訊くと、妖精はなぜか、頭の上にハテナマークが浮かんでいるような顔をした。予想外の反応に俺も困惑していると、
「何言ってるんですか。お客様に届ける料理は全て、あなたが作るんですよ?」
「そうなのか!?」これまた予想外の返しに俺は思わず目を見開いた。
「……も、もしかして、料理できないとかじゃないですよね…。」
俺の反応を見て、妖精が不安そうに訊いてきたが、俺は大きくかぶりを振り、答えた。
「俺、実は料理作るのが得意なんだ!中でもオムライスは一番の得意料理だ!」
「…………おお!頼もしいです!やっぱりあなたにフードデリバリーという重要な役割をお願いして正解でした!」
俺の、あまりにも自信に満ち溢れすぎた様子に、最初は驚いていたが、妖精はぱあっと表情を明るくし、嬉しそうに答えた。
「任せてくれ!お嬢様に最高のオムライスを届けてみせる!」
こうして、俺の、異世界フードデリバリーという使命を果たすべく、奮闘する日々が始まった。
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