通り過ぎてきた、あの日

月夜の黒猫

第1話

乳がん体験。

ゆっくりと、9年前を思い出し、綴っていこうと思う。


毎年受けていた健康診断。

痛いから憂鬱なマンモグラフィー。

いつもと同じ検診場所、同じ先生。


けれど、この年だけは、いつもの先生とは違う人だった。


今までの先生とは比べ物にならないくらい、渾身の強い力で押しながら触診をする先生だった。

触診中は、内心「痛〜い。いつもはこんなに強くないよ〜。いつもの先生がよかったな〜。早く終わらないかな〜」と思っていた。


その触診の手が、同じ場所を何度も往復し、繰り返し探る。

「何故だろう?」痛みに耐えながら、不安が湧き上がった。


いつも、風呂で体を洗うときは、セルフチェックをして問題なんてなかったはずなのに、と思っていた。


しかし、先生は言った。

「この辺に、しこりがありますね。強く押さないとわからない場所なのですが。でも、大丈夫だと思いますよ。しこりが、がんとは限りませんからね」


慌てて、さっきの先生のように渾身の強い力で押してみる。

確かに、硬いものが、あった。

今までの力では、全く気づかなかった深いところだった。

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