空と煙とついでに君と
長井夜仁
晴れのち曇り
俺にとってベランダは真に自分の空間だった
スマホを置き、人との関わりを断ち、空に煙を吐き出す。
そこに対人関係の煩わしさや、学生の義務は存在しない。社会から乖離した、一時の夢の様な自分のみの空間だった。
夢から覚めるのは早かった。
ひと月前の話だ
長く空き部屋だった隣が埋まった。
そこそこ古びてはいるが、安い部屋。
嫌煙家である可能性を危惧しながらも、自分の空間を守る為に火をつける。
スマホを置き、人との関わりを断「タバコ、吸ってるんですか?」てなかった、儚い夢であった。
「あの〜?」
現実から逃れる為の郷愁を続けていると返事の催促が飛んでくる。
流石に無視は出来ない、「吸ってるよ」と簡単に返す。
すると、仕切り板越しに「匂いが少しきつくて、、、できればやめてもらえませんか?」と彼女が言った。
やはり嫌煙家かと諦め、「悪いがこれが支えでな、管理人にも許可をもらってるんで許してくれないか?」
自分の空間を守る為の言葉を吐き出す
「そうですか、、、」と彼女が悩むような声を出した。
「貴女がいる時には控えるよ」とだけ言い、自分の空間が守れたことに納得して火を消し、灰の積もった元植木鉢に吸殻を投げ入れ部屋の中へと入ろうとした時、
「あ、私の名前は清水晴風といいます、先日隣に引っ越してきました。貴方のお名前は?」と力の篭った声が聞こえた。
「秋斗」 と、ぶっきらぼうに返し窓を閉め、自分の空間に「人との関わり」が追加されたことに辟易としながらベッドに沈んだ。
ここから彼女との奇妙な関係が始まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます