人造人間が治める世界

久徒をん

突然の新世界

 某国の山奥の研究所で生まれた人造人間は爆発的に増殖と成長を遂げて人間社会に浸透していった。

 スキンヘッドで青白い肌、青い瞳の痩せた体のそれは《ブルーパ》と呼ばれた。ブルーパは性別がなく繁殖期になると口からカエルの卵のような形の卵を数十個吐き出して子供を産んだ。

 生まれた子供は七日間で成体になり他のブルーパの意識と共有して人間社会の知識を高速で習得した。

 人類より高い知能で肌が固く腕力があるブルーパだったが短命で二十年程で死亡した。それでも産み出す子供の数が多く各国で定期的に子供を産んで増殖した。

 やがてブルーパは各国の政府を強引に乗っ取り抵抗する者達を殺して掌握した。

 そこで人類が存亡をかけてブルーパと全面戦争に突入……という事態にならなかった。

 政府を乗っ取ったブルーパは国民との争いを好まず余計な圧力や介入を避けた。ブルーパ同士はテレパシーで話し合いお互いに有利になる方向で物事を進めた。

 そのおかげで国同士の対立が減り大きな紛争が起きなくなった。

 又、ブルーパの高知能で優秀な手腕に迎合する者が多く、反発する者もブルーパに敵わないと諦めたのでブルーパと人類の間での争いは小競り合い程度だった。

 更にブルーパは自らの下位互換的な人造人間ビトルンを作り出した。

 それは日焼けしたような茶色の肌で腕が四本あり頭に角があってカブトムシの様な姿をしていた。

 肌はブルーパより更に固くブルーパよりも沢山の子供を産んで早く成長した。

 ビトルンは官僚や警察等、公務員的な仕事に就いて政府機関と一部の公共機関はブルーパとビトルンが治め人類は彼らに従う階層社会となった。

 見るからに人ではない化け物が要職に就いても人々は驚かなかった。

 誰もが政治家や役人へ不信感を抱き明るい未来を感じない社会にうんざりしていたからだ。

 職に就けずに自殺する者、食べるのがやっとの安い賃金で働く者、いじめられながら心身をボロボロにして学校へ行く子供……

 一部の幸福自慢な金持ちより不幸を感じる大多数の人類にとって人造人間による統治は希望こそ感じなかったものの今よりマシだと思った。

 殺されるのを恐れた政治家や役人は高い退職金をもらって貧乏な振りをして地方へ移り住んだ。流石にそれを追って殺す人造人間はいなかった。

 人造人間の目的は社会の頂点に立って清く正しい世界を作る事ではないのだから……

 僅か十五年程で地球に訪れた新世界──これからその世界で生きる人々を見ていこう。

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