能力者の集い。
ボウガ
第1話
その施設の新人職員の男がいくつかの厳重な契約を終えた翌日、そのパーティに参加した。超能力者たちの集まるパーティである。パーティという名目ではあるが、定例会のようなものもある。
地球環境の悪化により、突如としてふえた超能力者たち、だがその能力が発覚されると、拉致、誘拐、実験、人身売買などの恐れがあるため、国へ協力すると身の安全の確保、国からの支援保護がうけられるという国の施策があり。この制度の参加者がこのパーティに参加している。
みな貴族がつけるような厳かで豪華なマスクをつけ、名札をつけている。そのうちの一人に、新人職員の彼が声をかけた。
「こんにちは、レムさんですね?私はこの施設の職員で、定例会前の本人チェックをしているのですが、私は新人で情報が少ない、コミュニケーションをとる練習をしろと、ほかの職員からいわれておりまして、後で答え合わせをして……いわば宿題です、もしよければ、できうる限りの情報を提供させていただけますか?」
「ええ、いいでしょう」
「あなたの能力というのは?」
「名札にある通りよ、幸福の2軍なの、幸福2軍それが名前で、下の“半端な愛”が能力」
「なるほど……では、あなたの能力の細かいところは……」
「ふっ……まったく、あたまでっかちね、まあ新人という事に免じて、教えてあげましょう」
彼女はつらつらと語りだした。
「私はねえ、誰からもそこそこ愛され、そこそこに嫌われる、平凡だと思うでしょ?これが揺るがないのよ、何したって揺るがない、私が子供だましをしないから、最初から何もかわらないからかしらね、私はある時からこれが優れた能力だと気づいた」
「確かにそれは、重要なことかもしれません、人との関係を維持するのにも、確固とした自分があるのはいいことです」
「そうでしょ?ええ、そうですとも、だから私は満足しているのよ」
そういって彼女は、自分の顎にてをあててさわさわとなでる。ワインを一気に飲み干した。
「そう……これでよかったのよ、私は昔から、人から本気で愛されたり嫌われたりすることがなかったけれど、それは自分が自分にさほど興味がないからだと悟ったわ、そんな私が無茶をするとね、必ず悪い結果になる、自分を好きすぎると、自己中心的になり、人のすばらしさに気づかなくなる、自分を嫌いすぎると、偏屈や自暴自棄になる、人より満たされないとむかむかもしてくる」
「ふむ、そんなものですか、時に嫌われたり好かれたりするのも悪くないと思いますが」
「自分に興味がないのだもの、人を喜ばせるのも興味を抱かれるのも、自分にうそをついて背伸びをすることになる、無茶をしないでいたいし、無茶して失敗をたくさんしたの、トラブルの元になると気づいた、だか私は人から半端に愛されることにした、たくさん経験した今では私は私の事が好き、私は誰かから誰よりも愛されることがない第二軍っていう感じがするけれど、これくらいのほうが結婚だとか友人関係も長続きしそうよ、私は“友人”の言葉を聞いてそれが一番幸福だとさとったの、“これこそあなたの超能力”だってね」
「ご友人は?」
「まあ、失ってはじめて気づくものもあるわね、ともかく“いまここに私といるわ”」
そう言って彼女は男にてをふりながら、その場を離れた。どうみても若い子だったし、達観した女性だったが失礼な事をいって気分を悪くしたか。と男は頭をかいたが、しかし、男は意外だった。あんなごく普通の能力さえも超能力認定されるのか、と。だが確かに彼女の達観はあの若さにしては超能力かもしれないとも思った。
ぼーっとしていると後ろから別の男に声をかけられた。名札には“能力透視能力”とある。
「なあ、あんた」
「はい?」
「彼女の言葉を全部信じるなよ、あの子は未来視できるんだよ、チートだよなあ、自分の人生の選択の先がどうなっているかみて、失敗をさけ、学んでいるんだ。その未来視の先にいる自分のことを、友人と呼んでいるんだよ」
能力者の集い。 ボウガ @yumieimaru
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