る
「それで? 悪魔は実在するの?」
身を乗り出して聞いてくる貴船さんに、私は困り顔でくまくんを見ました。くまくんの存在をばらしてしまっていいのでしょうか。
すると、くまくんは盛大な溜め息を吐きます。
「悪魔召喚に成功したって言った時点で悪魔の存在実証されてるだろうが。よく考えればわかるだろ」
確かに。生意気だけど正論です。
「……悪魔はいます」
「どんな姿?」
「ええと、見た目は小学生くらいで、半ズボンを履いている典型的なショータくんです。ついでに角と蝙蝠羽根がオプションでついています」
「ほうほう」
「誰が容姿の詳細まで伝えていいって言ったよ?」
あれ? 駄目だったんですか?
問いかけると、ショータくん悪魔はそっぽを向いて若干鼻頭を赤らめながら言いました。
「……別に、いいけどよ」
「性格はツンデレ生意気ショタです」
「何それ最の高」
「誰が性格の詳細まで伝えていいって言ったよ?」
くまくんのツッコミは華麗にスルーで!
貴船さん曰く、妄想系女子には堪らない設定だそうです。さっきまで"想像"ってオブラートに包んでいたのに躊躇いなくひっぺがしましたね。
そんな妄想系女子、もとい貴船さんは、興奮気味に鼻息を荒くして言います。
「私も会ってみたい!!」
どうやらくまくんの容姿性格共に貴船さんのストライクゾーンだったようです。よかったですね、くまくん。
「なんか嬉しくねぇんだけど」
「まあまあ、そう言わずに」
人に好かれるのはいいことです。
「忘れてるようだが、俺は悪魔だからな? 悪魔って本当は人間をたぶらかしたり、陥れたりする悪い生き物なんだからな?」
くまくんはそういう悪魔的な能力使えないんでしょうに。
「ぐぬぅ」
太ももの辺りで両の拳を握りしめ、悔しそうに上目遣いで見てくる姿は、その手の趣味嗜好の方がいたなら卒倒間違いなしでしょう。私はその手の趣味はありませんよ? ありませんからね? 大事なことなので、二回言っておきます。
「さっき顕現とか言ってたよね? それ使えない?」
「くまくん曰く使えそうですが」
「そんなこと一言も言ってないからな?」
「態度に出ています」
「ぐぬぅ」
再び悔しそうなくまくんの再来。私は使役者? みたいなものらしいですから、実は私の意のままに操れちゃったりするんでしょうか。
「教えてくれませんか?」
「……主、つまりお前が霊力のコントロールをすれば可能だ」
そういえば、くまくんは私の霊力によって存在しているんですっけ。つまり私の霊力如何でくまくんの姿はどうとでもなると。
しかし、霊力のコントロールって……? いまいち霊力のこともわかっていないんですが。
「まあ、一般人が操れないのは仕方ない。霊力とは元々仏教やら神道やらに通じる力だ。専門家……例えば、寺の僧侶や神社の宮司なんかなら、扱いに長ける」
ふむふむ、確かに、私の中学までの同級生でそんな感じの人がいました。
「ということは、修行が必要?」
「いや、修行っていうのは、霊力の扱いをよりきめ細やかにコントロールしたい場合に行うものだ。俺を顕現させたいとかそういう程度なら、大体イメージすればなんとかなる」
「イメージですか」
「イメージしろ、それがお前の力となる」
「突拍子もなくカードゲームに持っていかないでください」
アニオタな家族の影響で、くまくんの知識に大いなる偏りが生まれている気がします。
とはいえ、私ほどの大量の霊力を持っていれば、イメージというぼんやりとしたものでも具現化可能なことは確かだそうです。
それでは、集中してみましょう。
霊力がどんなものかわかりませんが、気力に準ずるものであると聞いた気がします。なんとなくではありますが気力……ありったけの集中力をくまくんに注ぎ、私に見えているショータくん悪魔の姿を意識してみます。
「おおっ」
やがて、貴船さんから感嘆の声が上がりました。
「本当にショータくん悪魔だぁ、可愛い。目がくりっとしてるのがまた」
「ご希望に添えて何より」
見えるなり、貴船さんに撫で回されることとなったくまくんが、「悪魔の威厳……」と呟いた気がしますが、明るくスルーで!
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