第93話 これぞ生産職

「たまにポーション取りに入るけど、すごい数作ったよね。地下にもいっぱいあるし。」

「瓶が足りなくなりそうなんだよね。一応大きい瓶に入れてあるんだけど、上級とかはあんまり減らないし。」


「使い終わったポーション瓶使いまわしても増えるほうが早いもんね。」

「そんな増殖してるみたいな…」

確かに作りすぎてる自覚はある。あるけどどうしようもない。


「もう少し落ち着いたらいろいろ考えようね。」

「うん。」

頭をポンポンされて苦笑いで終わり。味のない普通のポーションだけでも売れるけど、味付きのポーションなんてどうやっても騒動になるし薬草売るのですら依頼に見せかけて売るしかない。早く落ち着いてほしいなぁ。


新しく採集した薬草をそれぞれキレイにしたら束にして棚にしまう。古いのを取り出したら茹でてアク抜きをして、下準備はおわり。


「欲しい味ある?」

「えっリクエストしていいの?なら上級のアポ・ペッシュ味のやつがいいな!あの味で中級も作れるならそれも欲しい!」


「作れるけどベースが違うから少し味は変わっちゃうんだけど。それでもいい?」

「うん、いいよ。ありがとう!」


アルダさんのリクエストにお答えして、まずは中級ポーション。アポとペッシュのフルーツミックス味にしたら、半分はポーション瓶に入れて半分は大きい瓶に入れておく。上級も同じように作ったら半分ずつに分けて、ポーション瓶に入れたやつはアルダさんにプレゼント。


「ありがとう!果物単体でも美味しいんだけど僕はこれが好きだよ。」

「弓使いさんって中級と上級をよく使うの?」


「皆と変わらないと思うよ?僕はMPポーションを使わないからこっちを多く持ってるってだけ。あとは他の人より飲むほうが多いって感じかな。」

「飲むほうが多い?」


「落ち着いた時に飲むこともあるけど、戦闘中の前衛組は頭からぶっかける方が多いんだよ。動き止めたら危ないからね。」

「じゃあ味のないやつも作っといた方が良いんだね。」


「美味しいのをかけるのはもったいないし、あると嬉しい。」

「そっちも作っとく!」


そうだよね、ポーションは飲むだけじゃなくて傷口にかけても効果がある。MPは飲まなきゃダメだけどね。


追加で作る分はどれも味なし。これは小屋の中の棚でいいかな。


「おやつ食べよう。」

「うん、お茶入れるね」


アルダさんがおやつを準備してくれてる間にお茶をいれる。今日追加で作るし、チャマイルティーにしよう。ついでにレモンバームを浮かべてちょっと風味付け。


「リンちゃんのお茶は変わった香りだよね。」

「好き嫌い別れるよね。これで大丈夫?」

「うん、僕は好き。ありがとう」


私も最初はクセが強くて飲めなかったけど、慣れると風味が強くておいしいんだよね。


「この後お茶作りにキッチンに行くんだけど、アルダさんどうする?」

「僕も行くよ。今日はとことんリンちゃんと一緒にいようと決めたから!」


そっか、今日はアルダさんと一緒に寝る日だ。明日はフランクさんで一周するんだけど。またガイトさんに戻るのかな?夜聞けばいいか。


クッキーを食べて少しだけポーションを作ったら、後片付けをしてキッチンに向かう。小屋にいた時はそんなに気にならなかったけど、目隠ししてる中で結構ドンドンキンキンやってるみたい。みんな大丈夫かな?


「ちょっと覗いてみよう。めちゃめちゃ気になる、あの中」


アルダさんがわくわくしてるので、便乗して覗きに行く。結界からちょこっとだけ顔を出すと、ディアに向かってガイトさん・レイさん・ナリアルさんが攻撃をしていた。カルダさんは周りに被害が出ないようにちょこちょこと魔法を使ってる。ディアは走って避けてジャンプしてクルっと回ってたまに氷をぶつけてとんでもない動きをしている。


「ディアが敵じゃなくてよかった。」

「本当に。ちなみにだけど、スノーケーニヒが見つかったら町を捨てて逃げるように言われることもあるんだよ。冒険者の数が少ない地域とか、騎士団の派遣が間に合わない辺境なんかはだいたい逃げる。」


「そんなに強いんだ。あんなにかわいいのに。」

「まず誰も近づかないような魔獣です。リンちゃんは抱き着いたりなでたりしてるけど、僕たちからしたらとんでもなく不思議な光景だよ。」


通常状態のディアは大きいからもふもふ感強めで触りたくなるんだよね。外ではちょっと自制しよう。ディアから楽しい感情が流れてくるから安心して、家に戻ってお茶を作ります。


「フランクさん、キッチン使ってもいい?」

「いいよー。なに作るの?」


「いっぱい残ってるチャマイルとハーブでお茶作り。レモンバームの葉っぱ入れたらおいしかったよね!」

「うん、さっぱりしてて飲みやすかったね。」


「ってことで色んな風味のお茶を作ってみようかと。」

「どうぞどうぞ。」


組み合わせを変えて飲んでみて、気に入った3種類をいっぱい作った。ミントとレモンバームのハーブ系は茶葉のまま、ペッシュとアポのフルーツ系は水筒にいれて保管。今度ディアにドライフルーツいっぱい作ってもらおう。


みんなが帰ってきてごはんを食べたんだけど、どうしてもディアを洗いたい。カルダさんがクリーンかけてくれたらしいんだけど、なんか薄汚れてる気がするので一緒にお風呂に入りました。ふわふわが増して最高の触り心地になったよ。


寝るローテーションはフランクさんが終わったらまたガイトさんからスタートするらしい。まだまだ何が起こるかわかんないもんね。


アルダさんのお部屋はキレイに片付いててシンプル。弓使いさん専用の手袋や防具?なんかもいっぱいあって見てて楽しい。魔法を使いながら弓を使うから、武器もそれなりに良いのを使ってるんだって。みんな強いしすごいね。


洗われて不貞腐れぎみのディアさんは入口近くでとんでもない大きさに伸びてる。


〈今日は楽しかった?〉

〈楽しめたよ、ありがとう。〉


楽しかったならよかった。また外で思いっきり走りたいね。


アルダさんの腕のなかでおやすみなさい。





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