ラノベ研究部の野望
うめ生徒
第1章 天才と凡才以下
第1話 俺が小説家になるまで
中学一年の頃だ。
その日は、どしゃ降りの雨だった。
家の中。俺――
その時間に放送されていたのは、とあるラノベが原作の、現代バトルアニメだった。
俺は、思わず口に出していた。
「面白い……!」
妹は、内容が肌に合わなかったからか、途中からゲームに手を出し始めた。
そんな妹とは
その日から俺は、アニメが大好きになった。
オタク人生の、始まりだった。
アニメを数十本も観れば、漫画ラノベにも手を出し始めるようになっていた。
俺は、漫画にハマり、そしてラノベには、それ以上にハマった。
オタクになるきっかけとなったアニメが、ラノベ原作という事もあり、好みのジャンルが、ラノベに集中していたのだ。
いつしか、一週間に五冊のペースでラノベを読むようになっていた。
お金が足りず、
ラノベを百冊読破した頃には、ラノベ作家に
文字は、誰にでも打てる。ラノベを書いてみたいと思うのは、自然な流れだった。
その時にはもう、中学二年の冬だった。
「……思ったものと、全然違う」
小説を執筆するのは、想像以上に大変だった。
キャラは思い通りに動いてくれないし、目指した着地点にはたどり着かないし、精神がおかしくなりそうだし……その他
その時初めて、売れない作家たちにも、尊敬の
小説を完成させるだけでも、
この苦しい執筆を、小説一冊分書き上げる体力を考えると……。
作家って、
そうして俺は一度、
しかし、一ヶ月もしないうちに、またこの筆を手に取っていた。
面白いラノベをたくさん読んで、本格的に夢を
――ラノベ作家になりたい。
俺は、自分で言うのもなんだが、努力は人よりできる方だった。
使える時間は、ほぼ全部使った。
小説制作に、時間を
ネット投稿から、始まった。
小説を他人に読んでもらった。
そして、
新人作家『いたばしこう』のデビュー作。『
――二冊で完結した。
完全な打ち切りだった。
理由は、シンプルだった。
『どこかで見た事のある展開。どこかで聞いた事のある世界観。テンプレに
『なんか、先の展開が読めてしまう。読んでてワクワクしない。星二つ』
『何を取っても普通であり、それ以上では決して無い。次回作に期待……したい』
中身が普通過ぎて、売上が伸びなかったからだ。
若くして作家になったものの、それは努力の
クリエイターには非常に重要である
面白い作品を分析し、自作に落とし込む俺のスタイルは、色々な作品の寄せ集めと呼ばれても、仕方のないものだった。
夢のラノベ作家デビュー。一作目は、打ち切りで終わりを迎えた。
だが俺は、まだ
新しい夢が出来たからである。
それは、自作のラノベをアニメ化にまで持っていく事だ。
それは、ほとんどのラノベ作家が抱いてるであろう目標。
俺は、その目標を達成する為、次作に向けてラノベ制作に
もっとも、企画の時点で全く通らないのが現状だ。
まずは、そこからだった。
『いたばしこう』の二作目。俺は、その一歩目を中々踏み出せないでいた。
◇
高校一年の冬。
俺は家で、マイパソコンと向き合っていた。
某イラスト投稿サイトを
オタクは、イラストレーターが大好きな生き物だ。
イラスト無しには、二次元文化は出来上がらない。そして、ラノベにも、もちろんイラストがすごく大事なのである。常識だから、もはや説明不要も良いところだろう。
俺も、売れていないとはいえ、ラノベ作家はラノベ作家。この絵師さん良いなーとか、ぜひ俺の小説の
そのように、絵描きの人ってみんなすごいよなーと思いながらイラストに
そのイラストレーターの絵と出会った。
その絵を見た瞬間、四秒間ほど、頭が
題名は、『バグ
作者の名前は、『
都会のスクランブル交差点が舞台のイラスト。空から落ちてくる、美少女が
その少女の様子は、変だ。
顔の左半分と右足にノイズを走らせている。
少女を中心に、都会の電子システムが、異常なバグを起こしていた。
全ての信号が青になったり、高層ビルから暴走
画力のレベルが高い事ながら、
作者のこだわりも、見れば見る程、伝わってくる。見てて
俺と違う。
独創性にあふれた、天才のそれだった。
俺はその日、
企画書は、まだ突き返されている
◇
とある本屋に、誰もが目を引く美少女が、ラノベの並ぶカラフルな本棚を見渡していた。
綺麗な海の色を連想させる、水色のセミロングヘア。顔つきの整った、可愛らしい
高校の制服に身を包み、その容姿は
彼女は、そっと
「いたばしこう先生の新作、まだなのかな……」
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