姉の物を何でも欲しがる妹に記憶と経験を奪わせた結果

 子爵令嬢のアネモネは、自分の物を何でも欲しがる妹のイモザと、妹を甘やかす両親にうんざりしていた。

 それも妹が他家に嫁いで家を出るまでのことだと、家族からの愛情を諦め、子爵家を継ぐための勉強や実務、社交を通した人脈作り等に励んでいたアネモネ。

 しかしある日、イモザが姉の継ぐはずの爵位を欲しがり始めたことで、我慢の限界に達する。


 家を継ぐには知識と経験が必要。

 アネモネはそう言って、イモザを連れて知人の呪術師を訪れ、【記憶移植】の施術を受けることに。

 アネモネの脳から妹が生まれたのち現在に至るまでの全ての記憶を抽出し、イモザの脳へと流し込む。

 後に残ったのは、記憶の殆どを失くして幼児退行した姉と、2人分の記憶を持った妹。


 記憶を失ったアネモネは事前の契約通り、施術の代金として奴隷商に売り飛ばされた。

 職種を含む労働条件と各種権利が法と呪術の下に保障された借金奴隷の扱いだったが、幼児並の知識と情緒しか持たない成人女性では労働者としての需要もない。

 仕方なく奴隷商が教育を施しながら雇用することになる。

 初めの内は厄介な負債と扱われていたアネモネだが、持ち前の素直さと地頭の良さから急速に成長し、いつしか商会内で替えの利かない人材としての立場を得る。


 一方、姉の記憶を得たイモザは、姉の人生を追体験したことで、自身と両親を深く憎悪した。

 生来の短絡的かつ自己中心的な性格と、姉の知識や能力を兼ね備えた彼女は、感情に任せて両親を謀殺。

 かつての自身の行動で姉を裏切り、傷付けた使用人や友人らも、信用に値しないと縁を切り、利害と契約のみに立脚した、冷徹かつ堅実な領地運営を進めてゆく。

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