個体番号からニックネームを付け合う遺伝子操作済クローン人間ですが、No.877564の私は「バナナ殺し」と呼ばれています

 人類が宇宙に進出して幾星霜。

 首都星から40光年先に発見された新惑星開発に向かった開拓船団の内の1隻、強化人間培養運搬船ニーモニックで新たに生まれた惑星探査開発用有機ユニット、ニア81式O型 No.877564。

 当該惑星への到着後、航行能力をパージしたニーモニックは惑星地表上にて工場及び有機ユニット用の宿舎として稼働しており、彼女もまたその一画で生活し、探査開発の任務に従事することになる。


 有機ユニットらの識別子は個体番号のみであり、いわゆる「人」としての名は持たないが、いつからか彼らの間には、互いをニックネーム――個体番号からの語呂合わせで呼び合う習慣が生まれていた。

 新入りのNo.877564もその流れに従うが、初期の個体番号と比べて桁数が増えた今、語呂合わせで名を付けるのも容易ではない。

 番号の一部を取ってニックネームを付けた事例もあるが、たまたまNo.87(ハナ)もNo.877(バナナ)もNo.775(ナナコ)もNo.7756(ナナゴロウ)もNo.756(ナゴム)もNo.564(コロヨン)も存命であり、歴戦の大先輩を差し置いて重複名称を使うわけにもいかない。


 結果として、No.877564は「バナナ殺し」というニックネームを授かることになる。

 No.877を殺しそうな名前はどうかと思ったバナナ殺しだったが、同調圧力により拒否することも難しく、彼女は自身のニックネームを受け入れた。


 しかし翌朝、バナナが死体となって発見され、バナナ殺しは「名前が怪しい」という理由で殺人の容疑を掛けられてしまう。

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