ゲームのチュートリアル悪役に転生したけど、主人公達とは一切関わらないようにしようと思っていたら、本当に何の関わりもないまま30年の時が流れた

 神様の不注意で命を落として異世界転生した青年、中島 真。

 転生前の説明によれば、転生先は彼の「最も強く印象に残っているゲーム」を元にした異世界だという。

 そんな彼が転生したのは、かつて何度もやり込んだ3部作RPGのシリーズ1作目で、主人公が最初に戦う盗賊団の首領トーゾックだった。

 原作主人公の生まれ育った村を焼き滅ぼすも、森への狩りから戻った主人公により返り討ちに合う、そんなチュートリアル悪役だ。


 しかし、転生時点の彼はまだ乳児。

 原作のスタートまで20年以上の猶予がある。

 己を鍛え、法を遵守し、原作主人公に関わらなければ、未来は変えられる。

 そう思った彼は幼少期から自身を鍛えた。

 両親を流行り病で失い、スラムに流れても、身に付けた技術と知識のお陰でどうにか他の孤児達と共に暮らしていけた。


 やがて成長し、魔物狩りで稼げるようになってからは、原作の舞台となる国から離れ、金を貯め、家を買い、所帯を持ち、子供が生まれ……気付けば転生してから30年。

 原作シリーズで言えば3作目が始まる時期になっていたが。

 何故か、1作目のラスボスだった魔王の手により、原作の舞台どころか、彼の住む国までもが滅亡の危機に瀕していた。


 よく考えると、魔王を倒すのは原作主人公達である。

 魔王を倒すには、神の血を引く原作ヒロインの力が必要だ。

 しかし、旅立ちのきっかけとなる盗賊団の襲撃がなければ、田舎の狩人でしかない主人公は表舞台に立つこともない。

 すると、主人公の旅の中で彼に救われるはずだった原作ヒロインは、魔王軍に襲われ死亡。

 ついでに、主人公の活躍で守られるはずだった聖都は陥落、主人公に諭され改心するはずだった王太子は悪政を敷いて国を割り、いずれも魔王軍の進行を抑える役割を果たすことはできない。

 結果、主人公が倒すはずだった魔王は伸び伸びと勢力を広げていたのだ。

 万事手遅れ、このまま行けば、数年で人類は滅びを迎えるだろう。


 仕方がないので、トーゾックは原作シリーズ2作目のラスボスである邪竜の復活と、3作目のラスボスである破壊神の召喚を試み、駄目元で三つ巴による共倒れを狙うことにした。

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