一見異世界転生したようだけど、恐らくここは仮想現実で、俺は人体実験の被験者で、俺の行動は全て外部から監視されている

 交通事故で死んだと思ったら、見知らぬ場所で、乳児の体で目覚めた青年、三原 礼照。

 紅や緑の髪色をした両親と兄姉から、彼は自分がデリュー男爵家の3男ジョンの立場にあることを知る。


 日本とは明らかに文化や人種が異なる環境。

 知らない響きなのに何故か理解できる言葉。

 眼前で行使された、魔法と呼ばれる不思議な力。

 一見すると異世界転生に見える状況だが、礼照は真実を見通し、完全に事態を把握していた。


 恐らくここは最新技術を用いた、医療用の仮想現実空間であること。

 自身は事故で意識不明となり、人体実験の被験者にされたこと。

 その行動は全て外部から監視、記録されていることを。


 日本法における犯罪行為が、必ずしもこの仮想現実世界で罪になるわけではないが、行動次第では現実世界での信用すら失う。

 たとえば、弱者を虐げ横暴に振舞えば、潜在的にその気質があると判断される。

 過度に享楽的な振舞いをすれば、監視者や、ともすれば家族や友人にまでその姿を見られてしまう。

 仮想現実内で自分自身が児童の年齢であっても、同年代の異性に手を出せば、現実世界で小児性愛者として蔑まれることになるのだ。


 恐らく時間的に加速されている仮想空間での実験が、彼の体感で何十年続くかもわからない。

 礼照はジョンとして、常に勤勉に、規律正しく過ごすことを決意。

 見目麗しく文武に優れ、常に公正なジョンは、家族からも領民からも愛されて成長した。


 やがて10歳となり、王都の貴族学院に入学した彼は、11歳の子爵令嬢に入り婿候補として目をつけられることになる。

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