どんな君でも愛してる

宮北莉奈

第1話 幼馴染

「おはよう、紬」

「おはよう、拓也」

 私たちの毎朝の日課。

「行くか」

「うん」

 2人は学校へ歩き始めた。

 この何気ない日常が私の心を踊らせる。毎朝挨拶できるのも、学校に一緒に行けるのも幼馴染の特権。でも、本当は幼馴染だけじゃ満足できない。

「またあの2人一緒にいるよ。やっぱり付き合ってるのかな?」

「付き合ってるにしても、釣り合わなすぎじゃない?私なら恥ずかしくて隣を歩けないよ」

 と紬たちと同じ学校の生徒は笑いながら陰口を叩く。

 ああ、また言われてる。性格が良くても見た目がだめならすべてだめなの?拓也はとても優しいのに。世の中見た目がすべてなの?

 何気ない噂が紬を落ち込ませる。

「紬。今日の数学の課題やった?」

 拓也は唐突に口を開いた。

「へ?……あっ、やってない!」

「やっぱり。そんなことだろうと思って、ほら」

 拓也は紬にノートを渡した。

「え?」

「学校に着いたら困らない程度に写しとくか?」

「いいの?ありがとう拓也!」

 こういう優しいところが本当に好き。

 そんな会話をしているうちに2人はあっという間に学校に着いた。

「紬。おはよう!」

「由依ちゃん。おはよう」

「相変わらず仲良いね」

「そう?」

「あっ、紬」

 と由依は手招きをした。

「で、どうなの?」

 と由依小さな声で紬に耳打ちした。

「えっと……まだ、です」

「まだなの!?いい加減告りなよ。好きなんでしょ?」

「ちょっ、声大きいって。……その、この関係を壊したくなくて」

「そんなことしてると誰かに取られるよ。行動するなら早めにね」

「そんなことわかってるよ」

 その日はずっと頭から由依の言葉が何故か離れないまま一日が終わった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る