第3話 化けの皮
刃を潰した剣であっても、殺傷能力はある。死体の傷は、ルートヴィッヒの腕を如実に物語っていた。
「巻き込んでしまって、すまなかった」
死体を片付けていたアルノルトは、首に包帯を巻かれたルートヴィッヒが、刺客に捕らえられていた見習いに謝っているのを見た。ハインリッヒとかいう、どこかの貴族の息子だったはずだ。
「いや、捕まった私の問題です。竜騎士見習いとして、私が不甲斐なかっただけです」
見習いの言葉にルートヴィッヒが首を振った。
「刺客がきたのは、私がいたせいだ」
「あなたは刺客に襲われるのが日常なのか」
ルートヴィッヒは答えなかった。
死体が片付けられた訓練場には血痕が残っていた。使うには問題ない。先ほどまでの実戦で、アルノルトの気分は高揚していた。飛行訓練中の先輩竜騎士や団長達幹部が戻ってくるまでの間に、確かめたいことがあった。
「おい、見習い、お前、今まで、手加減していただろう。俺と本気で手合わせしろ」
ルートヴィッヒはアルノルトから受け取った真剣を見て、顔をしかめた。
「本気の手合わせとおっしゃるならば、刃を潰した剣をください。真剣で本気で勝負しては、どちらかが大怪我するだけです」
ルートヴィッヒが要求したとおりの剣が用意された。
結果、アルノルトはまったく刃が立たなかった。アルノルトの負けを見た竜騎士たちが、次の手合わせを申し込み、ことごとく惨敗していった。手当したばかりの傷から、血が流れ、ルートヴィッヒの服を赤く染めていったが、彼の強さは変わらなかった。
「見習い、お前、今まで手加減していたな。なぜだ」
アルノルトの言葉に、教育係全員に勝利したルートヴィッヒは答えなかった。今まで手加減していた理由も、今になって実力を見せた理由も、アルノルトは問いただしたかった。
「貴様ら、怪我をしている見習い相手に、何をやっているか」
惨敗に動揺していた竜騎士たちは、その言葉で、団長達幹部が戻ってきたことに、ようやく気づいた。
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