空白の世界

くりおね。

第1話 父親と姉

 夏はじめの昼下がり。

俺は今日も家であいつに殴られていた。

憎い憎い親の面をしたあいつ。


 今日も姉ちゃんが心配そうに何も出来ないで立っている。仲裁もしないで立っている。

しない方が良いのは分かってるし、本来なら俺が守らないといけないのに。

姉ちゃんに心配しないでと言ったら、更にあいつに殴られた。

「やっぱりお前は頭がおかしい」って。

頭がおかしいのはお前なのに。

飲みかけの空き缶、ポリ袋が散らばる床に勢い良く倒れ込んだ。

するとあいつは拳を止めた。

どうやらあいつの気が済んだらしい。

もっと殴られるところだったはずが、今日は飲みすぎたようだ。

そのまま寝室に文句を言いながらあいつは寝に行った。

姉ちゃんはすぐさま俺の顔に駆け寄ってハンカチで血を拭ってくれた。

「今日もよく頑張ったね。」って褒めてくれた。

いつも涙が零れ落ちそうになるけど、今日は耐えられた。


蝉の声が聞こえる。

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