第121話劉操跳梁跋扈
孫権と周瑜の間にできた溝は、孫呉の君臣に致命的な間隙を作った。
『あの周提督でさえ、悲惨な最期を迎えた。どうして自分が同じ目に合わないと言えようか!』
覚醒を果たした劉操が、このスキを見逃すはずもなかった。
「フゥーハハハ!徐庶よ!」
「はっ!嗣徳さま!」
「おまえには黄金4万斤を渡す。明細はいらん。好きなだけ使って孫呉の君臣の間に隙を作れ!」
「はっ!」
「賈華!」
「はっ!」
「おまえは呉に知人が多かろう。手紙を持って呉の臣に孫権から離反し、この劉嗣徳の元へと来るようにそれとなく諭すのだ」
「はっ!私は転向者。お役に立つことがあれば何でもいたします!」
「黄忠、魏延!」
「「はっ!」」
「そなたたちは呉に潜伏し、それでも孫権に従うものあらば……」
「「ははっ!」」
なんのことはない。
周瑜は曹操が手出しできない間に劉家と敵対して滅ぼし荊州を呉へ組み込もうとしたが、劉操は穏便に孫権が『手足の如く使う』と言った自慢の家臣を根こそぎ引っこ抜き、孫呉を内部崩壊させようとしているのだった。
「操よ、ここで呉と事を構えて大丈夫なのであろうか」
父・劉備が劉操に問う。
「父上、天に二つの日はなく、ふたりの君主はおらず、と申します。いずれは孫権と事を構えることがありましょう。直接戦をするわけではないのです。ただ、孫権の主君としての
「嗣徳さまは先の先を見据えていらっしゃる。その場の感情で家に火を付けるような猪武者とは、頭の構造、目の付け所がそもそも違うのです!」
孔明が劉操の援護射撃をする。
「孔明までもがそう言うのであれば……」
劉備は渋々納得した。
劉備は自前の土地を手に入れたことで、それを保持しようと少し日和ってしまったようだ。
「嗣徳さまはただのお人ではないと思っていたが、ここまで頭の廻る御方だったとは……」
その場の感情で家に火を付けるような猪武者と云われた関羽、張飛、そして趙雲は劉操のことを大幅に見直さざるを得ない。
糜竺、糜芳、簡雍など古参の武将も劉操の認識を変えた。
馬良、馬謖、廖立なども、みずからの主人が知恵を誇ってきた自分たちより一段と高い視点を持っていることを自覚せざるを得なかった。
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