並の人間、社会の底辺
ピチャ
並の人間、社会の底辺
愛すると決めた子がいた。
彼女は何者かではない。どう生きていくかを決めないまま、ゆったり人生を感じている。
だが人生って、そんなに簡単なものではない。それを彼女は知らない。
どうやって明日食べていくか、考えないままわずかな貯金を減らしている。
彼女をサポートしようと、その生活を見る。
仕事はぼちぼちで、家では食事と入浴、睡眠のみ。やっていることが異様に少ない。
料理もできず、掃除も知らず、家事は洗濯だけ。
まあ、外から見ればその怠惰さはわからないわけだから、最低限、という感じがする。
勉強は人並みにはできる。運動も悪くない。コミュニケーションもできないわけではなく、そこそこの生活をしている。
しかしそれは彼女をあくまで「学生」として捉えた場合。
社会人としては、特別の能力をつけていないので、意識だけ高い人にさえおいていかれる。
つまり、食っていけないわけである。
時間が経つごとに、彼女の価値は下がり続けている。
彼女のSNSは、死にたいという悲鳴で埋まっている。
自分の存在価値を見出せる生活ではないから、当然のことだろう。
存在価値を見出せないから死にたい、死にたいから生きていく方法を考えない、考えないまま生活を続けているから、存在価値を見出せない。
そんな悪魔のようなループに陥っている。何もない中年男性を「悲惨」と表現するまでもなく、彼女はそこに到達している。
だが彼女は非常に楽観的で、危機を感じられないようだ。
自覚を持ってほしいが、現実を見たらより一層死へと向かってしまうかもしれない。
扱いが難しい。
何があっても死へと向かってしまうなら、社会から切り捨てるべきだ。
しかしそう判断するのを躊躇させるように、ごくたまに生き生きとしている。人間性は豊かで秩序的で善。そう、彼女は「教科書的には」生きているべき人間なのだ。社会の理不尽さを根っから受け入れられない性質なだけで。
彼女は施しを受けることもできない。俺たちが底辺にいて食いつないだ強さを、彼女はもたない。
サポートすると彼女はまた楽観的に考えて死期を延ばすだけなのかもしれない。
サポートしないと彼女の正当性によって、こちらに非難が来るかもしれない。
こんな「関わってはいけない人間」が生成されるなんて。
並の人間、社会の底辺 ピチャ @yuhanagiya
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