屠殺の根源
赤川凌我
屠殺の根源
屠殺の根源
赤川凌我
24歳のざっくばらん
日本に降臨せしめし
稀代の曙
反権力の新寵児
中二病
多淫な欲望を骨法に
ありとあらゆる事柄に
その迸る力を発揮する
彼は24歳
愚民の白眼視をかいくぐり
脳髄の盤石な空間こそ
彼の劇場なのだ
貪婪な同性の僕へのみっともない僻み
持たざる者は真に悲哀の情を禁じ得ない
人間のメカニズムも
種族が異なれば
多くの個性を勃興させる
地獄の果てに来ても
気の持ちようで
如何様にも変わるのだよ、友よ
だから信じようじゃないか
懈怠と退廃のこの社会に佇立し
めげることなくしたたかに
なろうじゃないか、わが友よ
思春期の驕慢の残滓が今も僕にまとわりつく
僕のねぐらにはいつでも充溢した熱気を帯びる
通例青春の選民意識は歳月と共に胡散霧消する
しかし僕は如何にも恥ずかしい
もう辞めようか、恥ずかしい
この歳になってまでどうして
世間の御仁の顰蹙を買わねばならないのだ
名だたる偉人の金言名句も、突如僕を蹂躙した
統合失調症も今の僕の神経を逆なでする
もう辞めだ、こんな忸怩たる遊戯は
いつまでも痛痒を惹起させる人生を
闊歩するのはもう辞めだ
日本は淪落する一方だよ
指数関数的に蛮人と白痴は増える
これ以上混沌を極めてどうするのか
これ以上身から出た錆で辛酸を極めて
一体どうするのか、ちゃんと考えろよ
屠殺の恍惚、自らの畜群を大量殺戮
倒錯し、歪曲した負の遺産は吹っ切れた
クソ雑魚産業廃棄物の僕、無手勝流の道
醜悪な小径なぞ歯牙にもかけぬ
もう手遅れだ、狂うところまで
狂ってやる
白兵戦
僕は猛々しく自宅を出る、必要な荷物を装備して
懶惰無頼の生活習慣は僕の心身を俄かに蝕んでいく
向精神薬の服用と肺臓を射抜く幻聴と妄想に侵されて
僕は統合失調症と戦う、心のジャックナイフで巧みに
正鵠を射る賢者達に憧憬し、僕の命もなお燃え盛る
ああ、滾るリリシズムで僕は今日も詩を創作するよ
凝固し、腐敗した現実から時はなれるかのように
形而上学の恩恵を受けた我が魂、僕はそこに正義を
遂に見出した、自由闊達で僕は自分の道を疾駆する
屈託のない破顔に並外れた諧謔精神、僕は既に大男
獅子奮迅の人の子の風采に
爛熟したその技量の広大さ
浴びるように記憶の洗礼を
浴びて、浴びて、浴びてゆく
痴呆の忘れっぽさは常に健在
それは僕の野性的不均質だと
己の留飲を下げて、不道徳の
緘口令を己に敷いてその内奥
個人的な小社会の安寧秩序が
跳梁しているのだ、模糊の中
白兵戦は剣呑な曇天の下で尚
不可視の幻影となって僕の脳髄で狂喜乱舞する
歔欷
統失に責め苛まれた一人の青年が殺伐の曠野に躍り出る
紺碧の空、群上の大海原があるのに君は概念に懊悩する
今こそ見てみようではないか
渦中のうなじを、五臓六腑を
そこに君は有機を発見するのだ
それでも頭部への打擲、陰鬱な迫害、嘲笑
それは統失の猛威だった、衆人環視の苦痛
知悉の大賢者は多角的な焦点と重点を持つ
物事を鳥瞰すれば己の歔欷もまた浄化
青春の黄金時代を劣等感に
刹那の恍惚を胸中に横溢させ
今こそ享楽の最果てを
魑魅魍魎をかいくぐり
今こそ目指してみよう
奔流の情熱を失わぬように
愛と美の結実を真に祈願し
笑えるよ
腑抜けた単調な言辞の縦横
五里霧中の文化生活の萌芽
通俗性に拝跪してしまう輩
矮小の体躯と脆弱の精神性
美の所有者への阿諛追従で
土人の生活は不毛の地平へ
回帰してしまう、笑えるよ
新緑の広大な自然の中できらめきを保つ処女の儚さ
優勝劣敗の環境で東奔西走しつつも創痍の童貞の姿
文章の豪傑、宇愚の魂を持つ狼狽の青年は倒れ伏す
自然に畏怖し、五体投地する事で青年は芸術家至る
差別意識の兆しは老若男女の胸の内にあるのである
何の惻隠の上をも持たず、障害者を道化師のように
そのように捉えるのだ、見世物小屋じゃないんだよ
いい加減にしろ、そんな野卑な人間には仮借ない糾弾を
これは私利私欲と呪詛に横溢した僕の思いこれは誤謬だ
しかし世の中はもっと誤謬である
花鳥風月を吟唱する吟遊詩人の眼
そんな抒情性は退廃の一途を辿る
ああ、僕の琴線に触れた先達の金字塔よ
僕は周囲に何処此処の白眉を感受しない
周囲を徹底して蔑視し
レイシズムを伴ってゆき
やはり僕も一人の白痴で
無知文盲の侏儒でもあり
若輩者の邪な父と子と精霊
全く、何の大言壮語なのか
何よりも自分自身に冷笑を
周囲はエンタメのように
僕を一笑に付すのみである
はためく日の丸
軒昂の若者達はもはやこの嫌悪と倦怠の世では
珍獣種になってしまった、長足の進歩を遂げた
人類の文明、土人のおまじないを忌避しないか
神秘主義の乱用を基調の搾取、洗脳、ああ、何
電脳社会によって従来の価値観は軽蔑されてゆく
その完成過程さえも集中力の欠落した現代人には
やはり我慢ならないものなのだ
そこには凍てついた愛が存在し
日の丸の旗に対し矜持も拘泥も
喪失し、陳腐な世界に逗留する
今日僕は午前、仰臥しながらも
そういう事を思い巡らしたのだ
僕もまた狂人染みた無用の長物
自虐的な思考は何にもならない
しかし僕はこの夾雑物に執着し
いつか達観し慧眼を持てるよう
願っている幾千もの霹靂が鳴り
万雷の異口同音で盤石の肉体を
僕は得ようと粉骨砕身で、ああ
僕は即座に価値観を刷新しなくては
仏像の内部には彫琢者の意匠と共に
世界の情熱を一定の形式を持って包摂している
そして僕には豊饒な潮騒
爽涼な風に秘めたる暁の
永遠無窮の像にいかんともしがたく
ひれ伏すのだ
日の丸の栄華は艱難の行脚の中でも
けたたましい旗に啓示しはためくの
これが僕の象徴の詩的敷衍の一部だ
諍い
人に薫陶を与えて憚らない上梓された傑作
僕もその著者の如き大巨匠になりたいのだ
ふと外を見る、中空には大きな穴が空いて
そこから鬼の目が、血走った目がこちらを
ただひたすらに凝視する、あの目は同調の
その眼、それを根源に諍いは起こっている
放縦な淫蕩、激昂し、倒錯した人々の魂に
諍いは人の精神構造を骨子として或傾向が
万人の茫漠たる大地に散在するTNT
一触即発のその様相は音楽を略奪する
僕はそういう事柄を思い稲穂のように
首を垂れていて、粛々嘆息してるのだ
花々
この弛緩の公園には
不釣り合いな白蓮が
咲き乱れている
襤褸の洋服に身を縮こませる僕は
花々の耽美性に思わず身震いした
和歌山に点在する田舎のあばら家
天文学的な数の夥しい老人のねぐら
しかし花々はそうした荒廃に安泰を
色とりどりの花びらで優しく愛撫する
僕も部屋の中枢に花を据えようかなと
美に隷属する花々の儚さを寵愛してる
そして僕の長身美人の恋人は大百合で
可憐な存在感で僕を幸福にさせている
この漲る愛が未来永劫続きますようにと
新たな哀訴我が精神に出でたし
これが何だ
畢竟今幅を利かせる科学の御代は
人間同士の拮抗競争を泥沼化させ
およそ甘美な理想郷からは乖離し
泡沫の陶酔を大量消費、大量生産
慄然と虚脱に今懊悩する人々を
慰撫する邪教の教条、ああ何だ
地獄絵図の縮図がいとも容易く
なす術もなく鮮明に形を帯びる
喚き散らす無為徒食の老害
全体性は偽善の慈愛で包み
そして一様に凋落してゆく
しかし僕にも出来る事が
僕の閃光を、僕は放出し
したたかな個性が人を鼓舞し
全体性は怒張して空前の文明
怒濤の喜悦が幾多の弔辞をも
忘却させてゆくのだ
勝てば官軍であるし
勝利に邁進するのみ
悪徳にへつらい
慙愧で失意に暮れる
傲然な修辞は彼をも
友をも、恋人でさえ
憮然とさせているが
今後は魂の飛躍の時
黎明と陶酔とが美を
未聞の高次へと
牽引させてゆく
幸甚
統合失調症への社会の慈悲は甚だ心地よい
統合失調症を筆頭に精神障害者が
多くの幸甚を得て己の才能の鍛錬に励み
七転八倒する中で世界の美と調和に
数学的無限の獰猛な整然さに
傾倒してゆき、社会を変革させますように
早熟の才能であっても障害者であれば
人非人からのいじめにあう
そんな中豊かな知恵を持つ泰斗に
邂逅すればきっとそれが官能的な
しかしながら劣悪ではない感覚に
耽溺しその中で芸術は猛威を高め
ようやく努力が功を奏するのである
そうなれば幸甚ではないか
僕はお花畑かも夢想家かも
しかし何らの光芒のない人生
平穏無事とは無縁の人生を
送りたくないのなら経験に
吉凶禍福を司る神聖な宗教に
身を委ねようではないか
偏執狂者かく語りき
「幸甚の神髄を!」と
近視眼
おあつらえ向きの微笑
物見遊山で放浪する男
風光明媚な観光地にて
僕は多くの享楽を得た
旅先で詩集を耽読する
僕の近視眼は遺伝である
統失発症以後は心までも
近視眼になってしまった
生まれたての小鹿のような
悲哀の色彩を帯びた僕は
前後不覚、咄嗟に四肢を
僕は臆面もなく投げ出し
衆人環視の有象無象
これを見て一糸纏わぬ
蒙昧を錯覚し嘲笑する
これが僕の被害妄想と
そして幻聴も同居した
疾病生活の日常茶飯事
全ての妖力の集大成
用意周到に統失の奇異を結集し僕はそれを瓦解させた
蠢く蛆虫と既に羽化した五月蠅い蠅どもは悉く死滅し
僕はたちどころに神の破壊能力、妖力とでも言うべき
力を手に入れた、尤もそれは僕の午睡の話であるが
古今東西の膏薬はこうした無意識の産物に依拠して
日本人の文化や美風に拍車をかけるしかしその中で
負担の過剰に耐えきれず自死していくのも日本方式
妖力で持って、苦痛を忘れ、恣意の中でまどろんで
溶けていき、往々にしてまた新たな偶像が爆誕するのである
それこそが全ての妖力の集大成だ、友よ
観念派
塵芥の中で燦然と輝く巨峰
象徴を通して芸術を見よ
鑑賞者により自然は変化
発想を転換し、美をまた
巨大に、広大な観念世界
その受肉と昇華で
三日三晩
子々孫々
暗中模索してゆく
古色のアーケード、総毛立つ逢瀬、荒ぶる欺瞞、呼吸となった美辞麗句、自由を阻む同調圧力、寂寞を誘う集団主義、そしてあらゆる汚濁、腐蝕の中に僕達の真の野性が顕現しているのである
潮
荒れ狂う奔馬の如き潮を僕は尚も悠然と眺める
港町のこのそそり立つ灯台から見えるこの眺望
先程は素晴らしい魅惑的な臀部から胸部への曲線美を持つ
愛くるしい顔立ちの長身美人を僕は見ていた
艶やか、可憐、壮麗
塵芥の僕の凡庸が一層際立つ
僕は傍らの長身痩躯の青年をも注視した
しかし彼は僕には何の感慨ももたらさないで
豊満な乳房に、母性的で我の帰るねぐら
僕は長身美人を淫らな思いを抱きながら見た
彼女は数学的美のシンボルであり、潮は力学的美のシンボル
カントの理論ではそうであった
哲学の系譜にも今度は電光石火に思索し
僕の頭脳も眼前の潮の如き荒れ模様を展開せしと
美少年
若くあどけない絶世の美貌、まだ純粋な感受性
下卑たものぐさは彼を舐めまわすように見ると
周囲一帯の空気はやおら不穏なものになりつつ
しかしその空気を打破する驟雨の如き野性の形
こうしてたちどころに官能は循環してゆくのだ
美少年、彼は頑迷固陋、目下人生を曲解しつつ
しかし無個性より幾分かましであるし美は尚も
その欠点の内に消失しはしない大きく円らな瞳
口元には微笑を携えた後光さすその相貌を持ち
銅の森、白銀の塔、リビドーで繁茂する稲穂が
彼の心に満ちて腕白の文才で小説創作が続いて
ああ彼は年少の、朴訥な芸術家でもあったのだ
蒼然の古典、世間のトレンドが錯綜する汐路に
特筆すべき両性具有の美の所有者が
げに尚も悠然と仁王立ちしたりけり
前衛
ガロアやピカソは当時前衛の巨人であった。彼らは傑出した才覚を持ってして世の先駆領域を押し広げていったのだ。彼らは当時一流の人々にとっても理解に苦しむ才能であった。特にガロアは矢継ぎ早の不運の襲来でついに数学史上最大の愚行とも言われる決闘にて死亡した。享年20歳であった。彼の理論は現代数学、現代科学の基層に位置づけられている。婉曲なき、才能の塊。彼らには常識や既成概念などというコンセプトは泡沫の如く感じられたのだろう。現代日本の一般の20歳の若者が目立たないよう、ひっそりと生きている現状を見ると私はひどく陰隠滅滅としてしまう。巨大な才能はしばしば前衛的な活動に傾倒してしまうのか。大規模な統計を取り、帰納的に推論した訳ではないので断言は出来ず、未だイメージで語る事をやむなしとしてしまうのが今の私ではある。ピカソにしたって形式の攪乱とでも言うべきキュビズムの芸術様式やその他の現代美術のほぼ全てに与えた影響を持ってして見ればガロアに匹敵する前衛的な存在である。
前衛的な存在が必ずしも成功の形でその功績が帰結する訳ではない。そのことはゆめゆめ忘れる事なかれ。しかし彼らの存在に薫陶を受け、彼らに甚大な羨望の眼差しを向ける者がいるのも事実である。数多いる世界各国の新進気鋭。彼らの才能を発掘し、世に応用するのも秀才凡才の責務である。前衛は天才であり、天才は前衛である。我々の社会は彼らの仕事と一蓮托生であるのだ。したがって才能の目を潰す教育や文化的理念、国民性は軒並み仇敵である。
ガロア理論を残したガロアの乾坤一擲の、彗星の如き生涯。不世出の芸術の才能で現代美術の精髄を極めていったピカソ。彼らの前では粗雑な概念、雑駁な環境は空理空論の代物と同義である。かくして前衛はいつの世も人に饒舌に語られる熱を帯びさせる。私もまた、そういう男でありたい。
大義
僕にとって反社会性こそ
思春期の僕の大義だった
統合失調を差別する世に
悲憤慷慨し、人の浅薄さ
愚にもつかない価値観に
憎悪を従え嗤ったものだ
鋼の意志は淀み、腐敗しきった眺望を変革させ
機械的な現代人に永劫の奇跡を呼び起こすのだ
廃人の面影を払拭し、人はそのように蘇生する
詩人は大義を忘れては良き創作できないのは必定で
魂無き里の長広舌に目を止める人は古今東西皆無だ
僕のように統失で碌に働けず碌に稼げない男でもね
大義は持っているのだよ、それは現代流の武士道だ
歴史を紐解き、否応なく悟らされる世の真理の数々
盛者必衰、諸行無常、万物流転、尚も人生は続くよ
無闇矢鱈の乱暴狼藉、それに憤然としていても
でもまあ良いじゃないか、そういう時もあるさ
イーグルスでもテイクイットイージーとあるよ
ビートルズもオブラディオブラダとあるよねえ
レットイットビーとかさ、人間の世相には必ず
こうした金言名句が稀少の如く宿っているのだ
大義のインフラは多文化社会の力学で発展する
処女
不可避の仕事、僕の処女作
あれはひ弱だが神聖な代物
腹心の処女、柔和な光の中
その芸術性、婉曲的表現で
彼女を守り、その美を愛で
崇高なものと重宝する文化
それは、そうそれは
洋の東西は関係なく
心にある事相違ない
錯雑する轍と餓狼の咆哮
外気に触れるはぐれ者の群れ
彼らは処女を欲しているのだ
伐採され、自然の権威を失い
街は終焉の夕焼けを餓狼達は
甘んじて
栄光の列柱と巨大な超自然に
澄み切った心で隷属している
濃い夏の光、恬然とした性なき
騒然とした懐かしき少年時代
傲岸不遜な昔の僕は文化内の
一切の脈絡を無視し、処女を
のみならずその美を是認せず
群青の空に我が身を投げ出す
萎れ枯れた苺園、乱立する人
休息だ、ごり押しの通俗心理学とは
僕はおさらばしよう、そして神秘は
いつも僕らの路傍にけなげに佇んで
僕達の守護霊となり再三再四転生し
僕達の生を引き立て、照らしている
肉体と政府
汝、交互にこの社会の世相と対策を見し
漸次に進行する悪性新生物に頗る辟易し
諸悪の根源は政府にあると
手垢のついた論調を声高に
訴え続ける、しきりにデモ
だしぬけにぽつりぽつりと
弱音と不安のスペクトルを
古都京都の一隅で露呈する
本質はむしろ後者にあって
僕らの生活は寧ろ知性より
感性の躍動にこそ
本質があるのだよ
だから醜悪な感性を
軽んじてはならない
それらは生の一部で
それらは隠匿に処理
月の暗闇に明滅させ
いつか成功の素因と
他の追随を許さない
巨大な生命の根源と
させようではないか
そう思えば肉体はかりそめの代物である
しかし愚にもつかないと軽薄に扱うのは
甚だ危険である
そう、複雑怪奇な万象の秩序の一部は
こうして実に明朗に語られたのである
否応なく
巨人の情熱の最大版図は如何様
時代を超越した天才は否応なく
手管の主催者に嫌忌されるのだ
彼は還暦後も寸毫も耄碌しない
令和の炎上
統合失調症の青年が
罵詈雑言を食らいうなだれる
灼熱の真夏に燦々と降り注ぐ
激しい日光は梢を引き立たせ
自然の放蕩の虜となる健忘者
彼はその感性的陶酔を克明に
ノートに記録した、令和に
仔細に情景想起させる描写
彼は詩人ランボーに比肩し
10代後半の大胆さと奔放を
芸術に昇華したという構図
彼はSNSの雑踏と往来を見
その神経の駄作にまた閉口
統合失調症の症状はかくして暗黒に消えしか
そして僕はかつて犯罪者だった頃を思い描き
あの頃の馬鹿と紙一重の暇のない暴挙に慙愧し
あの地元の山での炎上、僕は木々に火をつけた
僕はその炎上を見てアートを感じ、圧倒された
僕のハートに火がついた、それはきな臭い萌芽
しかし反射でそれを度外視したのだ
そのような事柄は社会で排斥される
自然淘汰の目的は安泰な世界なのか?
都会の喧騒と青春の閉幕を乗り越え
僕はようやく正気を取り戻したのだ
純粋無垢な少年は夭折し無限を棄却し
今の僕がある
少年独特の品位の低劣さ、非洗練
大人になると不意に気づくのである
あの熱狂は真夏の夜の夢であるとさ
陰キャの僕は想い人を懐柔する事は
出来はしない、優越思想は夕闇にて
名残惜しそうな軽微な風を伴って
僕の巨大な体躯を慰安したに相違ない
闊達の若者が常時旧態依然である事は
理論的にあり得ない
彼らはネット上の炎上という象徴的事件を通し
懲罰の心を知るだろう、節制を知るだろう
心の底から
それは内面から勃興する純粋経験
冷淡な大人、飢餓人は他人の恥を通して
残忍なエンタメ思想に捧腹絶倒するのだ
身を捩り、獰猛な不満を侮蔑嘲笑へ発散
死屍累々の山岳には腐敗した肉片と吐瀉が
無秩序に散らばり悪臭を放っている
刃物で骨や筋繊維が切断され、茶色に変色した
脳髄は芋虫の死骸の如くであった
眼窩がぽっかり空き、目が抉られ
一部が液状の物体になったものも
見るも無残な阿鼻叫喚の地獄絵図
既に死体となるまで遊び尽くされた被害者の姿を
僕はネット上から連想したのである
蠅の軍勢が今も尚戦慄の乱舞を僕に見せている
僕は胸糞悪くなりその場を離れるのであった
刮目せよ、炎上の果てにはどんな暗喩が可能か
一介の詩人として僕は表現せざるを得なかった
邪悪と善は表裏一体
ああ、勧善懲悪の皮肉は今
僕の慟哭が物語るのである
あらゆる弊害を吟味する事
それは両親の良心、超自我の役目
ああ、また炎上が
多くの人生が不快を示し
暗礁に乗り上げるのである
神域の例外を除いては
視覚過敏
ある男の統失は幻聴で持って彼を凌辱し
挙句視覚過敏をも彼に与えた
統失の卑劣、一片の矜持なく
男は幾度も絶望した
そして立ち上がった
その繰り返しで強靭に
彼は円熟の域に達した
絶え間なく襲う艱難は彼に眩暈をもたらす
されどレジリエンスは人間の栄光そのもの
痴酔、酒池肉林、麗しい動物たちの群れ
技巧の錆を抜け、密林を疾駆し、街へ、そして天空へ
天空を抜ければ宇宙が彼を迎合する
それを受け彼はうっとりするのだ
宇宙では誇張は空虚である
ああ、何という安寧だろう
すると暖色の閃光が
そこは兼ねての生老病死
一切皆苦の彼が忌避した
現実の世界であったのだ
穏やかな色彩
彼の肉眼を焼く
嗜虐の光は
もうないのだ
僕は今の彼を知っている
彼は静謐で鷹揚で穏便で
障害を乗り越え彼は
彼は偉大になったのだ
ああ、妬ましい
僕は統失の衰耗の中で
絢爛豪華な妻子に囲まれた
彼を僻んだのだ
我ながら何て下衆な心だ
君の不幸は君の不徳の致すところ
何と見下げはてた男だ
僕は渾然一体の幸福を
自分で台無しにした
僕は急に自分が憎く思えた
恋焦がれ、統失に粉砕され
僕は尚も自身を呵責する
地獄の季節は
いつまで続くのか
粉砕骨折
爽やかな月桂樹は深刻な夜空へ
らせん状の形を僕の目に刻印するように
束の間の蒸発を見せた
裸形の深紅にてらてらする!
血潮は呻吟の力を得て!
魔法の広がりに至る!
僕は不意に己の骨折に気づく
痛覚は時間差でやってくる
僕には居丈高でいる事能わず
骨折は粉砕骨折である
夜の帳は微かに囁くのだ
「カス土人どもにやられた事は
一目瞭然だろう?」と
その刹那の絶対知から離れた
淫猥で媚態にも似た音声!
統合失調症の認識論とは?
僕は咽び泣き
零落し
不和に悩み
人間社会で被害に遭った
何の?
粉砕骨折の
頑是なき少年は失意のどん底にて
Q.E.D.
僕は斜陽した産業を見る
僕は失敗した逢引を見る
僕は舌戦で創痍になり
菩提樹の木陰で
台頭した日本の面影
気丈で冷徹なビルディングを
じっと見据え
束の間の感慨に
思わず震撼したのだ!
辺りを包む古都の霧雨
粉砕骨折に呻吟しつつ
戸外での男女の蜜月に我が心は傷つき
プラトンの対話編は如何にも驕慢だ!
端役の僕にはこの気持ちを
端的に表現する事能わず!
ひねくれたみぞれ、混雑する波濤、生ぬるい緑茶
瞬く間に僕は落伍者認定され
我が雑駁の頭脳を牛耳るのは
愚にもつかない粗々しい言辞!
これらが僕の感性の一挙手一投足
そして僕はまことに感性を
武装した理性を利用して
完璧な構造で包み込むのだ!
ブラックサバスマン
ブラックサバスの鮮烈なリフは
我が脳を攪拌させ
我が血潮は激しく迸る
僕が意気消沈した時も
絶えず僕を守ってくれる
僕の堅固な外壁を貫き
軋轢をも忘れさせる一刹那
僕はブラックサバスで悦に入り
フリークとして趣味を謳歌する
山羊のサンプル
エンタメの錯雑で鈍感になった舌鼓
生ぬるい、腐敗の足取りが日進月歩
山羊の生活に食い込み
不協和音が次第に滲み出る
汝、屠殺の末に世の摂理あり
もはや無味な食通的悦楽は質量のない
幻影となって彼らを堕落させる
オウム真理教の寵児が世を蹂躙しても
彼らは怯え、慄くばかり
彼らのわななく唇に悪魔が接吻すると
整合性無き悪夢が彼らを苦しめる
かつて己を欣喜雀躍させた両親
己を庇護していた両親の影は
にべもなく霧散し
遣る瀬無さと心許なさで
彼らは咽び泣く
我が記憶に焼き付いた
羊の悲劇のサンプル
羊の悲劇はこうして
優柔と脆弱性を契機に
非業の運命を辿っていた
汝も僕も彼らとさして
相違はない
反社会群
1. 損壊者
人間の破壊、それは言わば結果に過ぎない
彼の不幸な性向を思えば
彼が占領した惨めさを思えば
生半可な覚悟では彼を語れない
眉目秀麗の男
その落ち着いた面持ちからは
決して背後の惨劇を類推できない
彼の命の灯火は消え
喜劇は終わった
猛々しいホイッスルが耳をつんざき
全米が表面的なルッキズムに懐疑した
人は見かけによらない
相次ぐ奇行で周囲をどよめかせ
高校では終始一貫して独り身
反抗には高知能を如実に示すが
保身の傾向は徹底せず
まるで世捨て人
社会に愛想を尽かし
人生すらも彼には部外者
気宇壮大な夢もなく
針小棒大な脚色もなく
誇りなく、そして急転直下
彼は某集落で捕縛された
侃々諤々の犯罪対策は
不測の損壊の弊害に
どこまで対応出来るか
彼を追惜するのは果たして
人非人の所業なのか?
その是非を僕は問おう!
2.変態という名の紳士
職場のデスクに意味深な手記が置かれてある
僕はこっそり中を覗き、闖入者となった
誰の検閲もない中
しかしこの選択を僕は
甚だ後悔する事になるのだ
〈番人の如き森林
うねり狂う嵐が彼の行く手を阻む
汝、自分に真摯であれ
彼はそれを座右の銘に
様々な環境を転々として来たのだ
彼は窃視狂にしてマゾヒスト
サディズムもある
しかし幸か不幸か彼は馬鹿ではない
しかし彼は危険な妄想をしている
彼はある日身じろぎ一つせずに
待ちゆく人々を眺めていた
彼は無稽な変態で女どもを
人知れず心の中で全裸にしている
彼はネット上にて
軽挙妄動をすることを常としていた
愚行、凶行、暴挙
彼を知る私は彼のネット弁慶を
開口一番にそう表現する
変態は一朝一夕にしてならず
彼もまた環境が歪ませた産物
緊張さえも彼の咽喉を通り
彼は快楽へと変換する
紳士、紳士
変態という名の紳士
彼の平常時の文章は
英文学的で端的で簡素
彼は一見常識人の仮面を被っているように映る
老獪な盗撮の手口
私は知っている、彼の犯罪を
私は見たのだ、学生時代
托生の文化祭にて、不敵にも彼が
女子更衣室にカメラを悠然と
設置していた事を
しかし私もまた反社会群の一人
寧ろ彼の如き反逆者を
私は重宝した、私もまた
邪知の発想を信奉しているのだから
彼と私は竹馬の友だった
彼の風采は以前から秀麗であった
成績優秀、品行方正、文武両道
私は学校での彼を知っている
またある日、彼は私に性癖を語った
並外れて興奮した面持ちで
ああ、私の過去、無限順列!
今では全てが燦然と輝き
そして苦痛に満ちている
私と彼の差異とは?
反社会性は如何にして分岐する?
平成のあの年と軌を一にして
変態紳士の神話は始まったのだ
卑劣、破廉恥漢、痴漢、醜怪
大衆の憎悪と侮蔑の叫びで彼は
彼の悦楽は亢進する
逆効果だ
私はその想像に
微笑を禁じ得ないのであった
変態の要衝は今でも心の中に
私を迫害し、差別し、虐待した社会なんて
根絶させてやる
神々も照覧あれ!
人類の終末へのハイウェイを!〉
手記を閉じた
僕はここまで嘔吐を促す吐瀉人糞の代物に
邂逅した事はついぞなかった
最初は中二病の怪文書かと思ったが
僕はリフレッシュするために屋外に出た
その醜悪な手記を片手に
僕は紫煙をくゆらせて少し茫然とした
そして誰の所有物か分からないその手記を
ライターで燃やした
メラメラ、メラメラ
よく燃える
惜しむらくはこの筆者の淀んだ魂を
この手で燃やし、葬る事が
能わない事であった
メラメラ、メラメラ…
3.樹海の死神
蝉の脱け殻、昇り行く魂
純白な自然の優美は頑強な鎧を
装着し、樹海の死神は徐に
殉教の使徒の方に向かう
欺瞞は現代に定着し
獣どもの憤怒の咆哮で他を牽制した
紺碧の甲板に合金を掘り出す
血気盛んな坑夫
ここにも一過性の死神が
樹海の死神、頭脳明晰の死神が
ただ佇立している
失踪する車と古びた舳先
中国、インド、ベトナムの土着
東洋神秘の凝集だ
僕の友は疾風と文明
わななく僕の平原
僕は立ち竦む
超長身の美女の魅惑が
僕を顕著に興奮させる
ああ、この悶絶
ああ、彼女は僕のもの
僕は彼女のもの
真っ昼間
曳航する船の一団
樹海の死神は憔悴し
顔面は蒼白だ
青年の往年の激情的個性
迸る富と名声のみが彼を
安堵させるのである
肥沃な腐植土、自然の小児
統合失調症を治癒する膏薬は
天然成分の中にこそある
道をゆく、印象がうねる
生意気な差別者の面影
無理解、無礼、乱暴
激昂!
脳髄は焼け、こめかみは爆発する
四肢は発光する
狂気染みたけたたましい音を伴い
小川は清冽さを喪失
和歌山の観光地、村落
まばらな市民のねぐら
悪漢は憔悴する、脳裡には死神
終焉は今もすぐそばに
愛に耽溺するガタイの良い男達
豪傑、猛者の立つ瀬がないな
しかしその尊さよ
価千金の金色よ
清々しくなるね
統合失調症の暴虐とその根絶
暴虐、冷酷
正のシャーマニズムは
僕の過去を総決算させるようだ
むごたらしい程の男の突っ慳貪
一人称が「俺」の乱暴さ
樹海の死神の目論見
巨像の殺人鬼や
壮麗な古典建築の
ベルベットブルー
しなやかな
未亡人の手足は
せわしなく動き
まるでADHDさながら
有能な移民達は
末代にまで残る
日本の革命に加担する
ああ、道徳系譜の
力学的崇高よ
自殺者心理の図解を
綿密に懇切丁寧に
樹海で死神は
危急存亡の男に啓示するのだ
日本国内の自殺者の増加
僕は仄聞してきたのだ
体育会系の滅亡に併せて
脆弱な豆腐メンタルもまた
扇情され、死滅してゆく
形而上の自殺がテーマの
シュルレアリスム的自動記述
男は嘆く、自らの非力さを
金剛石の台風が僕の風流心を
掻き立てれば
耳に染み入る蝉の声が
象徴的な色彩を帯びるのだ
私は樹海をほっつき歩く。ただ無為に、ぼんやりと。そこで煩わしいサハラ砂漠の熱風が僕の体を嬲らせた。私の生前の境遇、怒涛の搾取が私の視界にビジョンとして現出する。その時私の内部で何かが裂けた。私は突然残虐な気持ちでほくそ笑んだ。自殺者の末路を観察しよう。私はそう思い立ち、目を血走らせながら死神の如きセンスで自殺者を感知する。私の知覚には特異な能力が芽生えたのだ。それは人類史上未曽有の進化の過程の一部のように私には思われた。私は突如、闖入者を感じ取った。私は自殺者の青白い、絶望しきった顔を見て、大爆笑したい気持ちが抑えられなくなりそうになった。まるでお誂え向きじゃないか。私は自分の感情の爆発を論理的に敷衍できるだけの能力はなかった。ただ訳も分からず、マタタビを得た猫のように興奮している。顔の紅潮が私には明瞭に感じ取れた。
この狂気じみた内面を私はひしと自覚しつつ、ロープを木に巻き付ける単調な作業をしている自殺者の男をついに発見した。私は既に幽霊となっているらしくどれだけ彼に近づいても彼には気づかれないのだ。
彼は思い詰めた表情だ。私は残虐な気持ちが抑えられない。吹き出しそうになる。そして首に縄をかけ、遂に首を吊った。彼は生存本能の奔流か、じたばたと四肢を動かせていた。私には生き物の死は喜悦の轟音。彼はやがて動かなくなった。そして彼の魂は溶けていった。そして私は意識をとある場所に飛ばした。
「やあ、目は覚めたかい?」私は先ほど絶命した彼に意気揚々と話しかける。辺りは漆黒の暗闇が情状を酌量しない程の支配的広がりを見せているとある場所である。「僕は、死んだのか」
「その通りさ」私は彼にそう返答した。
間髪入れず私は彼に言った。「私は君を難詰しない、諫めない、諭さない。あんな地獄的な世界に生きること自体、確かに現代人にはナンセンスかもしれないな」
彼は微動だにせず、ぽろぽろと涙を流した。私は彼の心情が手に取るように感受する事が出来たのだ。私の特殊能力によって。
「あなたは一体?」と彼は言った。「私は幽霊さ。しかし近頃新たな特殊能力が添加されて死神みたいな役目を担っている。尤も私はその事を決して退屈だとか、下等だとか思ったりはしない。本当に楽しいよ、生き物の死は。人間のみならず死亡したらこうやってどんな生物でも私と面会するのさ。そして人間に劣る白痴の頭でも私の名状しがたい特殊能力により必ずその行く末を理解させることが出来るんだ」
彼は一瞬当惑したような表情を浮かべたが、何やら決心したのか私にこう言った。
「僕はどうなるんだ?親より先に死んだから何らかの報いが待っているのか?」
「それは分からない。ただ私は君を然るべき場所に飛ばす」
そしてまた私も眠りの世界へ!
4.武士道とは死ぬことと見つけたり
江戸時代の武士は日本の文化
武士道の中に死ぬこと
既に死を覚悟して生きる事
激動の世相で、情報化社会の
まっただ中に
武士は一人もおらず
自らの息災や私欲のみを追う
小動物が右往左往
慷慨の態度の若者も
多くは衰微し、腐ってゆく
悲観と傲慢は魂を淀み、腐らせる
まるでローマ帝国の滅亡のように
世紀の大曲解
自殺者の急増にわななく
大人たち
消沈のただ中にあるのは
虚空をつんざく激しい咆哮
手足は震え、方角も分からない
壊滅至極、武士道の盛衰
武士道とは死ぬことと見つけたり
死こそが救い
青二才の諦めの迅速さ
昆虫にも匹敵するその迅速さ
新緑の木立、激しい日光、蒼然の書物
消えた微笑、志半ばの余裕、超人の果て
超自我の検閲、むごたらしい不均衡
これらを社会に僕は見たのだ
妄動のアート活動
天衣無縫の少年の瑞々しさ
武士道はもう良い
率直で初々しい
恍惚と倦怠と安寧の中にこそ
死はあるべきなのだから
議論の諤々、嫌気がさすね
統合失調症の易疲労と体力の欠如
僕はもうこの世にいるべきでは
ないのかも知れない
武士の白眉は
僕にどう語りかける?
もはや前進叶わぬ我が肉体を見て
即座に呆れ、立ち去るのだろうか
僕は遠くを見る
楽しいではないか
浜辺の潮流を遡り
浜辺の果てにはアホウドリが
喚いている
固陋の愚鈍者が群れをなし
僕に戻れと怒号をあげるが
僕はもう戻らない
元の世界にはもう
帰らないのだ
5.アディオス!
憂愁の破砕、心の園には
今や僕に消えろと
のたまうのだ!
抑鬱の媚態にはほとほと愛想を尽かし
褐色の不安を惹起させる塵芥が
幾層もの分離と統合を経て
巨大な怪物となった
僕は既成概念にさらば
耄碌のひなびた枯れ木にさらば
のどかな憂鬱の人里にさらば
文化生活の機微とその台頭
うんざりだね、僕は淡白が!
あらゆる秩序が!
僕の影絵劇場は終わりだ!
舞台装置に大穴を穿ち
そのことごとくを破滅させ
漸く見えた拝跪の人材が
僕を次のフィールドと
コンフォートに連れてゆく
黄昏は僕の覚悟を引き立て
僕を照らしてゆく
夜の帳が土人の領域を
無関心に覆う刹那もすぐそこだ!
ヒステリックの咆哮をくれてやるぜ!
アディオス!
卑近の象徴はかくして屹立せし!
短編
春のある阿呆の短編
彼は短編を一つ執筆した
雑多な人間関係を
文章に落とし込む作業
彼にとっては日常の昇華が
重要な錬金術となる
一人の芸術家としての意匠が
現実を如何様にも解釈させ
それを拒絶されたり、激賞されたり
空中を舞うモノクロの芥の流体に
風情を見出す変態は
彼くらいである
まあ、彼が充足すれば
それで御の字である
鍛錬
破竹の勢いでやる気は天高く放られるが
それらは軒並み放物線を描き累々の黒歴史となる
21世紀の武人は統合失調症の汚染水に飲まれ
脂ぎった肉体で重力との闘争に奔走する
非業の骸は群れを成し
密輸の抑鬱を超常現象で召喚する
異教徒の商いは信仰の力学の
知略に終始している
大いなる勧誘、孤独の利用、心のハッキング
心の裡に情熱があれば瘦せ衰えた
木橋の欄干もいずれ善処されるだろう
円を描いて野心は解き放たれる
そして今日も
スイングの行進が男を逞しくする
鍛錬がまことの血と知性と肉体になる
かぼそい声で男に送られる
黄色い声援、彼は異性にモテるが
その自覚はないようだ
大抜擢
果実の芯は細くなり
弱々しい枝葉が患者の目を和ませる
和気藹々の患者たちの談話
様々な焦点或いは重点の
不可思議、奇想天外のエピソード
地獄の祭壇を潜り抜け
理知は月並みな世界から
錯乱した狂気のトンネルを抜けると
そこは大舞台であった
神からの大抜擢である
もとより信仰もあるものか
ふざけあい、揶揄しあった娑婆で
霧でも耕してみようか
数学の20世紀のあの宣言以来
リーマン幾何学上で時空は歪み
慣性は体系に組み込まれ
しかし蓋然性の不完全に
人々は憔悴し、疲弊したのだ
頑丈な人造の神、時代の寵児に大抜擢
セックスシンボルがおませな娘達を
赤面させる、彼は喜々の誉れに身を委ね
歴史の、絶対精神の人形となり
都合よく利用されるだろう
これは僻みか?錯綜した妄想の
厚顔たる吐露なのか?
わからない
しかし彼は昂然とは無縁そうに
強靭な笑顔を浮かべている
正義
清聴せよ、日は暮れた
可憐さが幅を利かせる文化の黎明
それこそ初老の男が待ち望んだ事であった
胡散な奴らが邪まな商売で
彼の純情を嘲弄しようとする
澄んだ泉の中に住むように
メルヘンチックな世界での長滞在
老朽車の車輪が軋むような音を
忌憚せず発し
熱をくらった小児のように
ただ煩悶する日も彼にはある
勝てば官軍とは
人口に膾炙した
忌々しい俗諺である
しかし正義は恣意で
狡猾な人間に
時折構成される
そこには公平のコンセプトはなく
感服させる間隙もなしに
我々の世界に根付いているのだ
ウイスキー
饗宴は架空のオペラとして
僕の脳裏を活気づける
幼少の時分には縁故のなかった
素晴らしい人々とも
酒でつながれる
酒池の奏功とは人間関係を伴い
飛躍させる事に少なからず本分がある
祝宴は華やかになり
その残滓と言う名の轍は
荘厳な宮殿となり僕の生活を彩る
言語の曲芸、崇高、カリスマ性、そんなものどうでも良いじゃないか
ウイスキーで知覚を歪ませ、自動筆記
一人で飲むアルコールも中々
素晴らしいではないか
憤怒と倦怠に囲まれていては息切れするだけだ
大人の嗜みは息抜きを絶えず工夫する事にあるのだ
大陸
乾坤の大事業は閉ざされた世界よりも
大陸の内に光速で伝播する
しかしネットのおかげで
若干その閉塞感が緩和した
それによる災難も有象の知識人たちによって
半ば興奮気味に発信させるメディア
最早このご時世、権威が大陸、政府が大陸
悪は打倒すべきなどと青二才な事を言うのではない
尤も僕は原始生活に踵を返す気もないが
すすり泣き、激情に流される自分にかぶりを振る男
吟遊の異邦人、財冨を肥やす観光業
その金はどこに入る?血税は?昇天したのか?
答えは明白だが誰も公言しない
大陸の奸計はそれほどまでに野蛮な所業
お辞儀
手当たり次第に悪罵を打擲させる悪漢ども
しかし最も理想郷に近い社会ではそんな不埒は皆無だ
高次の道徳感覚、清潔、秩序
彼らの美的感受性はそれらを余念なく築城させる
ありがとう
彼らはぺこりと頭を下げる、感謝の言葉が渾然となる
瞬く間にその国にあたたかい広がりが放流され
また大げさにも見えるお辞儀で相互に感謝しあう
そのネットワークが盤石なのだ
乾坤のこの人生、感謝という性善の篭絡
深遠な芸術はこうして放縦に発達してゆく
かといってアイロニカルに荒らす人々も不快にはならない
バイも、ホモも、レズも、黒人も、白人も、黄色人種も
多様性を蔑ろにしない本当の優しさが
そこにはあるのだ
明けても暮れても
哀惜交じりの長身美人の声が聞こえた時
僕は彼女を率先して助けよう
愛らしい素晴らしい存在を
明けても暮れても僕は色気違い
僕は鍛錬を続けよう
恋愛の為ならなおさらだ
秋のざわめきに僕の心が翻され
無害な破壊から、有機の愛へと発想は転換する
僕は価値のないクソ雑魚産業廃棄物
まあ愛される訳もないが
バラの思考
幾ら僕に目くじらを立てたり
隈無き計算に虚脱したとしても
僕は常にバラと二人場織
肉屋の園、僕の欲望を刺激する
跳梁する肉塊の倨傲
所詮君たちもDNAの秩序を
免じる事は不能であった
存在する事の滑稽さ、限定性
しかし精神のみは無限の恩寵を
受ける事も出来る
尤もそれは錯覚かも知れないが
バラの蕾が痺れを切らして
僕の生活に侵入し、装飾するまで
僕はそれまで待とう
家康が天下統一を待ったように
天下一品のバラの美の遊戯に
大衆を刮目させるのはひとえに
芸術的精神に依拠する事は確かだ
素面とスキゾフレニア
酒の揚々が消え、社会のごり押しを諾々と
生きる無為徒食の三下
この不快感は何だ?
幻聴は僕を貫通し
背後の整然をも揺さぶる
幻聴は日常茶飯事とは別個のものではない
僕は今日も服薬をする
そうして夜毎に死者を追い払うのだ
悪霊退散!
付和雷同
趣味も、異性の好みも、話題も、何もかも
少年の魂は付和雷同
滲み出る馬鹿さ加減
死と向き合っても
たちどころに改心する事すら出来ない
囚われの王子よ
懈怠
学生時代の僕は懈怠の日々を光陰の如く過ごしていた。統合失調症による苦悩が、僕の人生と向き合う準備を怠らせたのも幾分かそれに相関していたのを当時の僕は日常生活から見出した。僕は集中力の欠落により体験した殆どの業務を穏便に遂行する事が出来なかった。僕が仕事をまともにしようと思えばそれには並々ならぬ努力を要したのだ。学生時代、特に高校時代からの話なのだが。僕は向精神薬を服用するようになってからたちまち肥満になってしまった。僕は当時170㎝もない程の低身長であり、肥満でチビの僕は女性陣から軽んじられていた事は否めない。本当に辛酸の極みであった。薬は僕の幻聴や被害妄想などの諸症状を消す事はなかった。僕は高校を退学して人生と対峙する準備を周到にしようと思い通信制高校への転校を希望した。しかし僕は一度15歳の時に理工系の学校、殊に有能なエンジニアを養成していると幾分か自画自賛を見せていた高専という学校を退学した。僕が中学を卒業し、その後の進路を決めた時は非常に投げやりで破滅的な思考回路になっていたように思う。
妙に陶酔的な人生哲学で、僕は近いうちに絶望し、堕落し、そこから這い上がる事で高等な人間にならなければならないと思っていた。しかしそれは自分でもともすれば危険思想であると自覚していた。僕は中学三年目になる頃には学業に対し関心を急速に喪失した。丁度二年間、不良の腕白少年の汚名を返上しようと優等生への転身を遂げた後の燃え尽きであった。僕は勉強に甚だしい倦怠感と嫌悪感を抱くようになった。そこからは悲劇の登場人物を気取るべく太宰に象徴される無頼派の文学に傾倒し、耽読するようになった。
高専生活は一気に根暗になり、学業不振に苛まれ、もし環境が寸毫でも違えば遊蕩生活や薬物乱用に陥っていた事だろう。そうなれば僕の現在はなかった。なんやかんやあって、僕は懈怠の中で統合失調症になり、また当初のそれとは類型の違う懈怠に悩まされたという訳。
贅論
僕は昔に贅論という新たな分野を創始すべく学術論文を執筆した。その頃は僕が今のような文学活動を中断していた時期だ。僕はニュートンやガロア、ガウスのような偉大な数学者になりたかった。そう、贅論は数学上の僕の発見発明であった。しかし発想自体は類似のものは圏論などであったように思える。だがその性質と意義、用途について既存のものとは大きく乖離していたのでやはり贅論は僕の功績の一つだと思う。その数学上の贅論なる理論についてその数学的全貌を文学的表現で巧みに表現するという頑是なき行動を僕はしない。しかし贅論の着想の土壌にあったものはやはり複数の分野に跨って豊かな応用性を秘めているものである事を僕は確信している。
連続性にはしばしば贅肉にあたる秩序の不完全性がある。ゲーデルは20世紀に数学の命題には肯定も否定も出来ないものが存在する。そしてその完全性を証明する手段は存在しない事を論理学的に明瞭に証明した。連続性に介入する贅肉の存在は不完全性によるものだと僕は思う。似たような研究をカントールがしている。いわば無限の問題である。贅論はその体系が無限であればやはり無限となる。微小に分割したり、巨大に蓄積させたり、その操作には数学的アプローチが応用出来る。尤も完全に自由と言うよりは数学上の公理の許す限りではあるのだが。有限の贅論であれば処理は簡易なものである。
連続性、僕の思想について思うところを少し述べたが僕はこれを芸術に拡大できるのだという事も述べておきたい。贅肉の部分、戦争、紛争、悲劇、喜劇、私小説など。また無意識という自己の隠れた贅肉とも比喩すべき部分に注目すればその分離、統合、観念的意匠などによって操作する事が可能なのだ。道具は数多にある。数学の場合は四則演算、べき根、モジュラー形式などが主であるが。これが新たな文学的発見だとは思わない。しかし発想としては何度も人類史の中で何度も反芻され、その深遠さに畏怖する意味はあると思う。僕はそのような事を考えていたのである。2023年5月4日、B型作業所の勤務後の深夜、僕の自室にて。
低劣少年
僕は昔低劣な少年であった。僕はまるでゴミのように知能の低いチンパンジーであった。僕は健常者として流されるまま生きていた。そこには醜悪な差別もあり、媚び諂う気色の悪い、性根の腐った部分があった。僕は何故今差別者意識を抱いているのだろう。ともすれば僕が統合失調症になり、苦汁を味わい、学び、経験する事さえならなければ今頃僕も単調な愚民の一人になっていただろう。今の僕は幾人かからその個性と魅力を認められている。それは非常に恐悦な事ではあるのだが、その反面、僕は人間の薄っぺらさを、儚さを驚嘆せずにはいられないのだ。苦心惨憺?艱難辛苦?ふむ、それも結構だ。しかし人間の危うさを考慮しなければ、人間を丁重にかつ適切に扱う事、場合によっては裁く事は出来ない。狂人染みた曲芸師の如き吃驚仰天のバランス感覚を忘れてはいけない。僕たちは常識をアップデートしなければならない。バランス感覚の体得、それは丁度マイカーに走行の為のガソリンを注入するように難解を進化によって解剖、氷解させるよう努める事で原始性と先端性の弁証法的運動を行うのだ。
フレーム
急勾配のZ坂を
逆らうようにして
昇ってゆく
僕の近くを長身美人が
僕の鼻腔に彼女の芳香が
纏わりつく
晴れ渡るような清々しい感慨を
僕は享受する
艶やかな彼女の魅力を
語ろうとすれば
僕はたちどころに苦心するに
相違ない
僕が幼少期から育てた
見えるともないフレームが
複雑怪奇の回路を通して
現在我が官能と結びついた
変態の崇高さは芸術家によって
紐解かれなければならない
プログレッシブツイスト
僕は統合失調症の暗黒を目の当たりにしてきた。重度の障害で意思疎通が難航する者。度重なる奇行で周囲に千万をかける人。勿論僕の如き落ち着いた人もいた。僕は日々の生活の中で自分の芸術家としてのセールスポイント、逐一の精髄とは何かを長年じっくり吟味した。僕の狭窄した杓子定規では静かな絶望の深海の底に沈むだけだと危機感を抱いていた。そこで僕がある時まばゆいばかりの閃光を感じ取った。天啓である。僕は統合失調症当事者である。健常者ではなく、統合失調症患者としては高度な、したがってprogressiveなひねり、twistを銘打てば良いのではないかと。この芸術的様式を僕はプログレッシブツイストと命名した。これは別名観念派と僕が呼んで憚らないものである。
無論これまでの芸術家でこのような発想がなかった訳ではないだろう。既存の価値観を転回させ、新たな分野を生み出すのは、最近ではシュルレアリスムやキュビズム、その他万象の前衛芸術。似たような発想がない訳ではない。また統合失調症の芸術家もいない訳ではないし、その地獄的な症状を作品に落とし込んだ代物さえ存在する。哲学でも、数学でも、科学でも、この発想と無縁ではない。しかし僕は敢えて猛々しく、統合失調症の白眉ないしは英雄を装い、新たな芸術を創始する覚悟を決めたのである。このようにして芸術の現実はあるのだ。
熱狂の中で
南極の樹木、空の道
熱狂の中で剛勇の猛者は
その情熱を入道雲に潜ませ
青白い雨とする
諸季節の熱狂が詩人を慰撫し
彼は心を交え自然を言葉で愛撫する
空の物語も合金の如き魂で
魔術の様式で熱狂の連鎖を生み出す
幕末の死角は銃を携え
発砲の瞬間を虎視眈々と
待っていた
陶然とした洗濯の旅路へ
田辺
夏のざわめき、少年の心
未来や愛や自由や気高さの昂ぶりよ
田辺の港町は関西の曠野
季節を分断し
僕はあらゆる摂理を合点した
お利口な劣等生よ
田辺の幻影には悲喜こもごも
野球チームの腐敗と差別
少年期の邪悪の肥溜め
100度の巧妙
沸騰の汚水、残酷に淀ませた汚水
喪服をつけたいたいけな小娘
忌まわしい過去を僕はそっと
埋葬した
街の雑踏ですすり泣き
絶望しきった悲哀な青年
流浪の果てに遂に彼は
流体の愛を見出したのだ
不憫な子供たちだ
墓碑銘に刻むものは
何もない
落ち着かぬ理屈と科学の御代の語弊
我が境涯、統失の疾風怒濤
重々しい色彩の歪みで
時空は歪む、明るい休息を
僕はきっと信じていた
言語哲学
言葉とその写像
現実の幻惑な有りよう
媚薬を潜ませた自然哲学は
論破されたのか
脈々たる学問の歴史
発想の斬新さ、独創性の
競合社会の一切を僕は否定する
僕は諍いなんて御免被る
東洋
彷徨い歩いて
我が心を見つめる哲学
優しい心に優しい雨
科学の証明で悦に入り
固定するのはナンセンス
寄り集まった烏合の衆
亡霊さえも乱痴気騒ぎ
東洋のアニミズムは全ての存在に
門扉が開かれているべきだろう
荒々しい色彩の婉曲の横溢
黄昏
海の法螺貝の音が木霊する
僕達の旅ももう終わりだ
ねぐらに帰ろう、東洋の男よ
力と美と平和の御代の
その黄昏の中に溶けてゆこう
鍛錬を積み、食事を取り、熟睡し
一生の秩序は広大なようで
実は一日の盛衰に似ている
月の明かりも鮮明になってゆく
夜という狂気に溶けてゆこう、友よ
塵芥
演者と観衆との分離が
現代の厳めしい現実である
碌でもない偶像に専心したり
美貌に憧憬し、羨望したり
重宝しているようだな
かげがえのないようで
実は存在の奔流の中で感覚が鈍り
いつしか玩具として存在を扱う
芸術にしたり、主題に転じたり
人間の生活の皮相さと言えば惨憺たるものだ
塵芥の民、立ち直れない男
ごり押しのメディア、無能の政治家
腹心の友でさえ君を蔑ろにする
本当の友情とはどこにある
竹馬の友はどこにいる
屠殺の扉
内なる家畜を
強くなりたければ
食らえ
食らう為には
屠殺場が必要だ、血の代償が
エゴイズムだ
屠殺場への扉は
実生活の薄汚れた倦怠の中にも
いつでもどこでも設置されている
馬鹿馬鹿しい偽善だ
聖人君子なんて滅多にいない
煌めくダイヤモンドの投げ売り
耽美の精神性ですらその内奥に
残忍の轟音が眠っている
残忍は不可避の道程だ
憤怒
罵詈雑言の憤怒に震え
思わず我を見失う
憤怒の回廊
僕は中途の欄干に
身を授けよう
憤怒の追憶はもう埋葬しよう
哲学を学べば人生の
その可能性は
拡張される
汝、憤怒を忘れよ
AI
この世はAIの
うねりを伴い
碌でもない
雑踏の生々しさ
生と死の概念
人類文明の思考様式
その効果とは?
どこまで通用するのか
彗星の如き燃焼
人間の命の独自性
厳密性と科学の変換
じっくり眺めてみよう
答えは出るだろうか
海と番った太陽の黎明
心地よい息吹を
芸術は授ける、それが答えだ
第一級
先天性の才能と
幼年期の拙さ
目覚める獅子は
どこにでもいる
第一級の産物
高尚な魂の躍動
静謐な精神性の癒し
古今東西の食物、熱帯の森林、シベリアの監獄
もう昼だ、目覚めよ
酒は抜け、宴は終わった
今日も生業に精を出そう
第一級の仕事をしよう
検閲
僕は検閲する
我が魂を
我が道徳を
我が人生を
僕は検閲する
被害の中で
嫌悪の中で
侮蔑の中で
統合失調症は検閲する
正気の余剰を
女王の日々を
官能の芸術を
全体性
平易な言葉で語ろう
全体性の力学、普遍の美学を
一人の力はその大きさに伴い
全体性を染色する
日本の群島
アラビアの褐色美女
彫りの深い顔立ち
オリエンタルの深淵
美は全体を包摂し
錯綜する情報に威厳を与える
不良を取り繕っても
煌めく贈与の賜物
おでん
寒空、曇天、凍てつくような表情
温かい食材の飽和
人間ども
植物ども
古めかしい剛勇を維持し、乾杯さ
おでんに外道はないよ
僕は阿呆だ
しかしおでんは僕を罵倒しない
慈愛の食文化
食通の僥倖が爆発する
群れなす類稀なる宝石
纜を解いて
首輪を外して
食はわが友
舞い降りる生き物の巣
神社
聖地のテラス、神々の大道
熱く疼く草原の傍らに
厳かな神社あり
思わず立ち竦んだ僕がいる
彼の家では血が流れた
彼女の体内では神々の子が
空から生まれ、大地に育てられ
彼の相貌は宇宙を見据える
精神の豊饒さ
遣る瀬無い思いは
祈りを抱き
神社に捧ぐ、伝説の色
僕の若いころの惨めさは
もうどうでも良い
私小説の大道具
神聖さの付加
新進気鋭
画壇の気鋭、写実と抽象の渾然で
画家達の交流、てらてらした眼光
彼は鋭く人々を品定め
その評価は絶対ではない
音もなく舞い上がった
彼の視力を舞い上げる
赤と青と黄色の三食で
色彩は構造を満たす
苦悩
妄想は僕を執着させる
抑鬱は僕を貶める
幻聴は僕を惑わせる
易疲労は僕を失念させる
誇大は反発を煽る
関係は歪につながる
被害は無から生じる
罪障意識は生活の質を低下させる
体力は衰耗する
向精神薬は万能ではない
トラウマは恵まれたルックスでさえ
ゴミと等価に思わせる
ホラー
屈託ない笑顔や闊達な運動は
ホラーの魔力に苛まれ
たちまち植民地を失う
最大版図は強者どもが
夢のあと
井戸の中には累々の屍
美味な果実、典雅な花々
幽霊は場を支配し
生き物の狼狽を目指す
星眠る、広大な大空
獅子座は僕の星、長身美人は
獅子の体躯にすっぽり入る
という僕の逸脱したホラー
砕身
原子爆弾の投下
広島と長崎
軍部の一部の暴走か
大政翼賛会の全体性か
原子核の破壊
淀んだ不徳の瓦解
砕身の兵士たち
妻子を残して勇猛果敢に
空舞う一矢となり
退廃思想に緋を穿つ
青年の逞しさよ
その儚さよ
自動車
日本が誇る
一大産業
自動車産業
移動手段の横溢
インフラを伴って
京都
神社仏閣
伝統の雑踏
石橋を渡る自動車
風流心をくすぐる小径
京都は俄かに、不完全に
生き残るために
モダンを融合させねばならない
観光業と経済
資金の流入、技術の導入
日本列島を縦横に
かけめぐる
剣呑な日本の全体性
骨髄の矯正者
老人もこの地に助力してゆく
実験家のやつら
マイケルファラデーは最強
実際に目で見て
理論は現象に合わせる
実証された事柄
幾つかの条件を維持しつつ
宇宙の神秘
形而上の涅槃
実験家のその相貌は
エンジニアに近く
しかし人類の希望
大学
取り巻く硝子の大路
ささやく人の音
偏屈そうな教授
停滞と安寧を払拭すべく
人は解する、学びを大地を
価値と熱意を喪失し
先進も名声も擲つ若者の幻影
青い空はキャンパス総体の彩り
大きいメタルはまだ健在
未来の扉に、愚鈍を捨てていざ進め
和食
落ち着く味、母の味
レパートリーの中には
日本人の魂のねぐら
生きよ、食べよ
まだまだ健全な快楽は
潰えない
理想の母とその体
175㎝以上の長身美人
正確も僕と馬が合い
僕は彼女達を見て
うっとりするのだ
そして母のプロトタイプを
その理想の究極は
長身美人にこそある
愛くるしい彼女達の存在
長い四肢、爽やかなしたたかさ
性格に関わらず絶えず輝く
そして僕はそんな君達を
守りたい、愛でたいのだ
ひ弱で不良品の僕でも初めて
過程を持ちたいと思った
優しい心
自然を見て心洗われ
艱難を経て強くなり
動物を見て微笑を浮かべる
食事も会話も享楽しながら
友や恋人と懇意でいる
美を愛で、不完全をも愛し
人類みな兄弟
彼はそう確信しているのだ
つまらぬ諍いがあれば率先して諫め
愚にもつかない科学があれ率先して啓蒙する
効果的な閃きとその応用で
彼は愛され、認められている
そういう男になれたら良いな僕はと思う
マーベルヒーロー?悪のカリスマ?
下らないね、畜生
僕は乱雑な装飾よりも本質美を
誰よりも求める耽美の男
ドタバタ接吻
鋼のスプートニク!
銀の飛行機!
水晶の船!
長身の乙女が欲しい!
僕の飢餓よ!栄光よ!
統合失調症に剝奪された
この悲劇よ!
転がる、転がる、転がる石!
僕はボブディランなのか?
狂気沙汰の遊戯が脳髄で終われば
僕は目覚め、彼女の接吻に気づいたのだ!
ああ、なんて恍惚!なんて官能!
至福の理想郷ではないか!
超人
自己顕示を露にする
群れなす畜群
冷笑する彼もまた下等
何もないのだ、人には
超人にならなければ
午後の陽をなす術なく受けて
ペットボトルは劇場を創る
僕には戯曲がある
超人へと至る
崇高な戯曲の構想が
異次元の代数学
曠野に公理はなく
変数の豊饒
五次以上のシンメトリー
二転三転する愚民の主張
代数学は空前の巨像で
我が心を慄然とさせる
代数の追究、小手先の技巧
圧倒的な集中力に満ちた天才
文学的修辞の変換
あらゆる言辞のコンパイル
代数学は今日もしたたかに
複雑怪奇の雀躍だ
筋肉質
古色の秩序の凋落を男は予見した
彼はマッチョ、日々は鍛錬
したたかで脆弱な煩悩は悉く
なげうった
自己治癒も無論余念がない
彼は巨躯、筋肉質になった
まだまだ彼はマッチョの下っ端
しかし彼は野心を燃やすのだ
「いつかお前らは
僕の存在に感謝するよ」
筋肉質は新たな体系の血潮となり
目白押しの肉体の芸術となる
統合失調症
罵り喚く黄色人種が
不穏な河川を流れ
その言葉が僕の心に響く
レイシズムとルッキズムへの配慮
その潮流を昇ってゆこう
朽ちてゆく棒杭に
その身をつなぎ止め
大航海の試みは夢か現か
辺りには猛々しい麦畑
萎れかけた果樹園
統合失調症の懊悩の合間に
このようなしじまがれば
肉体の芯は快楽に咽び泣くだろう
唸りを発し、目覚めよ
戦いの後の陶酔が僕の主観を刹那に癒す
文才
僕は自分には文才がないと感じている。僕は中学時代に図書館でダンテの「神曲」を読み感動したのを鮮明に覚えている。僕は15歳で甚だしい魂の疲弊と自暴自棄を感じ、勉学を一切しなくなった。優等生だった僕は一気に劣等生に零落した。しかし僕の文学への傾倒はその現実の荒廃とは相反して立派に台頭していった。最初は芥川龍之介を読んだ。高専の教科書で羅生門を扱ったからだ。そして太宰、三島、ドストエフスキー、カミュ、川端と続いた。しかし当時の僕は文学に没頭していたというより僕自身の自尊心を文学によって補填し、維持する事を目的としていた。いわば鑑賞者としての純粋な耽溺というよりも私利私欲の為の下等な耽溺であった。
僕は小説や詩も書いた。しかし上手くいかない。ランボーは10代から20歳になるまでに立派な詩を書いた。三島は花ざかりの森を年少で執筆したという。僕は中学時代余りにも劣悪な出来栄え、ラノベの影響を受けた出来栄えの作文を書いて、教師から酷評の憂き目にあった事があるし、国語の成績も普通の学生にさえ劣る程であった。僕には文才はない事は明白であった。しかし文学そのものは愛好していた、と少なくとも僕は錯覚していた。
シャウト
糊口を凌ぐ
孤高のシンガー
バンドの威光は驕慢だ
ロックンロールの原石
君はイアンギランを知っているか?
僕の青春の激動と軒昂
ロックの洗礼は15歳の頃
僕の耳を刺激的なリフがつんざいた
碌でもない男が
音楽で人々を沸かす
大いなる資金は無尽蔵の
伝説を作った
僕はシャウトしたい気分さ
猛烈にね
僕の失意を、退廃を
虚無を、絶望を、厭世を
シャウトにして放り出したい
現実は儚くたゆたい
魂の躍動感は白眼視され
評価も理解もおぼつかない
その中でもマッチョな男は
依然として朗らかに微笑んでいるのだ
美形の女神
芸能人をも慄かせる
絶世の美貌
彼女は長身の女神
どうか、健やかで
幸せで、いてほしい
美は生け花である
女神の腹心は彼女の意向を
正確に斟酌し
その美を、したたかさで
一際剛人にさせる
彼女は元気だろうか
僕の初恋の相手
彼女と逢引なんて烏滸がましい
僕の七分のアガペーは漂う
三分のエロースを隷属させて
登山
僕は熱心な登山家である。高校時代は紆余があったとは言え山岳部に所属していた。プライベートでも一人で山に登ったりしたこともある。登山は実に良い。見事な眺望の写真を取れるし、疲労感や達成感などもひとしおだ。統合失調症になってからも僕は登った。体力や運動新鋭は顕著に衰えたので、中々しんどさは増したのだが、それでも楽しかった。僕は大学に入学した。しかし折しもコロナウイルスの襲来によって僕の登山意欲はものの見事に封殺されたという構図だ。
コロナの猛威は去った。僕はまた登山をしたい。登った後に温泉宿に宿泊する一人旅も相当甘美な代物である。僕は15歳から人並み以上に社交的な性格が一転して根暗になり、のみならず統合失調症の奇異で傍迷惑な症状により旧友はほぼ全てが立ち去り、新たな交友関係も上手く構築する事が出来ずにいる。まあそういう訳で本当は親しい間柄の人間と登山をしたいのだが身の程を弁えて僕は一人登山を所望しているのである。
稜線のあの冷涼にして改心させるような体験。そして新たな人間との出会い、アウトドアの食事。碌でもない症状なんて即座に忘れる。気分をリフレッシュさせるように僕は登山をする。一歩、また一歩と。登山は人生を饒舌に語っているように僕には思える。まるで共感覚の人間が言葉や音に色を感受するように僕も非言語の示唆に富む知恵を登山と言う自然との意思疎通により学ぶことが出来たのだ。もう嫌な記憶は忘れよう。トラウマの墓碑銘にはただこう記す。「好敵手、ここに眠る」と。
僕の運動神経は15歳を契機として非常に衰え、高校のスポーツテストでは学年の下から三番目だった。しかし僕は本当に運動神経が抜群だったのだよ。気違い染みた統失の悪魔は多くの人間の尊厳をこのようにして略奪するのである。そう、全ては統合失調症のせいなのだ。僕が自身の人生の準備が出来なかったのも。僕が低学歴なのも。人間関係の侘しさも。
険しい山を登る事。これは僕の定めである。僕は懊悩を、倦怠を、この一連の試みによって胡散霧消させるのである。この屹立する我が哲学。これは僕の唯一の、大仰な、スポーツ哲学なのである。
眼鏡
彼の肉眼は遺伝により近視だ
一時期は世界への嫌悪感により
彼はこの近視に身を委ねていた
しかし今ではそれは邪念だったと
危険思想だったと気づく
親が再三注意した目の酷使という
悪習慣、さしあたり彼の人生に
そのような規制は野暮なものに思えた
昨今、彼は大儀そうに眼をこすり
外した眼鏡をまたつけるようになった
自由の謳歌には必ずリスクがあり
遺伝の弊害は錯雑たる要因によって
交じり合い、化学反応を惹起させる
彼の近視の物語は一転して喜劇の芸術
人々を刺激する寓話の根源となった
量子力学
ガロア理論、四元数
統計学、確率論、線形代数
複数の分野が融合し
量子力学はミクロの振る舞いを
記述する
常識外れの振る舞いも
その分野では日常だ
宇宙をも部分的に
記述する聡いツール
眠りゆく原始の世代
科学の世界で不動の位置に鎮座する
その佇まい、理論に忠実で
気高い計算には情動などは介入しない
病的な抽象性の発露
貪り
健全な発達には健全な食事が
欠かせない、いわんや思春期も
そうである
少年時代は成功の準備期だ
荒々しい筆致で
少年は手記を書く
瑞々しさの芳香
僕は本を貪り読んだ
なかんずく文学を好んだ
統失発症以後は心理学や
精神医学である
僕には己の拙いフレームを
不乱に立派にする責務があったのだ
ひたむきに、ただひたむきにやった
僕は美味な食事を貪り食った
己に欲望に忠実で
育ち盛りの胃袋で
大食らいの異名をも
ほしいままにした
しかしあの頃のような苛烈な
食欲は今忽然と消えたのである
コピペ
彼は電脳人
言動も情報も一挙手一投足
コピペで出来ている
ショーシャンクの空にを見ても
ちっとも感動しない
現代人の一里塚
万雷の拍手を持って
自らの境涯を
針小に語りゆく
その長大な主張には
コピペの影響が見て取れる
ネットによる思考の拡張
ネットの弊害、悲観の伝播
公明にやってゆこうか
コピペはなしでさ
自分の意思を持て
自分の哲学を持て
自分の個性を持て
後生だから
後生だから助けておくれよ
僕はもう駄目になったんだ
悩み事があるんだ
君はその道のプロだろ?
解決法の類例だってある筈
ハリーポッターみたいに
魔法でどこかに行けたらな
ほうきに跨り
自由の世界に富んでゆく
新緑の草原、雄大な森林
ダーウィンの進化論の
その構築は
科学研究の模範だった
膨大なデータで帰納的に記述
君も科学で僕を癒してよ
慈愛の霧雨
艶やかな長身美人
僕は何とか熱い意気地で
乗り越えたよ
でも虚脱感が酷くてさあ
デフォルメ
ピカソのあのまばゆいキュビズム
理論の混濁、シュルレアリスム
色彩の豊饒、印象派
ヘタウマの頂点、素朴派
デフォルメの信条は
芸術的価値への偏重にこそある
日本のアニメ、漫画
独創的な表現と世界観
しかし実写映画は
真の実力者が勝つシステムではない
厳選させ、洗練させよ
優勝劣敗のこの世の中だ
感性的陶酔
愚にもつかぬ人に
依存するのは辞めようか
それよりも抒情に耽ろう
自然の美しさ、気高さ
我田引水だが芸術を通して
良好な陶酔で世界を創ろう
他人に阿諛する事もしなくて良い
陶酔を構造で包んでゆこう
物見遊山に出かけよう
美術館や博物館に
君の恋人を連れてゆこう
美というしたたかさで彼女を癒そう
感性のTNT
爆発寸前さ、僕の魂
失恋し、罵倒され、足蹴にされた
好きだった女性に!
僕も童貞のご多分に漏れず
酷く傷ついたのだ!
肺臓が焼けるような憤怒
僕は激怒した!
爆発狂
芸術は爆発だ、とは名高い岡本太郎の警句である。色々と芸術家として作品を良くしようと逡巡したりしている時も僕にはある。岡本太郎にも芸術的懊悩とは縁故のない存在ではなかっただろう。太陽の塔、非常に生命力漂う諸作品。僕は彼のファンではないが、彼の哲学の重要性はひしと感じている。無論似たような思想を持っている芸術家は履いて捨てる程いるだろう。それでも日本が誇る偉人として彼を欠かすことは出来ない。彼は常識を壊滅させたかった。彼は爆発狂だった。しかしパラダイムそのものを爆発させる事は彼には出来ず、無論そのような事は同調圧力や集団主義、出る杭を打つ習慣の根付いた閉塞的な日本に住む日本人は許さないだろう。爆発を阻む物体。それが現代日本人の性向である。
バイアス
統合失調症の症状か、はたまた青年期にありがちな事なのか。僕の認知は歪んでいる。バイアスがかかっているのだ。自分の印象が皆目見当もつかなかったり、幻聴に真正面から向き合って絶望したり、あり得ない妄想で数知れぬ暴挙に至った事もある。僕は発達障害ではないが、統合失調症の脳髄への影響によって一挙一動が発達障害っぽくなった事は事実である。それでしばしば医療従事者から発達障害の疑いをかけられるのだが、それは先天性の障害である。後天的に発達障害になるだなんて事はあり得ない。高校時代の主治医も僕は発達障害ではないと、慧眼の医師に備わった圧倒的な嗅覚で感じ取った。しかしこの発達障害の繁多性、やらない口実の汎用性は由々しきものである。発達障害なんて本当は不名誉な代物なのに、2Eとか偉人とかの一部の症例を取り沙汰してまるで神の寵児のような印象を膾炙させる人間も多い。これもまたバイアスか。
芭蕉の句
全国各地を、弟子を引き連れ行脚した松尾芭蕉。彼の俳句には日本の伝統的な美学が詰まっているらしい。日本の文化人と言えば江戸時代の歌舞伎や春画、浮世絵、文学。もっと遡行すれば平安時代の源氏物語などの分野までかなり多い。僕は平安期や鎌倉期などの文化的作品を国語の古文の授業で読まされた。古文ではただただ圧倒されるだけで肝心の中身を知るのに一苦労である。教師も教師で古文の文法やら語彙やらを熱心に学生に教えるが、その実文学的素養については野放しにしていた。まずは古典も現代文学も、内容の面白さを伝える事が国民の文化に対する愛に繋がるのに、それを度外視して、単に社会の歯車を増やす目論見で教育を行う。少子高齢化も爆発的に進行していっている。
まあでもそんな社会情勢などはともかくとして今芭蕉の句を読んでみると、僕も全国を行脚して詩作に耽りたいと思うようになるのである。文学という選択肢はこの多くのコンテンツの無秩序な反乱が当然の如き現代日本社会において中々高尚な事のように先入観を感じてしまうかも知れない。しかし芭蕉の句のように文章から何か尊いものを感じさせるコンテンツは人の心を癒し、勇気づけてくれるのだ。
緑一色
僕は世界遺産を歩いたことが何度もある。その内の一つが熊野古道である。あの煩わしい真夏の日々。僕は統合失調症の治癒として母親主導で熊野古道に出かけた。緑の横溢、冷涼な空気、思い出話に耽る僕達。僕は何だか心があたたかくなった。幻聴や被害妄想、のみならず認知機能障害や陰性症状も止んではいなかったが僕は僅かにそれらの苦悩を緑の中で忘れる事が出来たのである。麻雀でも緑の索子のみで形成された役満で緑一色とあった。僕のこの経験は、その時点を境に不滅となった役満の思い出である。
警句
20歳過ぎればただの人とは古来より口々に言われてきた警句である。才気溢れる者であってもそれは単に早熟なだけで成人以後にも天才である事はないのだという意味だ。僕の周囲にも小学生で頗る勉強の出来た少年少女がいたり、大人も感服するような高い完成度の文章を書いたりする少年少女が、やはりいた。僕は彼らを心中で拝跪していた。まるで自分とは次元の異なる存在であるかのように。僕は学校の枠にはまらない人間であった。中学時代は猫を被っていたが、高校時代以降はまさに不良の発露である。僕は文学的な探検をしていた。フランスの象徴派の詩人にランボーという豪傑がいる。彼は数学者で言えばガロアのような早熟な才能を発揮した。もし真の天才がいたとすれば、彼らは至高点を極めればランボーのようにその世界を撤退しようとする筈だと僕は思う。早熟の大抵のケースは冒頭の警句のような道筋を辿り、類稀な、卓越したケースとしてランボーやガロアのような例が燦然と佇んでいるという歴史の有り様。
クソ雑魚カス土人
僕の頭部が揺れる
どうやら僕は叩かれたらしい
激しい閃光、学生の嘲笑
I kill you
I kill you
I kill you
このクソ雑魚の、カス土人め
明らかに過度な暴行
自尊心の粗い担保
スクールカウンセラーよ
君には見る目がないようだ
書籍出版も畢竟単なるお遊戯会
嫉妬に狂った持たざる者
不細工として僕を位置づけ
僕の人生を破壊したい辛辣な眼光
障害への無配慮、差別
尤もらしい弁解でカス土人は
どや顔だ、僕は爆笑寸前だぜ
数学
未来永劫の証明の威光
夥しい定理、自然科学の骨子
論理的曲芸と閃きの群青
数学者たちの熾烈な戦いが
歴史を塗り替える
数学の夜明け
文化の編纂、学者の招聘
公理の類推
20世紀、新たな基礎の確立
ユークリッドは何を思う?
抽象化が進み、したり顔で計算をする男
独創はないが緻密はある
天才が、そのような凝固した秩序に
革命を起こす
その崇高、その劇画、その色合い
天才は必ず理解される
生前か死後かはともかくとして
先駆的な存在に時代が追いつき
世界の自由を広げてゆく
フロンティア開拓の如く
科学
この猛々しい科学の御代
難解な計算式
他を圧倒する計算式で
科学は紐解かれるのか
先人たちを踏襲するのだ!
データから結論を演繹したり
雨降りの中、鮮やかに演繹したり
四則演算で日常を過ごしたり
モジュラー形式で対称性をリサーチしたり
方程式では人の心は掴めない
宇宙の神秘を探る統一場
メンデルの法則のように
実は明快な法則性が万象に追従している
甚だしいインテリの熱量の爆発
人生をかけた、男の世界
古代哲学、第一次近代哲学
紀元前のソクラテス、その可愛げのない存在
知性で生活を照らし、正鵠を射る
万象の根源を探る自然哲学
万物流転、人間という尺度、微小な粒の凝集
プラトンの注釈と対話篇の脈絡が今も
デカルトの二元論、面白げのない構造
我思う、故に我あり、としたり顔
パスカルは思索に耽り、人間の崇高を探求
人間は考える葦である、としたり顔
大陸とイギリスの認識論の相違
第二次近代哲学
カントの認識論の統一
アプリオリとアポステリオリ
時間と空間のスキーム
美と道徳への弛みない研究
形而上の世界を夢む
ヘーゲルの弁証法的運動
議論の相克をアウフヘーベン
続くマルクスの社会論
転化の法則、労働者と社会
その毅然とした眼差し
写真嫌いの弁
僕は写真が嫌いだ。自分の顔立ちがあまり良いものではないからと言うのがその理由だ。僕のような冴えない奴が華やかな顔立ちの人々と写真を撮るとなれば僕は恐縮で頭がおかしくなりそうになる。自撮りはした事はあるがそれは実証の意味であり、やはり写真にはどこか危険な香りを感じ取っていた。尤も、それは僕の偏見や先入観を端緒とするものであろう。
現代哲学
ヴィトゲンシュタインの言語論的転回
ハイデガーの存在と時間
目も眩むようなその怒涛
倫理学の一般化、アメリカ哲学
政治の真剣な哲学化
ナチスドイツの残滓
レヴィナス、そして多くの英傑
僕の母校の教授達、怪傑
膨大な論文の精査と目くじら
学問の血脈とその因縁
プロテイン
筋トレ民のお気に入り、プロテイン。彼らは猪突猛進にボディメイクをする。僕の母親も小柄な体躯だがプロテインを飲んで、ジムに通って汗を流している。自分なりに努力をして自信をつけるのは非常に殊勝な事である。僕は思わず感心してしまう。今、かなりジムでの運動が定着している時代である。
屠殺の根源
僕の魂の作品はこれにて終了である。僕は自分自身に跋扈する家畜を殺し、食らい、生まれ変わろうとした。僕は統合失調症ではあるが、これくらいの妄想はベテランの統失患者である僕にとっては造作もない事である。屠殺は成長の一里塚である。僕はそのことを重々理解している。もし一般人が大儀そうに、渋々と、否応なく、この死滅に至る行為を行ったとしても、僕はそれを尻目に、しかし頓着せず、逸脱者として行動を起こしてゆくのである。懺悔者、殉教者、狂人、パラノイア。僕は多くの狂人を精神病棟で観察していた。あの頃は文学的にその経験を発散しようとはしなかったが、今になって僕は自分自身を戯画的に、エモーショナルに表現する事でようやくあの齢20歳の赤川青年に救済をもたらしたのである。僕の人生は熱狂に支配されているのが大部分であり、その熱狂は悲観や、軒昂などが主成分となっているのだが。
炎のように屠殺せよ。生きる為に屠殺せよ。しかしその中に残虐な心を抱き、支配されてはいけない。筒井康隆は人間の醜悪な、残酷な部分を遺憾なく、巧みに表現する事で人間の全貌を表現するという企図でその作品の主題を、物語のやや興奮気味の語り口で克明に掲示した。屠殺の美学も同じ事である。僕は詩の世界でこれを表現しようとした。そしてそれは成就された。今思えば、このような簡潔明瞭な成就はまさに劇的である。僕の高校時代の主治医は統合失調症にしろ、健常者にしろ、劇的に変化する事はないと断言した。しかし今の僕からすれば、それは近視眼的誤謬である。僕はその真実に逢着した。
僕達の屠殺の根源にはこのような詩的発散が十分に可能である事を僕は示した。今後も日本人の中に傑出した才能と、獰猛な才能で新たな平野に進出する者も矢継ぎ早に出てくるであろう。精神世界と同じで僕達の前途はまだまだ長い。如何に科学技術で長足の進歩を遂げても、如何に主観的に人類の仕事に恍惚したとしても、その先には必ずまだ見ぬ居丈高な態度を醸した未来が佇立しているのだ。
人々は通常夜には仰臥し、睡眠を取る。その中で芸術の未来は聡明な芸術家の頭脳を駆け巡るのだ。しかしブルーライトやらスマホやらパソコンやらで生活態度の律動を貫き、瓦解させるケースも少なくはない。やはり現代人の生活上の課題とは自然の流れを如何に維持しつつ、科学技術やイノベーションの恩恵を享受し、享楽し、発展させられるかにかかっていると思う。
貪婪な青年のご多分に漏れず、僕もまた恋愛をした。僕の半生は非常に恋多きものであった。18歳の北欧から来た、艶やかで、神聖な、長身の白人美女に初恋をして、僕の恋路は始まった。僕の詩的道程にはこのような恋の激しい情動をもささやかに包含させたものである。それは専ら長身美人崇拝だの、多淫な表現による愛の力学だのが主であった。僕は長身美人以外を恋愛対象として、女としては見ていない、歯牙にもかけないのである。僕は10代後半になるまでそもそも女性に愛着を持たなかった。僕は同性と馬鹿話を話したり、馬鹿をやったりする方が遥かに楽しかった。10代後半、文学的洗練を目指して僕は母性とは何かをぼんやりと考察するようになった。僕の幸福、細君に相応しい存在とは何か。本当に平穏に、安心する相手とは誰か。僕はそう考えている内に、長身美人に惹かれるようになった。これは理論的な骨格の発露というより僕の感性が涵養された結果であった。
このような体験や統失の生活における甚だしい迫害、痛ましい日々によって僕は成長した事は疑いの余地はない。僕の統失は、現代に生きる精神障害者の最たる例だと僕は勝手に解釈している。現代日本人の特徴は、自分がその他大勢であるという意識の過剰、物語の主人公であるという意識の欠落にある。この対照的な関係によって日本国内の文化生活は幅を利かせているのである。僕は日本人を正確に批評出来ていないかも知れない。しかし読者諸氏は、知悉の御仁は、僕のこれまでの言及が独立独歩の、不断の代物である事を俄かに感じた事だろう。
僕は先駆的な文学的巨匠を見て、その中に確かに伝達の崇高さを知った。不良と文学が堅固に結びついた僕のあの少年および青年期。またエンタメの独自の考察を通じて人間の言行不一致を僕は楽しみ、発明した。人々を嘲弄させる諧謔がその精神遅滞ぶりに含まれている事を僕は知った。それは芸術だが、化学でもあった。
まあ色々と枝葉末節が過ぎたがこれにて終了である。赤川凌我!僕は遂に自我を凌ぎ、暗喩的な屠殺を通じて生まれ変わったのだ!
屠殺の根源 赤川凌我 @ryogam85
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます