幸せのよつば

 ツツジの並木に花が咲き、白いクモの巣が太陽にあたってキラキラと輝く頃、まりあちゃんと、かよこちゃんは外へお出かけに行きました。

「四つ葉のクローバーを見つけよう。」

「そうしよう!」

 初夏の眩しい日差しが、二人を照らしています。暖かくなって、元気いっぱいに若葉を伸ばす植物たちの喜びが伝わってきて、二人はニコニコ笑顔になりました。

 近くの芝生にしゃがみ込み、クローバーの葉っぱをなでていきます。

 みつば、みつば、みつば、よつば————

「あった!」

と、かよこちゃんが喜びの声を上げました。

「ほんとだ。」

かよこの小さな手のひらの中に、四つ葉がちょこんと顔を出しています。

 まりあちゃんも嬉しくなって、その小さな四つ葉を優しく眺めました。

 それから手元を見てみると、いつの間にかまりあちゃんの手の中にも、四つ葉が一輪咲いています。

 よく見ると、あそこにも、ここにも、よつば————

 二人は驚きました。幸せの四つ葉の近くに、他の四つ葉もあるよと聞いたことはあります。でも、こんな近くにあったなんて……。

 三十を過ぎたあたりで、二人は数えるのをやめました。数えなくても幸せに囲まれていることを知ったからです。

 四つ葉はどうして生まれるのでしょうか。意外なことに、誰にも邪魔されない所には生まれず、人や動物に踏まれたり、刈り取られたりする所によく出てくるそうです。

 大きな生き物に押し潰されることは、彼らにとってつらいことでしょう。それでもめげずに「もう一枚!」と葉を伸ばした心持ちが、彼ら四つ葉の証なのです。

 今日も精一杯に葉を広げたクローバーたちが、お天道さまにご挨拶をしています。

「こんにちは。いつもありがとう。」

お天道さまもパァと輝いてご挨拶。

 どうやら幸せはすぐそこにあるようです。

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