最終話:美しい調和

日々の制作活動とライブの中で、悠斗と彩音は音楽の魔法を紡ぎ続けていた。彼らの歌は人々の心を動かし、感動させる力を持っていた。しかし、同時に彼ら自身の心も苦しめるものでもあった。


時が経ち、彩音と彼女の婚約者は結婚を控えていた。彼女は悠斗に対して感謝の気持ちを胸に抱えていたが、同時に罪悪感も抱えていた。彼女は自分が悠斗に惹かれていることを変えることができなかった。それでも、彩音は彼の傍にいることが幸せだと感じていた。


悠斗もまた、彩音の幸せを願いながらも、彼女との距離を保とうとする苦しい日々を送っていた。彼は彩音が幸せならば、自分もそれで良いと思っていたが、心の奥底では彼女と共に歩むことを望んでいた。


そして、ある晩、二人は思いがけない出来事に直面した。ライブ後の打ち上げの席で、彩音の婚約者が予期せぬ言葉を口にしたのだ。


「彩音、実は僕、音楽活動を辞めることに決めたんだ。君の歌声が美しく輝くためには、僕の存在が邪魔をしているように感じてね。だから、君が自由に音楽を追求できるように、僕は君から離れることにしたんだ。」


彩音と悠斗は驚きと同時に動揺を隠せなかった。彩音の婚約者が自らの幸せを犠牲にしてでも、彩音の音楽のために道を開いてくれたのだ。彩音は涙を流しながら、彼に感謝の言葉を伝えた。


「ありがとう、君のために…。でも、本当に君がいなくても私の歌は成り立つのかしら。」


婚約者は微笑みながら答えた。


「大丈夫だよ、彩音。君は素晴らしい歌声を持っている。きっと君の音楽は輝き続けるさ。そして、僕は君を応援するよ。」


その後、彩音の婚約者は音楽業界から身を引いた。彼は新たな道を歩み始め、彩音とは友人として関係を築いていった。彩音は自分の歌をさらに高めるために、悠斗と共に新しい音楽の世界へ飛び込んでいった。


二人はプロデューサーとアーティストの枠を超えて、心から響き合うパートナーとして音楽活動を共にするようになった。彼らの歌声は美しく調和し、その歌は聴く者の心に深く刻まれた。


しかし、彩音と悠斗の関係は複雑なものでもあった。彩音は自分が悠斗に惹かれていることを自覚していたが、同時に彼女の婚約者への感謝と複雑な気持ちも抱えていた。悠斗もまた、彩音への想いを秘めつつも、彼女の幸せを最優先に考えていた。


二人は時折深夜のスタジオで一緒に過ごすことがあった。そのときだけは、二人の距離が一番近くなる瞬間だった。しかし、彩音は自分の感情に蓋をして、悠斗との時間を大切にしながらも、距離を保とうとしていた。


二人は心の奥底で互いを想い合いながらも、彼女の選んだ道を尊重し、音楽という純粋な愛に共鳴しながら進んでいったのであった。

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《響き合うメロディ》〜歌と恋の調べ〜 O.K @kenken1111

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