第2話 「侯爵令嬢&感謝感激」
「いやはや、なんとお礼を申し上げれば良いか。いくら感謝しても仕切れません」
言いながら、
「いや、そんな大したことしてないっすよー」
俺は表面上なんでもないことのように振る舞いつつ、内心で黒い腹を期待にふくらませる。
ここは城ではなく屋敷だが、その内装はエリザベス家のそれなんか足元にも及ばないようなはるか上のものだった。
天井から吊るされたクリスタルのシャンデリアに、隙間なく敷き詰められた歩きやすい硬質な
ぺこぺこ頭を下げ続ける執事の後ろには透き通った巨大な窓。
どれも超絶技巧によって完成された一級品だろう。
「私からも礼を言わせてくれ。ルティアを盗賊たちから守ってくれて、本当にありがとう」
執事のおじいさんに続いて感謝の言葉を言ってきたのは、明るい茶色のひげを生やした
今は黒革の
ルティアというのは俺が助けた例の女の子のことだ。
そう、なんと彼女は
「ルティアから話は聞いているよ。なんでも、屈強な男達を太陽の力で倒したそうじゃないか。相当強力なスキルをお持ちのようだ」
あの子、話を盛りすぎだ。
いくら
冗談抜きで俺を極刑に処すことだってできるだろうし。
「いえ、とんでもございません。俺……私が使ったのは『
おそるおそる侯爵様の顔色をうかがうと、目を丸くして驚いていた。怒られるかと身構えていると、飛び出してきたのは予想外の言葉だった。
「なんと! あなた様は『
座ったまま頭を下げる侯爵様に俺は慌てて説明する。
「あぁっ、頭をお上げください! 確かに私の家系は少し前まで貴族でしたが、今は没落しております。一般階級と変わりありませんよ」
すると侯爵様は少し機嫌を
「あなた様はご自分の力を随分と過小評価されているようだ。
私はこう見えても暗黒の時代を生きた者。大魔王アンディルによって漆黒の闇に包まれた世界に復活の光をもたらしたのも、『
侯爵様が言っているのは暗黒魔法の闇をも
確か《
対して俺は誰でもなれる見習い
「それはそうなのですが、私程度のスキルレベルではそのようなことは不可能でございます。
今回盗賊達を追い払えたのも偶然です。本来の私の実力は一般階級と変わりありません。現についさっきパーティーを追放されたばかりでして……」
「そうでしたか。よほど見る目のないパーティーだったのでしょうな。
あなた様ほどの適性ならば、スキルポイントを『
パーティーを追放されたのはどう考えても役に立たないからだ。
俺のスキルレベルでは『
「さすがにそのようなことはないと思われます。それに私の場合ポイントのほとんどを『
ビルドというのはざっくり言うとスキルツリーの伸ばし方のことだ。
防御に特化するならディフェンスビルド、攻撃ならアタックビルドという具合に適性に合わせてポイントの割り振り方を前もって決めている場合がほとんどなのだ。
「そうでしたか、これは失礼。察するに、『
どうしよう、めちゃくちゃ言いづらい。うらむぞルティア!
「……大変申し上げにくいのですが、私は『
「なんと! では適性ではないスキルにポイントを割り振っていらっしゃるのですか?」
気まずさを感じつつ俺がうなずくと、侯爵様が執事に目配せをした。
まずいか? 極刑か?
そわそわしていると、白髪の執事が一歩前に出て俺の目を見るなり告げる。
「イシュ・カーナード様。リーベルン侯爵の
ごくりと固い唾を飲み込む。
終わった。短い人生だった。
まさか侯爵令嬢助けたら極刑なんて展開誰が思いつくよ?
「──スキルリセットアイテムを
「はぇ?」
続く言葉に、俺は
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます