私のオートガイネフィリア考

Rico

(1)「オートガイネフィリア」とは何か?

心理学用語に「オートガイネフィリア」という言葉があります。

よく女装愛好家の間で「AG」というふうに略されて呼ばれていますが、簡単に言えば、「女装した自分に性的興奮する人」、「自分の女らしさに性的興奮する人」です。

ちなみにウィキペディアでは、次のように説明されています。

「オートガイネフィリア(Autogynephilia)とは、男性が自身を女性だと思うことにより性的興奮するパラフィリアの一種。」

「パラフィリア」とは、「性的倒錯」と訳されます。簡単に言えば、「変態」ということです。

しかし、私には、この解釈に誤解と偏見があるように思えてなりません。

もともと、「オートガイネフィリア」とは、1989年の性科学者Blanchardの研究論文で、性転換者がどちらの性を好きになるか、という行動モデルを説明するために定義された用語です。つまり、この論文では性的倒錯性の議論を展開しているわけではありません。論文を見る限り、自己の性別に違和感を持つ男性の中で、女性化した自己イメージにより性的興奮する人たちと、そうでないない人たちに見られる傾向の差を、統計的データで無機質に分析しているだけのようです。この言葉自体に本来独自の価値づけはありません。

AG、イコール変質者という図式は、世間の無理解と偏見が作り出したもののように思えます。さらに言えば、AGは、「LGBT」の側からも一線を引かれる傾向があるようです。誤解を恐れずに言えば、LGBTに属する、女性として生きる性同一性障害の人たちからは、「あんな変態たちと一緒にしないで」と思われがちです。AGはG(ゲイ)やB(バイセクシャル)を兼ねていないかぎり、それだけではLGBTの仲間にも入れてもらえません。私見を言わせていただければ、性同一性障害とAGの間には本質的には違いはないのですが(これについては、また、(6)補足でお話しします)。

たしかに、昨今、性自認のみにもとづいて生来の女性専用スペースに入りたいなどという、一部の行き過ぎた権利主張により、AGがネガティブなイメージを持たれていることは事実です。

しかし、大多数のAGは、公序良俗を尊重する良識人ですし、ましてや、公序良俗に反してまで欲望を満たそうとは思っていません。そんなことをすれば取り返しのつかない大きな代償を支払うことになるのは、AGであれば誰でも理解しています。

私は、AGがそれほどおかしな存在ではないということを次章以降申し上げていきたいと思います。

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