第24話 ルンゲ 再計算

 正確に言えば、オルゴールではありませんが、王様の音楽自動演奏機械の製作候補に晴れて選ばれたルンゲですが、いざ机の前で王様の望むようなオートマタを作るには、どれほどの材料と人手がかかるかを改めて計算することとしました。

 人間大のオートマタに本物の楽器を弾かせるのが、一番ですが、それでは、時間とお金がかかりすぎます。オートマタの大きさは一フット(三〇センチ)にして最低でも一五体は必要です。

 その部品はと計算していくと、とほうもない数になりました。精密に動くからこそオートマタなので、いい加減に製造された部品では役にたちません。その部品を製造するにも、また、その部品からオートマタを組み立てるにも、かなりの数の熟練した職人が必要です。

 それほどの職人が確保できたとしても、長い間、工房にとどめることはできません。時計やオルゴールを作って欲しい、修理してほしいという要望は国中にあるからです。

 材料費、加工費、賃金、住居の手当などを考えると、恐ろしいほどの金額が必要になります。ルンゲは、改めて、あの大蔵大臣の言ったことは正しかったと思わざるをえませんでした。

 どうすれば安く作れるのかと考えると、歯車やカムの大きさを統一して、歯車は歯車作り専門の工房で、カムはカム専門の工房で制作すればよいとは、分かります。

 しかし、専門の工房が成り立つには、それだけの注文が必要です。オートマタだけでは、専門の工房を維持できません。産業が発達して、色々な分野で、歯車が必要になる時代が来れば、専門の工房あるいは工場ができ、大量に制作するので、部品1つの値段はかなり安くなるでしょう。

 ルンゲの夢をかなえるには、もう少し時間が必要でした。

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