【エアプコメから始まるダンジョン配信】~ダンジョンエアプの僕がコメントしたら、なぜか底辺ダンジョン配信者の美少女がダンジョン踏破してバズっちゃったんですけど…!?~
ねくろん@カクヨム
初めてのコメント
「あ、あの……」
画面の向こうから、自信なさげな小さな声が聞こえる。
アサヒは、自分が見ている『ダンジョン配信』の画面に目を凝らした。
『ダンジョン配信』とは、ダンジョンに挑戦する探索者たちが、自分の冒険をインターネットを通して生中継するものだ。
ダンジョンとは、世界各地に突如出現した謎の迷宮だ。
その中には魔物や宝物が存在する。
そのダンジョンを、配信者が命をかけて冒険するダンジョン配信は、そのスリルと驚きに満ちた内容から、多くの人々に人気がある。
しかし、アサヒが今見ている配信は、人気とは
画面に映っているのは、黒髪のロングヘアーをポニーテールに結んだ女の子だ。
彼女は白いシャツに黒のスカートという学生服を着ており、短い剣と盾を持っている。
彼女の名前は「ヨミ」というらしい。
配信のタイトルを見ると『ダンジョン配信始めます#01』となっている。
どうやら、ダンジョン配信を始めたばかりの新人みたいだ。
彼女は今、ダンジョンの一階層目にいるようだったが、その様子はどことなくぎこちなかった。
「えっと……今日は初めてのダンジョン配信です。よろしくお願いします」
彼女はカメラに向かって、ぎこちない笑顔を見せたが、その笑顔はすぐに
「コメント……ない……」
彼女は画面下部に表示されるコメント欄を見て、がっかりしたように肩を落として呟いた。
アサヒもコメント欄を見てみる。確かに何も書かれていなかった。
この配信は、自分以外にほとんど視聴者もおらず、コメントもない。
まさに無名の配信だった。
アサヒがなぜ、こんな過疎配信を見ているのか?
それは彼の性格に理由があった。
彼は人に話しかける時、いろんな言葉や感情が一気に浮かんでしまう。
そしてそれを一気に喋るものだから、アサヒと話す者は、誰もが「何を言っているかわからない」と言って、目の間から去ってしまうのだ。
そのため、彼は今年で15歳になるが、まともに話せる友達がいなかった。
そして、友達がいないということは、ダンジョンに入る時、パーティを組む相手もいないということだ。
つまり、彼は一度もダンジョンに入ったことがない。
それどころか、剣を握ったこともなかった。
アサヒの同級生には、ダンジョンに入ってモンスターを倒し、宝物を持ち帰った者すらいる。しかし、アサヒはそれを遠巻きに見ることしか出来ない。
彼がダンジョンに関わる事ができるのは、ダンジョン配信を通してだけだ。しかし、アサヒは人気配信者のダンジョン配信を見るのは好きではなかった。
人気のある配信というのは、すでに「雰囲気」というものが出来ている。うかつにコメントすると、先に視聴している者と、ケンカになることが多い。
なので、アサヒはそういった人気の配信では、コメントをすることもできず、ただ黙って見ているだけだった。
彼らのしている事を見ているのに、自分はそれに言葉ですら
だから、彼は人気のあるダンジョン配信が見れなかった。
人がたくさんいるのに、かえって孤独になるから。
そんなアサヒが見つけたのが、この無名のダンジョン配信だった。
この配信ではコメントも少ない、と言うか無い。
視聴者同士で喧嘩することもない、というか喧嘩する相手がいない。
そんな配信だったからだろうか。
アサヒは何となく彼女の配信に惹かれて、見続けている。
「……うぅ、どうしよう……」
ヨミは画面に向かって眉を下げ、困ったように言った。
彼女はダンジョンの一階層目にいる。
だというのに、まだ一匹もモンスターと戦っていなかった。
(この子、どうやら、ダンジョンのことをあまり知らないのかな?)
ヨミは、ダンジョンの入り口から入って、少し歩いただけだ。
だが、そこで早くも道に迷ってしまっていたのだ。
「……あの、誰かコメントしてくれませんか? ダンジョンのことを教えてくれたり、アドバイスしてくれたり……」
彼女はカメラに向かって、必死にお願いする。
だが、コメント欄は無反応だった。
アサヒは、彼女の姿を見て、心がキュッと締め付けられた。
彼女のことが、とても他人とは思えなかった。
ダメな自分と、彼女の姿が重なる。
(――何とかしてあげたいな……。)
アサヒは、自分が今までに見てきたダンジョン配信から、ダンジョンの知識を思い出す。そして、その知識使って、彼女にアドバイスを送ることにした。
『今のヨミから見て、左の通路に入るんだ。そっちに宝箱がある』
『だけど、そこにはスライムというモンスターがいる。力は弱いが、数が多いから注意だ。スライムは剣や盾で戦うより、たいまつの火であぶる方が効果的だぞ』
キーボードを叩いてコメントすると、画面の向こうでヨミが反応した。
「え? コメント? 本当に?」
彼女はコメント欄を見て、目を丸くした。
「――あっ、ありがとうございます! コメントしてくれた方!」
彼女はカメラに向かって感謝の言葉を何度も連発した。
「スライムですか……たいまつですね……わかりました! やってみます!」
彼女は元気を取り戻して、ダンジョンの奥へと進む。
アサヒは、そんな彼女の姿を見て、嬉しくなった。
(――僕のコメントが、ヨミに届いた! それもあんな嬉しそうに!)
アサヒは自分にも出来ることを見つけられ。
配信をしているヨミと同じように、アサヒも表情を明るくしていた。
アサヒが普段の会話する時は、言葉や感情があふれて出てしまう。
だが、コメントなら『文字を書く』ことなら大丈夫だった。
あふれる言葉も文字に変え、コメントの形にすれば、相手が『読むこと』に時間をかけられる。時間はかかるが、アサヒの意志を伝えることができた。
アサヒは引き続き、彼女にコメントを送ることにした。
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※作者コメント※
ここまでお読み頂き、ありがとうございます。
一話2000字程度、10万字強での完結を目指してます。
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忘れた頃に、一気読みなど、お話を追いかけやすくなります!
ではでは、よろしくお願いします!
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