狂人の遺言

送り主：五奏研究所

　急な形で申し訳ありません。わたくし、五奏研究所に勤める研究員の田口と申します。

　この度、当研究所の所長である五奏透真（ごしょうとうま）氏が、新型ウイルスに感染したことが明らかとなりました。従って、貴方がたに届いた手紙の内容は、真実ではない可能性があります。

　しかし、確認しましたところ、五奏氏の他に、貴方がたの誰方かお一人が、感染し発病されている恐れがあることが分かりました。発病されていた場合、その方の記憶は一部現実とは異なるものに改竄されている可能性がございます。ウイルスが海馬のみに作用するためです。

　誠に不躾ではありますが、どうか一度、五奏研究所の方に足を運ばれ、検査を受けてはいただけませんでしょうか。

　隕石が飛来するまで残り三日です。早急にお越しいただけることを願っております。

　ご検討のほど、よろしくお願いいたします。

　PS きいろちゃんと群青君に、「すまなかった」とお伝えしていただけると幸いです。