第14話 ありえない事はありえない
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あ…ありえん…
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配信が終わった後、あまりの出来事に俺の意識は半分宇宙に翔んでいた。何なら魂が抜けていた。あーちゃん…抜けてる所はあるけど…ここまでばかとは思わなかったよ…他の二人にしてもそうだ。危機意識が遺伝子レベルで欠落しているのではなかろうか。良く今まで無事に生きてこれたな。
探索者になる事は、俺が理由じゃなかったから止めなかった。配信に出る事は、もう決めてたから止められなかった。でもね…探協が運営してる学校に行く事も、これからE級ダンジョンを二人で頑張る事も、わざわざ言う必要なくない?これ世界中に生配信だよ?君たち自分の容姿自覚してる?何も自分から地雷原に特攻する必要なくない?
三馬鹿娘の無自覚発言により、非常に面倒な事になった。この三人は自分を理解していない。それぞれが際立った容姿。それを配信で惜しげもなく晒し、あまつさえ自分の通う学校だのダンジョンだのを公開。これでは会いに来てください、襲ってくださいと言ってるようなものではなかろうか。その辺は配信してるから遅かれ早かれだが、それでも自分から言うのと他人からバレるとでは、与える印象が全く異なる。
あーちゃん以外がどんな目に遭おうと、俺としては知ったこっちゃないのだが。あーちゃんは二人がピンチなら介入するだろうから、万が一の場合、俺も介入することになる。身バレはしたくないから、その場合謎の仮面のご登場というわけだ。そうするとこの三人は謎の仮面と何らかの関係があると周囲から思われる。一度目は偶然でも、二度目ならそれは必然である。ポッと出の仮面野郎が同じ奴を偶然助ける確率なんざ那由多の彼方だ。
かといって、全く興味のない他人の配信を視て、危ない奴を助けに行くお助け仮面みたいな事をして誤魔化すのも馬鹿らしい。俺は善人ではないし、ダンジョン探索は自己責任だからね。
俺と関係があると思われれば、俺の正体を知る為なり、おびき出す為なりで三人はめっちゃ狙われるだろう。当然そうなればあーちゃんは理由を他の二人に言うだろうから、そこでまず二人にバレる。口止めした所であのポンコツ具合なら、配信で二人は正体知ってますと態度でばらすだろう。つまりあーちゃんのピンチに出張った時点で俺の正体が世間に露見する事が確定する。ん?これあーちゃんが配信に出るのを止めなかった時点で詰んでたな?
この際正体がバレるのはどうでもいいんだが、その過程で起こる面倒事を思うと非常にうざったい。というかもう正体はバレるだろう。間違いなく。あの三人が配信して、無事に済む未来が全く想像できない。
俺はあーちゃんに強くなってもらいたいが、それはあくまで王道ストーリー的な展開、友情・努力・勝利で強くなって欲しいのであって、エロゲや薄い本みたいな展開には遭って欲しくない。今まではどうにかなってきたが、これからはそうも言ってられないかもしれない。高校とかエロゲの舞台みたいなもんだし…女だけでダンジョンとか薄い本展開待ったなしだし…
やばい、滅茶苦茶心配になってきた。あーちゃんの護衛はシマちゃんに任せてるけど、それだけじゃ足りないかもしれない。というか他の二人も守らないとあーちゃんBADエンドルート確定なんじゃ?駄目だこれは。このままじゃあーちゃんを守れない。後方腕組み師匠面してる場合じゃない!
非常に不本意だが…滅茶苦茶気が向かないが…頼るしかない、か。はぁ…自分の黒歴史を突き付けられるから会いたくないんだよな。でもそうも言ってられないか…
あのインタビュー見た感じだと俺がやったってバレてるっぽいし。それでも何もしてこないのは、俺から接触してくるのを待ってるんだろう。やっぱ皇級使ったのは不味ったか?いや、どの道レナちゃん助けに行った時点でこの展開になってたか。
気が乗らない。でも背に腹は代えられん。最後に会ったのは7年、8年前か?
インタビューで見た時、姿が全く変わってなくて驚きよりも懐かしさを感じた。ごちゃごちゃ考えるのは止めだ。会いに行こう。S級探索者、万魔に。
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