玉折
つばめメモ
プロローグ
「わたし、先輩のこと好きですよ。」
そう言われたのは、ある初夏のことだった。柚希は戸惑いながらも咄嗟に
「ありがとう。」
と笑って返した。もちろん、柚希はこれは"love"ではなく"like"だと気づいていた。しかし、あの甘美とも言えよう響きは脳を蝕んでいった。
それからというもの、その言葉は柚希の頭にこびりつき、時に呪いとして彼を襲っていった。あんなことがあったのだ。もう二度とあの気持ちは味わいたくないと思っている彼にとって、薫のその言葉は劇物だった。
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