第2話 クラス分けと自己紹介

「さぁお前たち席につけよー、入学で浮かれてるのは分かるが、お馴染みのアレをやらないと始まらないだろ?」

 目がキリッとしてハキハキと言葉遣いの悪い教師は皆に席に着くよう促す。

 運がいいことにボクら4人は同じクラスになった。これもまた縁が導いたおかげなのか分からないが、一応縁結びのお守りに心の中で感謝を伝えた。

「というわけで自己紹介をするぞー。みんな前に来て名前を黒板に書いてから自由にしろ。」

 女教師はそう言いながら黒板に文字を書く。

「まずは教師の私からだ。私の名前は『風月ふうづき 花蓮かれん』。特に言うことは無いが節度をもって高校生活を送って欲しい。」

 風月先生はイメージ通り淡々と話終えた。絶対怒らせたらまずい教師だと誰もが思ったのか静まり返ってしまう。

「コホン。では次前の席から順に始めろ。」

 咳払いをして次の自己紹介を促した。

 みなそれぞれの特技などを話し、和やかな雰囲気になっていく。

 そして案の定注目を集めるあいつの出番だ。

「俺の名前は紅坂 柊。男女関わらずみんなと仲良くして行けたらいいなって思ってる!よろしくっ!」

 柊が笑顔でそう言うと、女子たちは歓喜し、男子は殺意の目を向けた。まぁこれはイケメンの宿命とでも言えるのだろう。

 さて、次はボクの番だ。

 柊が期待しているぞと口パクで言うが無視無視。

「えーと。ボクは海風 瑠衣って言います。特に何も取り柄はないですがよろしくお願いします。」

 …。案の定静まる。分かってはいたけどかなり辛い。

「お前ずるいぞー。色々と特技とか趣味とかあるのにあえて隠して話のタネにしようとしてるだろ〜。」

 柊がカバーするかのようにイジッてくる。どう考えても逆効果だから…。

「いやずるくないから!た、単に恥ずかしいしき、緊張してるだけだから!」

 なんかツンデレっぽい反応してしまった。周り見ると笑ってる奴もいればヒソヒソして騒いでる女子までいる。終わったわこの高校生活。あいつのせいで。

「はいはーい。次は私の番!私は櫻木 桃架。元気が取り柄だからみんなテンション上げていこう!よろしくねっ。」

 彼女が元気いっぱいに話し合えると男子は再び発狂するものもいるし、涙を流す奴もいた。正直キm…。

「あー、次はオレの番だ。名前は鈴鹿沙 燐禰。漢字も難しくて読みにくいけどよろしくな。」

 強めの口調で話し終えてしまったせいか、周りのみんなは彼に対して恐怖心が生まれたのか静まり返ってしまった。

「アハハハハ。りんねっち怖がられてやんの〜。」

 その空気間をぶち壊すかのように彼の知り合いなのか、後ろに座る女の人が煽った。

「あ?別に、オレは普通に自己紹介しただけだぞ?なんでだ…。」

 彼は額を片手で抑えながら椅子に座った。そうとうショックだったんだろう。

「アハハハハ。さて、次はワタシの番だねっ。ワタシは火華 夏織。こんな見た目だけど意外と人見知りな部分あるからよろしく〜。」

 ギャルっぽい見た目の子が話し終えると男子はみんな歓喜した。よく見ると、あの子は多分正月にぶつかってしまった女の子だと分かった。

 これもまた縁で繋がった運命なのだろうか。

「えと、私の番ですね。私は雪代 香奈恵です。みなさんとは仲良くなりたいので、家柄のことは気にせずにみんなと同じ女子高生として接してくださると助かります。よろしくお願いします。」

 香奈恵が言い終えるとみんなざわついた。確かに香奈恵の父親はあの有名な企業である株式会社雪代の現社長で、香奈恵はその社長の娘。いわゆる社長令嬢ってことだ。

 しかし、彼女は普通の高校生として生活したいと言ったがどうしても媚びを売ったりしてくる人はいる。お近づきになり、将来安泰とか考える人も。

 周りの人達は案の定会社のことについてヒソヒソ話をする。その時、一瞬だったが彼女の表情が暗く、俯いた所をボクは見逃さなかった。

 その後も続々と自己紹介は続き最後の人が話し終えた。

「はい、全員終了したようだな。とりあえず今日はここまでだ。詳しい授業内容や教科書等については明日説明する。では、解散だ、また明日会おう。」

 そう言って先生は教室を後にした。みんな帰る支度をしつつ早速仲良くなろうと動き出す。

 周りをよく見ると…。柊は案の定女の子に囲まれている。桃架は男子や女子に囲まれて賑やかに。燐禰くんと夏織さんを見てみると相変わらず2人は一緒にいるが何人か震えながらも話しかけに行っている。

 香奈恵を見るとこちらも沢山の人たちに囲まれている。しかし、彼女は困ってそうな顔をして無理に笑顔を作っているように見える。

 とりあえずボクは香奈恵を呼んで他のみんなも呼んで一緒に帰るとしよう。だって今自分はぼっちだから…。そう、寂しいのだ。

 分かってはいたが、みんなが居たから今日までこんなに寂しいと感じることはなかったんだとしみじみ思う。

 ここからボクらの物語の第一歩が始まる。

 …やっぱり寂しい。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る