関連性があるのかもしれませんけれど
██在住 Sさん男性
怖い話ですか……ありますよ。怪談なのかは知りませんが。
私の地元にまあまあ大きい公園があるんです、街の中にあるのですが、自然が豊かでして。夏には綺麗な蛍もたくさん見ることができるって有名な場所です。
その公園の入り口に、電話ボックスがあるんですよ。今時珍しいと思いますが、近隣や公園の利用者は高齢者も多いし何かあったときの為に設置されていると思うんです。
で、この公園。蛍が出るくらい自然に囲まれているんで、夜は暗くてちょっと危ない雰囲気なんですよ。それは事件が起きそうだとか、所謂幽霊的なものが出そうとか、そういった意味で危ない雰囲気を漂わせているんです。
そんな雰囲気の中佇むその電話ボックスなんですけれど。どうも夜になると真っ黒になるそうです。
ええと、電気が消えるとかそういった意味ではなくて。電話ボックスって外から中が見えるじゃないですか。それが見えなくなるんだそうで。例えるのは難しいのですが、真っ黒なシートで電話ボックスを包み込んだような、そんな感じなのだそうです。
あ、私は見たことないんですが、職場の同僚がそれを見たって話をしていました。そい つ、今はもう亡くなっているから直接話を聞くことも出来ないんですけれど。
──あぁ、呪いとかそういったことではないですよ。普通に酒の飲み過ぎで肝臓を壊したの が原因でした。
そんな感じですかねえ。
██高校出身 Mさん男性
怖い話ねえ………………。無いですよ。不思議な話?──まあそれならあるかな。
私が通っていた高校の近くに、公園があったんですよ。まあまあ大きめの。広いし夜は人も少なくなるってんで絶好のたまり場でした。当時は私もひねくれていましてね。当時は、ですよ。その公園に仲間で集まってタバコ吸って酒盛りしたり馬鹿していました。
その公園に、電話ボックスがあったんですよ。今はあまり見かけるものではないんだけ ど、私の高校時代は電話ボックスなんてそんな珍しいものでも無かったんで別になんとも思っていませんでしたね。その電話ボックスから仲間を呼びつけたり、ワンチャン狙って 女の子に電話したりね。
で、ある夜いつものようにその公園で友人と酒盛りしていたんです。酒も回ってきてテンションも上がっていたんでもっと仲間を呼ぼうって話になって。
「○○達にも連絡してくる」って友人がその電話ボックスに向かったんです。
しばらく待っていると、友人が血相を変えてこちらに走ってくるんですよ。“警察か"と思って私も逃げ出そうとしたんですが、友人が「違う待って待って」と叫んでくるんです。それも号泣しながら。
落ち着いて友人に話を聞こうとしても興奮して何言ってるか分からなくて。一発小突いたら落ち着きを取り戻して話してくれました。
まとめると
「あの電話ボックスで○○達に電話を掛けたんだけれど繋がらない。番号は間違っていないし、寝てるのかなって思って電話を切ろうとしたら電話が繋がった。今公園にいるから来いよって伝えたんだけれど、受話器からは何の返答も聞こえない。そのうち何かが擦れるような音が聞こえてきて、ラジオの雑音のような、ざあざあとした音と共に誰かが泣いているような声が聞こえてきた。
怖くなって電話を切り、電話ボックスから出ようとしたらドアが開かず、夜なのに辺りが真っ白になっていた。真っ白い電話ボックスの中に一人閉じ込められて恐ろしくなり、号泣して暴れまわっていたらいつの間にか外に出れた」 ということでした。
そいつ、大分酔っていましたからね。幽霊を見たわけでもないし、電話口の声も混線かもしれないだろうと伝えたけど、真っ青な顔をして怯えていたんでその日はお開きにしたんです。
それから後も、その公園ははたまり場になっていましたけれど、警察の巡回や自治会の監視も厳しくなってきたんでいつの間にか皆集まらなくなっていましたよ。
んーそのとき以外では何も妙な話を聞いたことも無いんですけれどね。 まあそんな話。こんなんで良いんですか?
──ああ、友人は今何をしているんだか。私にも分かりません。いや、別にこの電話ボックスがどうこうとかは無くて、あの夜の出来事以降もあいつは元気でしたよ。 なんかあいつ危ない仕事に手を出したらしくて、県外に逃げていったみたいな噂を聞いたことがあります。
元気でやっているといいんですけどね。
██出身 Hさん女性
怖い話。ありますよ。そうです、私の実体験です。
大学生になったばかりの頃です。受験からも解放されて、大学で新しい友達もたくさんできて、あの頃は毎日が楽しくて仕方ありませんでした。
免許も取得していたんで、よく友達と夜にドライブに出かけていたんです。本当は居酒屋とかで呑んだりカラオケなんかで騒ぎたかったんですが、お金が無かったので。
ドライブしながら友達と話しているだけで十分に楽しかったんです。
ある日なんとなく友達と怪談話で盛り上がりまして、心霊スポットに行ってみようってことになりました。ちょうど別の友人から、怪しい話を聞いていたんですよ。
「○○公園に夜ヤバいのが出る」って。
そこは夏に蛍が観察できるって有名な場所だったんで、道に迷う事も無いしすぐ行けるってことでその公園に行くことにしました。
で、その公園についたんですが、確かに暗いし不気味なんですが普通の公園なんですよ。何と言えばいいのか分からないんですが、「ここは危ない」って空気は全く感じませんでした。
車から降りて友人としばらく公開を散策したのですが、気持ち悪い虫が明かりに寄ってくるだけで特に何もありませんでした。
つまらないんで車に戻って、ハンバーガーでも食べに行こうってなったんです。
車内で「結局何も起こらなかったねー」って友人と話をしていたんですが、友人が妙なことを言うんですよ。
「電話ボックスは確かに気持ち悪かった」って。
私は友人が何の話をしているのか全く分からなかったんです。だってあの公園に電話ボックスなんて無かったんですから。
そのことを友人に伝えると、友人は顔をしかめて
「まーた脅かそうとして。やめてってば」って言ってきたんです。
どうも電話ボックスを見つけた私が真剣な表情で
「見て、あの電話ボックスに長い女がいる。目も口も顔も手も足も全部長い。やばくな い?」
と友人へ話していたそうなんですよ。友人にはそんな女性見えないし、悪乗りしないでと怒ったら、私は悪戯っぽい笑みを浮かべて笑っていたそうです。
私にはそんな記憶、全くありません。何度思い返しても無いんです。
友人が不安そうな表情をしていたのでとりあえず話を合わせてやり過ごしました。 あれ以降その公園に行くことはありません。なんか気持ち悪いし。なので電話ボックスが本当にあるのかも無いのかも私には分かりません。
友人は今も元気ですよ。来週一緒に旅行へ行く予定です。彼女はもう忘れているでしょ うね。こんな話。
怪談好き匿名 男性
怪談好きということもあり、私の元には様々な体験談が訪れる。それは実話であったり創作であったり、些細な話から重大な話、少し笑えたり切なかったり。そんな怪談話が集まってくる。
ただ、しばらく前から同じような話が集まるようになった。住所も年齢もバラバラの人々から集まってくるその話の共通点は
「公園の電話ボックス」なのである。
「公園の電話ボックス」にまつわる話を集めているわけではないのに勝手に集まってくるのだ。
そして皆の話をよくよく話を聞いていると、全て”同じ公園”のことだと気が付いた。気持ち悪さと同時に少し好奇心が湧いた。絶対何かあるだろうと、絶好のネタになるのではないかと。
その公園の場所は私も知っていたが、中に入ったり利用したことは皆無だった。車で近くを通るときにちらっと入り口を見ることもある。確かにその公園の入り口には電話ボックスがあるのだ。
近々調査してやろうと準備をしていたとき時期に、あるDMが来ていた。
「私は創作ホラーを書いている者なのですが、是非批評をお願いしたいのです」
といった内容であった。
そんなに多くは無いが、批評依頼は時折届く。特段珍しいものではない。
その内容は、「ある公園の電話ボックス」にまつわるホラーだった。公園の場所、電話 ボックスの描写、全てが私の知っている「公園の電話ボックス」と同じだった。
その物語の中で描かれる怪異は、びろんと身体のあちらこちらが長い女が電話ボックスの中にいる。それは存在に気付いてほしくて色々と良からぬことを起こす、といったものだった。
もしかすると誰かにその公園の話を聞いたことがあるのかもしれない、私に怪談を教えてくれた人が、この人にも同じ話をしてくれたのかもしれない。可能性は色々と考えられる。偶然なのかもしれない。だが、どうしても私にはそうは思えなかった。 このタイミングでこのDMがくることに、言葉にはできない程の異様さと気持ち悪さを感じていた。
私はそのメールにいくつかの質問を添えて返信し、ネットでマップを開き、その公園を確認した。
私がいつも車から見ている公園。怪談話が絶えない公園。その公園の入り口に「電話ボックス」など存在していなかった。調べてみると、確かに以前はあったのだが大分昔に撤去されていたのだという。
しかし、私は車から見ていた。その電話ボックスを見ていたはずなのだ。つい最近も。
自身の第六感とも言うべき感覚を信じて、調査はせずこの話に関わることを止めにした。
それからぴたりと「公園の電話ボックス」についての話が来ることは無くなった。
メールの返信は未だに来ないままであるが、もう気にしないことにしている。 今も車であの公園の近くを通るのだが、確かに電話ボックスなど見当たらない。
最近からまた同じ話が集まり始めている。
『全身がびろんと長い女』の話なのだが、私は見て見ぬふりをしてやり過ごしている。
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