ホラー雑誌に掲載されていた話
■■書房 怪奇超常審議倶楽部 2020年11月号より
のっぺらぼうってわかります?
本来人間にあるべきはずの顔が無いって妖怪なんですけど。私、本物見たんです。のっぺらぼう。
数ヶ月前、友人と遊んでたんですが幽霊を見に行こうって事になりまして。
で、片っ端から友人を誘いまして、最終的に集まった四人全員で、とある廃墟に行くことになったんです。
その廃墟は町から少し離れた山中にあるんですが、色々と良くない噂がある場所で、何だか変な宗教団体の集まりになっている、ヤクザの取引場になっている、頭の裂けた男と女が襲ってくるだとか、兎に角色々な噂のある曰く付きの場所でした。
皆、初めて行く廃墟に恐怖と不安もありましたが、それ以上に好奇心が勝ってたんです。
車持ちは私しか居なかったので当然私の運転でいくことになりました。新車だったので、あまり夜の山は走りたくなかったのですが。
廃墟に着いたのは夜の十一時頃でしたかね。
夏も近づき、少しづつ暖かくなっている季節だったのですが、山の中は真冬のように寒いんです。
山の中って気温が下がるんですよね。皆寒い寒いと震えていました。上着を持ってきて良かったと思いましたよ。
改めて廃墟を見直すと、結構大きくてしっかりしている建物でした。以前は何かの記念館のような建物だったようで、何やら展示品のような物やそれらしき看板だったりが散乱していました。
早速皆で中に入ったわけです。入口に鍵なんてのはありません。
なんならドアはボロボロで、ドアとしての役割は期待できるもんではありませんから、簡単に入れます。
警察や警備員なんてもちろん居るわけもありません。
私が先頭で懐中電灯を持ちながら、各々はスマホのライトを照らしながらとりあえず廃墟を散策したんです。
ネズミが走り去っていったり、影が幽霊に見えたりでそれなりにワイワイ楽しみました。全く怪異は起こりませんでしたよ。まぁそんな期待はしてなかったのですが。
で、そろそろ帰ろうかーってなった時、聞こえてくるんです。遠くから。
「〜〜。〜ん〜〜。」
何かを叫んでいるような人の声でした。
流石に心臓が止まるかと思いました。
だって山の中で、こんな曰く付きの廃墟に居て、こんな声聞こえたら誰でもビビりますって。
しかもこちらに近付いている感じがするんです。声が。
ヤバいヤバい、ってみんな焦りだして。変なのに見つかる前に早く車に乗って帰ろうってなったんですがね。
暗い山って、明かりが目立つんですよ。
辺りは真っ暗ですし。
それに、さっきまで大声でギャーギャー騒いでいたわけです。
皆、嫌な事を考えてしまうんですね。
「もしかして、既に気付かれてない?」
って。
でもまた思うわけですよ。私達の様に遊びに来た人達かもしれないって。
それで、窓から声がする方を確認してみたんです。
夜の闇で中々見えにくかったのですが、そこには確かに人が居ました。
赤いキャミソールを着た女性。
闇の中で、夜の山に不釣り合いな赤いキャミソールが物凄い速さでこちらに向かってくるのが見えたんです。
みんな無言で弾け飛ぶように駆け出しまして。
廃墟を飛び出し、車に我先に乗ろうとするその時。聞こえたんです。
「ーんーてー!んんーーんーー!!」
反射的に懐中電灯を向けると、15m程先に赤いキャミソールを着た女性の姿が見えるんです。こちらに手を伸ばすその女性の顔には目と口がありませんでした。
無我夢中で車に飛び乗り、車の傷なんてお構いなしに近くのコンビニまでぶっ飛ばしましたよ。
町に出て、明かりや人の姿を見ると安心して、少し落ち着きました。
で、みんなでさっきの状況を確認したのですが、確かにあの女性、顔がなかったんですよ。
それ以降、何かあったとか、呪いがあった、とかは無く、ただそれだけのお話なのですが。
〇〇県〇〇町の〇〇山にある廃墟。絶対に、絶対に行かないほうが良いです。
−−−−−−−−−
サイト【こわいはなしあつめました】に投稿されていたこの話。
読者の皆さんも既に知っている方がいるかもしれません。
本誌は、実際にこの怪異を体験したという方と連絡を取ることができ、なんとその時に撮影していたという動画を頂くことができました。
画質が荒く、見辛い部分もありますが、その時の会話等、出来るだけ皆様へお伝えできるようにしましたので、下のURLから是非ご覧下さい。
[[jumpuri:https://20206495.wav> https://20206495.wav]]
【※動画は現在削除されており再生できません】
どうでしょうか?
見え辛い部分もありますが、夜の山での恐怖という臨場感も伝わったのではないでしょうか。そして、彼らが遭遇した「怪異」もしっかりと残っています。
本誌が考えるに、この動画は本物だと思います。
しかし違和感があるのです。
ここからは本誌の推測です。その為事実とは異なる可能性がある事を明記しておきます。
まず、動画には「四人」の男性が映っています。
話では、「四人全員」との事でしたが、撮影者を含めると、「五人」います。
なぜ、わざわざ「四人全員」としたのでしょう。
そして最初の話から推測すると、懐中電灯を持っている男性が噂を広めた方だと思われます。
この男性。
廃墟に初めて来たと言うのに、入口まで迷うことなく進んでいきます。
まるで、この廃墟の構造を知っているかのようです。
幽霊を見に行こうと言ったのも、車を運転したのも、声を最初に聞いたのも、明かりで気付かれていると皆の恐怖を煽ったのも、この方です。
本誌が動画を見た限りでは、皆をどこかに誘導していた様にも思えます。
赤いキャミソールを着た女性。
動画でも映っていましたが、確かに目と口がありませんでした。
しかし、動画をよく見て下さい。
本当にこれはのっぺらぼうなのでしょうか?
そして、動画にも残っている音声。
本誌が思うには、これはのっぺらぼうではありません。
人です。生きた人間だと考えます。
夜の山。
闇の深い山で離れた相手の顔を把握するのは難しいので、間違えるのも仕方ありませんが、よく見るとこの女性はのっぺらぼう等ではなく
目と口にガムテープを貼られているの女性なのでは無いでしょうか?
そしてこの女性が発している声。
「んーーえーー!!!」
本誌スタッフにはこの声が、助けを求める声に聞こえてならないのです。
本誌はこの噂を広めた男性への取材も試みましたが、現在音信不通となっているとの事でした。
動画を提供してくれた男性へも改めて取材を申し込んだのですが、こちらも音信不通となっています。
この件について何か情報をお持ちの方は本誌編集部まで連絡お待ちしています。
※現在当雑誌は特定団体による申し立てにより廃刊中
※当時の記事より一部削除、編集しておりオリジナルとは異なります。ご了承下さい。
────────────────
この山について筆者も色々調べてみたのですが、現在、山へは私有地につき立入禁止となっており、廃墟の存在も確認出来ていません。
地元の方の話によると、廃墟は確かに存在しているとの事でした。
現在、山には誰も近づかないそうです。
町では赤いキャミソールの女性が走り回っている、という話が広まっているそうですが件の話との関連性も、真偽も確認できていません。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます