第88話 コスタリア貧民街の日常4

テトやお姉さまたちと食事の後の休憩をしていると山賊の親分と露出度の高い服を着たエロいお姉さんが会計士さんと一緒に部屋に入ってきた


「よお、ゴブリンさんよぉ。久しぶりだな、何か儲け話があるそうじゃねぇか」


「くくく、繰り返しで申し訳ありませんがもう一度計画の内容を説明しましょうか」


元闇ギルド副会長の自称会計士さんが計画の概要をさらさらと紙に書きながら説明していく


「という訳で一般公開する大浴場は基本的に無料で誰でも入れるようにします。これで現在教会に押し寄せている軽微な癒しを求める大半はそちらに流れるでしょう。寄付も必要ありませんしね」


「おいおい、それじゃ教会の寄付が減っちまって儲けにならねぇじゃねぇか」


「そうです、それこそが我らが聖女アイラ様、ミセッティ様の崇高な理念を実現した施設です、あぁ、素晴らしい」


「しかしもう少し深く考えてください、もし森の奥深くにあるという伝説の癒しの泉のような施設が自分達の町にあり、安全で誰でも入れるということになったら」


「俺だったら毎日でも通っちまうな」


「そうでしょう、そうでしょう。地元の人間なら仕事の帰りや休みの日にふらりと気の向くまま立ち寄って癒しの湯を満喫するでしょうね。旅の商人たちもコスタリアに来たならば必ず入っていくでしょう。そして噂が広まれば領外からの旅人や遠方からこの浴場が目的に人が集まることでしょう」


「なるほど、そして地元じゃねぇ奴らはここで宿をとったり飯を食ったりするからお金を落としていくってぇことだな」


「そうです、地元民は無料で健康になりさらにお店を出して商売が出来るということです、素晴らしい。くくく、もう貧民街などとは呼ばせませんよ」


「それで人が集まる場所の治安維持と宿の経営関係を俺たちに振ってきたって訳か」


「その通りです、今までも荒くれ者を相手に娼館を経営してきたドノバン一家なら上手くまとめられるでしょう?」


「ゴブブ」(一つ追加の提案があるゴブ)


「ゴブリンさんがね~、もう一つ話があるだって~」


「ゴブ、ゴブ」(タダで入れるお風呂とは別にお金を取る濃い聖水風呂も作るゴブ)


「あはは~、お金を取れるような濃いお風呂も作れるだって~」


「なんと!それはまた商売の幅が広がりますね・・・大棚の商人たちや観光旅行などで少し奮発してお金を払ってでも良い効能を得たい人たちの需要にあいますね」


「・・・今は無理かもしれねぇがお貴族様を相手の高級宿も必要になるかもな」


「まったくです、今まで人扱いされていなかった貧民の町に貴族が競い合って宿泊しにくる・・・想像するだけでゾクゾクしますね」


「しかしよぉ、これだけの事業だぞ。建物は俺たちのほうで何とか建てれるにしてもあんまり好き勝手にするとマズいんじゃねぇか~。事前許可とかよぉ~」


「くくく、その点に抜かりはありません。今現在わたしの部下が計画の概要を書類にまとめて作成中です。聖水の湯ということは伏せてただの無料の大浴場を新設するという内容ですがね。温泉を掘ったらアラ不思議、聖水が湧いたようですってね」


「おいおい、そんなことまずあり得ねぇだろ」


「この辺りも全てミセッティ様の指示、ご意向通りです。そして計画立案、責任者はライアン様となっておりますからコスタリア家も無碍にはしないでしょう」


「マジか・・・サインをよくもらえたな」


「いいえ、ライアン様には白紙の紙を渡して下の方にフルネームで署名をしてもらいました。ボス・・・シスターライラにそれだけはお願いしましたね」


「とんでもねぇ裏技を思いつくもんだな、熟練の詐欺師みたいじゃねえか」


「これも全てミセッティ様のご指示です。あとはその署名付きの表紙に加えて概略と開発の許可を申請する書類を作って今日のお帰りの際にお渡しします。もちろん封蝋して中味を出せないようにして配達だけ依頼するという体裁ですけどね」


「よっしゃ!分かった。ここまでお膳立てされちゃあ乗らねぇ訳がねぇな!しけた奴らと犯罪スレスレの商売からおさらばだ!俺の残りの人生かけてこいつを成功させてやんよ」


「くく、その意気です。我々も裏方として甘い汁をしっかり吸わせてもらいます」


「っていう訳だ。メイヤーナ。お前も聞いていただろ?色々忙しくなるけど頼むぞ」


「分かっているよ。で、まずは誰を始末してくればいいんだい?」


露出の高い服を着たセクシーお姉さんがさらっと怖いことを言う。


「ば、ばか!ずっといて何を聞いていたんだよ、なんで温泉と宿泊施設の話で暗殺の話になるんだ」


「え、計画に邪魔になりそうな奴を排除するってことじゃないのかい?」


「ちげぇーよ、お前には高級宿の方の女将になって礼儀やマナーにうるさい客相手に粗相が無いよう接客できる奴らを集めて教育してやってくれ。一応俺たちのところでも高級をうたった娼館があるからそいつらを連れてくれば何とかなるだろ」


「ええっ、あたいが女将になって宿を持たせてくれるってのかい!?」


「ああ、そうだ。もう暗殺稼業と娼婦の真似事は終わりだ。これからは貧民街を代表する宿の女将として俺たちを支えてくれ」


「うう、ありがとう。でも週に一度は血を見ないと落ち着かない私でもいいの?」


「ああ、お前じゃなきゃだめなんだ」


「でも、でも・・・スラム出身で血と埃にまみれた汚い私だよ?!」


「あー、あとこんなタイミングで悪いんだがここらへんで正式に俺の嫁になってくれると嬉しいんだが・・・いやなら断ってくれてもいいけどよ・・・」


「「「!?」」」


ドノバンさんの突然のプロポーズにご本人のメイヤーナさんはともかく部屋にいた全員が固まってしまった。


「あー、まぁなんだ、やっぱ俺と一緒になるのはイヤか?」


「イヤじゃないよぉぉ!ズタズタに切り裂きたいほど愛してるよぉぉ!」


メイヤーナさんが泣き叫びながらドノバンさんに駆け寄り抱きついた

どうやらプロポーズは成功したようだゴブ


「きゃー、メイヤーナ先生おめでとう!」

「これが授業で言ってた女の極意ね!自分からではなく相手に言わせるっていう」

「やっぱり夜よ、夜の技が全てを解決するのよ!」


年長組の女子たちがきゃいきゃい騒ぎ出した

メイヤーナさん先生だったんですね、何の授業かは知らんが


「ううぅ、ありがとう、みんな~私幸せになるよ~ぐすっ」


女性はみんな幸せになる権利を持っているんだゴブ

わたしの幸せはどこにあるかな~


「今晩は私の全ての技術で血が出るまで搾り取ってあげるね♡」


「お、おう・・・。俺もそんなに若くねぇからほどほどにな・・・」


・・・幸せは人それぞれだろうだしな


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