ダンジョンの謎 解明?
第13話
初のイベントも終わり、またもマンネリな日常に逆戻りしてしまった。敵を倒して、コメントに答えて......。それ以外の楽しみだってたくさんあるはずなのに、それしか能がないから見つからない。こういうときは、他の人の動画を見て流行調査と便乗しか手はない!!
「さて、最近はなにが流行ってるのかしら」
私はいつも配信を投稿しているダンジョン配信専用サイト『Dストリーム』を開いた。そこには、私以外の沢山の配信者がダンジョン探索に命を懸けていた。
「フロアマスター? そういや、全フロア制覇した人に称号が得られるって聞いたことあるわね」
配信の流行りはいろいろある。レアモンスター討伐するまで耐久配信だったり、ボスラッシュだったり......。でも、今は
「後は、都市伝説系が流行ってるみたいね。前から根強かったけど、この間のイベントで私が行った地下444階のおかげで再熱したって感じかしら」
私はそうやって何個かいろんな配信者の傾向を探った。そして、一人の女性の配信者を見つけた。その子はどうやら、女子高生らしくしかもフロアマスターで地下444階まで行っていみたいだ。あそこって、実在するんだ......。
「でも、私がもう一回行ってもなぁ......。でも、私自身ネタもないし」
私はしぶしぶ、身支度を済ませてダンジョンへと向かった。ネタも飽きるほどされてるのに、新たな発見がある。それがダンジョンの魅力なんだと思う。でも、モンスターを倒して、アイテムを拾う。ただそれだけじゃ芸もない......。私は、ビキニアーマー以外でどんな戦略をすれば他の人以上にバズれるんだろうか......。
「ま、考えても仕方ねぇか......。まずは、今日の配信テーマを考えてからだ」
私はダンジョンの1階更衣室で、ビキニアーマーに着替えた。最近、ひっきりなしにダンジョンに潜っているせいか、アーマーの傷が目立つようになってきた。胸と下半身の陰部しか隠れていない鋼鉄の下着と言い換えた方が正しいかもしれないわね。そんな防御の頼りにもならないから、鍛えた腹筋の上からでも生傷が絶えない。
「また傷増えてる......。でも、フェチにはたまんないんじゃない?」
鏡の前でいくつかポーズをつけて自分に自信をつけた後、私は受付を済ませて地下10階へと向かった。この間のイベント会場で、地下444階へ続く扉のあった場所だ。
「げ、配信者が沢山......」
エレベーターを降りて、地下10階ダンジョンに降り立つとそこにはイベント以上の人だかりがあった。正直、モンスターより探索者が多いんじゃないかってくらいだ。
どうやら、みんな困っている様子だ。
「ですから! この扉は、閉鎖になりました! 皆さまどうかご理解ください!!」
「ざけんじゃねえぞ!」
「どけや、ぼけぇ!」
「金だろ、カネーーー!!」
運営の一人であろう男が、多くの探索者と配信者に囲まれていた。どうやら、イベントで使用されていた扉が封鎖されているらしい......。
「うそーん......。私、楽しみにしてたのに」
落胆して戻ろうとしたとき、一人の配信者が私に気付いたようでこちらを指さすのがちらと見えた。
「あ~! ビキニアーマーの人! あの人が運営に頼めばいけるかも!」
「え、えええ~!?」
多くの配信者、探索者たちは目の色を変えてこちらに向かってくる。私は、ちょっとずつ速度をあげていき、ダンジョンを駆け抜けていく。配信者や探索者たちは負けじと私を血眼になって追いかけてくる。バズリそうな絵面だけど、そんな場合じゃない!!
「やべ、行き止まり!」
壁沿いにつたっていくも、右も左も正面も配信者たちに囲まれてしまった。
彼らは、さも獣のように荒息を立ててこちらを見つめる。万事休すかに見えたその時、私の腕を誰かが掴んだ。その後、煙幕がばら撒かれる。
「こっち!」
「誰?」
「いいから!!」
か細く、可愛らしい声に反してがっちりと掴む腕に誘われて、私はその人と一緒に逃げていく。でもこの声、どこかで聞いたことがある。エレベーターを前にして、ようやく煙幕が晴れて腕を掴んでいた人物像が浮き彫りになってきた。
「あ、あなた......。たしか、最年少フロアマスターの」
「......別に、すごいってわけじゃないですよ。ダンジョンの不思議を解くのが私のしたいことですし。だから、ダンジョンの全フロアを探索するのは義務なんで」
巨大なハンマーのような武器を背中を携え、初期装備のような質素な出で立ちの清楚な少女......。彼女が、ダンジョンの謎を追い最年少フロアマスターとなったナナフシギチャンネルの『ナナ』ちゃん......。
「とりあえず、さらに地下に行きましょう! 私、一度話して見たかったんです! ビキニお姉さま、あなたと!」
ナナちゃんは迎えに来たエレベーターに私を無理やり押し込めて、地下50階のボタンを押した。ナナちゃんはボタンを押すや否や、私を尊敬や、憧れのようなキラキラとした眼差しを向けてきた。
「え。そ、そうなの?」
「私、しおりんチャンネル時代からファンなんです! 一人孤高に、淡々とモンスターを討伐する姿がかっこよくて!! 今も、そのスタイルが変わってなくて嬉しいです!!」
「そう言われると、悪い気はしないわね」
私が照れて髪を触っていると、エレベーターが地下50階に着いたようで私たちはそこで一度降りた。
「とりあえず、これで一旦大丈夫よね?」
「だといいんですけど......。にしても、お姉さまも地下444階の秘密にご興味があるなんて驚きです」
「イベントで行ったときは気にしなかったけど、あれってもしかして『モンスターを研究している施設』なんじゃないかなって......」
彼女の配信でも、同じような言葉が出てきた。あの、ゲームのような研究施設と出現したモンスターのチグハグ感がちょっと引っかかっていた所に、彼女が考察をつけて話を盛り上げてくれていた。
「私の配信、見てくれたんですね!!」
彼女はまたも私に対して目を輝かせるような眼差しを向けた。私、そんなに憧れるようなことしてたっけなぁ......。それはともかく、扉が閉じてしまった今私の『流行りに便乗してバズリ狙い作戦』は企画倒れになりかけている。どうにかしないと......。
「え、ええ。それで、お願いなんだけどさ」
ここは、若さの彩りと経験の華で場を持たせる! 名付けて『コラボ配信で今回はやり過ごす作戦』!
「いいですよ!! お姉さまの依頼ならなんでも!」
「まだ何も言ってないけど?」
「でも、コラボしたいってことですよね!? それなら、もちろん大歓迎です! 憧れの方とコラボできるなんて、配信冥利につきますから!!」
私の心の中、覗かれてる? それくらい速攻即決な彼女の姿に、感謝と恐怖が混ざりあう。でも、フロアマスターの動きが間近に見られるってだけで、私はお得しか感じない!! 我ながらコラボというのは、最善策なんじゃね~の?
「そ、そう言ってくれると思ったわ! ここはお互いのチャンネルでコラボする配信を取りましょう? まずは、私から。縁もあるし、たしかここはボスフロアのはずだから撮影場所はここにしましょ」
「全然かまいませんよ! じゃあ私の配信の時は、私が場所を指定するということで!」
こうして、若さで輝くナナちゃんとのコラボが始まるのだった。
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